第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
一方で、『陰のニホン』、城内のかつてツクモが使用していた大浴場は、南国の植物が生え、色とりどりの熱帯魚が泳ぐ海のような泳ぎ場となっていた。そこには、紫黒色の髪と人魚の足を持つ青年が、黒い顔と胴が透明でヒラヒラとした手と尾に覆われた小さな生物と優雅に泳いでいた。後にクリオネと言われる海の妖精である。
「やったークリ♪ミズチがおらに海を作ってくれたクリー!!」
「この浴室は、ツクモ1人に独占されていたからねぇ。正直、目の上のタンコブが消えてせいせいするよ」
彼の名は『ミズチ』。厄神四天王の1人で、海と水を司る、卑弩羅(ひどら)の腹心である。
「ははは、それは良かったな。煌びやかな大浴場よりも自然溢れて良いぞ」
「卑弩羅様、僕に提案があるのだが、是非ともこの『クリクリ』を連れて会って欲しい者がいるのですが・・・」
卑弩羅はミズチの策に耳を傾けた。
「良い考えだな。クリクリも例の奴に憎しみを抱いているし、その会って欲しい者もそうであろう?」
卑弩羅はクリクリを手の平に乗せ浴場を出た。闇の空間から陽のニホンへ向かった。
相模国最南端、城ヶ島。荒波に侵食された岩礁で、痩せ細り、みずほらしい姿の男が1人、呆然と水平線を見続けていた。
「俺は・・亡霊になっても、海に拒まれるのか・・・」
男は何度も、海に入ろうとした。しかし、海面から放たれる結界が彼を拒んだ。長く乱れた青緑色の髪に、男の顔は隠れていたが、涙がこぼれ落ちていたのが分かった。
「凪沙に会えないなら、さまよう魂から解放されたい・・・」
男は、かつて愛した女性を思い続けながら嘆いていた。岩礁に崩れ落ちそうになったところを、黒い甲冑の男に支えられた。その人物は陰のニホンの主、卑弩羅だが、男はもはや彼の邪気を感じない程、心が壊れていた。
「長い事、成仏出来ず魂がさまよっていたのだな。可哀想に」
「あんたは俺が見えるのか?只者では無さそうだが、俺にはどうでも良い。俺は海に拒まれている・・・きっと、海王が俺を海に行かせないようにしてるんだろう」
男は投げやりな気持ちで答えた。すると、卑弩羅は彼の目の前に闇クリオネを見せた。
「初めましてクリ、おらはクリクリだぞ♪もしかしておっちゃん、海王に恨みを持っているクリ?」
男はヒラヒラとした可愛らしく異形な生物を見たが、驚く事は無く尋ねた。
「ああ。息子と母の凪沙を引き離した奴が憎い。・・・君も海王を憎んでいるのか?」
「うん!!おらは千年以上海王を憎み続けているクリよー!!」
「どうかね?君とクリクリが組めば、海に入る事が出来るぞ。それに・・・」
卑弩羅は男の長く伸びた前髪をかきあげ、海のような澄んだ青い瞳をじっと見つめ、耳元で囁いた。男の瞳には正気が戻り、手の平にクリクリを乗せ自己紹介した。
「俺の名は真鶴(まなづる)。昔、この地で船頭をしていたが、人魚と恋に落ち、今は海に拒まれた亡霊だ・・・」
後の豊臣軍による小田原征伐は、豊臣軍も北条軍も、はたまた海洋族をも巻き込んだ、世界危機の戦になるとは知る由もなかった。
第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神 完結
「やったークリ♪ミズチがおらに海を作ってくれたクリー!!」
「この浴室は、ツクモ1人に独占されていたからねぇ。正直、目の上のタンコブが消えてせいせいするよ」
彼の名は『ミズチ』。厄神四天王の1人で、海と水を司る、卑弩羅(ひどら)の腹心である。
「ははは、それは良かったな。煌びやかな大浴場よりも自然溢れて良いぞ」
「卑弩羅様、僕に提案があるのだが、是非ともこの『クリクリ』を連れて会って欲しい者がいるのですが・・・」
卑弩羅はミズチの策に耳を傾けた。
「良い考えだな。クリクリも例の奴に憎しみを抱いているし、その会って欲しい者もそうであろう?」
卑弩羅はクリクリを手の平に乗せ浴場を出た。闇の空間から陽のニホンへ向かった。
相模国最南端、城ヶ島。荒波に侵食された岩礁で、痩せ細り、みずほらしい姿の男が1人、呆然と水平線を見続けていた。
「俺は・・亡霊になっても、海に拒まれるのか・・・」
男は何度も、海に入ろうとした。しかし、海面から放たれる結界が彼を拒んだ。長く乱れた青緑色の髪に、男の顔は隠れていたが、涙がこぼれ落ちていたのが分かった。
「凪沙に会えないなら、さまよう魂から解放されたい・・・」
男は、かつて愛した女性を思い続けながら嘆いていた。岩礁に崩れ落ちそうになったところを、黒い甲冑の男に支えられた。その人物は陰のニホンの主、卑弩羅だが、男はもはや彼の邪気を感じない程、心が壊れていた。
「長い事、成仏出来ず魂がさまよっていたのだな。可哀想に」
「あんたは俺が見えるのか?只者では無さそうだが、俺にはどうでも良い。俺は海に拒まれている・・・きっと、海王が俺を海に行かせないようにしてるんだろう」
男は投げやりな気持ちで答えた。すると、卑弩羅は彼の目の前に闇クリオネを見せた。
「初めましてクリ、おらはクリクリだぞ♪もしかしておっちゃん、海王に恨みを持っているクリ?」
男はヒラヒラとした可愛らしく異形な生物を見たが、驚く事は無く尋ねた。
「ああ。息子と母の凪沙を引き離した奴が憎い。・・・君も海王を憎んでいるのか?」
「うん!!おらは千年以上海王を憎み続けているクリよー!!」
「どうかね?君とクリクリが組めば、海に入る事が出来るぞ。それに・・・」
卑弩羅は男の長く伸びた前髪をかきあげ、海のような澄んだ青い瞳をじっと見つめ、耳元で囁いた。男の瞳には正気が戻り、手の平にクリクリを乗せ自己紹介した。
「俺の名は真鶴(まなづる)。昔、この地で船頭をしていたが、人魚と恋に落ち、今は海に拒まれた亡霊だ・・・」
後の豊臣軍による小田原征伐は、豊臣軍も北条軍も、はたまた海洋族をも巻き込んだ、世界危機の戦になるとは知る由もなかった。
第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神 完結
57/57ページ