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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

炎の魔人、イフリートの体内は、血管のように溶岩が流れ、球磨は岩石の橋を渡っていた。炎の守護者でなければ、暑さで倒れる程、地獄のような空間だった。
「こいつは早く見つけねーとな・・・皆、溶岩に溶かされていないと良いんだが・・・」
球磨は目をつぶり、僅かな気を感じさせながら、魔人の心臓部へ向かった。

溶岩の流れている場所を避けながら、心臓部に向かって駆けていくと、遠くに紅史郎が双剣で魔人の体内を必死に斬っていた。
「く・・ビクともしない・・・」
溶岩で出来た内臓に、鉄の刀の斬撃は無意味だった。球磨は見兼ねて、彼の手を止めた。
「もう止せ!!無駄に体力を消耗するだけだ!!」
「兄さん!?どうやってこの中に」
紅史郎は兄が来たことに目を丸くして驚いた。
「皆の助けを借りて、入れたんだぜ。俺は炎の使い手だからな!!」
球磨は溶岩が吹き出る心臓部にいてもなお、冷静で陽気な態度を取っていた。すると、跪いているツクモに皮肉を言われた。
「・・・わざわざ死に来たのかね?球磨」
「んなわけねーだろ。暑い中お前も助けに来たんだぜ、ツクモ」
「助けたところでどうなるとね?魔人は桁違いの強さを持っている。余の力では止められん」
ツクモが絶望感を持ち、うつむいていると、魔人の呻き声が響いた。球磨は外で仲間が必死に戦っている姿を脳裏に浮かべ、彼に優しく諭した。
「それでも皆は諦めず、魔人に立ち向かっている。お前達をここから出して、俺も戦うぜ!!」
球磨はツクモに手を差し伸べたが、振り払われた。
「余を殺すとね球磨。余は大芹の操り人形だったけん。もう、余が生きる資格などな・・・」
「さんざん悪事を働いといて、逃げんのか!!ツクモ!!」
球磨はツクモの首を掴み、無理矢理起こした。
「お前は造られた存在だろうが、ツクモという1つの存在だ!!俺はお前がした事は許せねーし、嫌いだが、これからやり直せば良い。それにお前は完全に悪には染まっていなかったぜ」
球磨の励ましに、ツクモは目から涙がぽろぽろと出始めた。
「しかし・・・余の体にはイフリートの魂が封印されていた・・・余は一体・・・・」
ツクモはまだ、自身に疑念を抱いていると、紅史郎が決死の覚悟で提案を出した。
「僕と同化しようよ、ツクモ。もしかしたら僕とツクモは2人で1つの存在だったのかもしれない。それに、珠姫さんが貴方の無事を願っているよ!!」
紅史郎がツクモの手を握り、自身の心臓に当てさせた。球磨はそうかと目を瞑り納得していた。
「お前が決めたことなら、それで良い。これだけは言っておくぜ。真の姿になっても、大切な兄弟というのは変わらねーからな」
球磨は紅史郎とツクモに優しく笑いかけて言った。


その頃、姉妹と仁摩と胡桃が珠姫の容態を見ていると、珠姫の体内から黄金の宝玉が出現した。皆は、『何が起きたのだろう?』と宝玉に目を向けた。その時、白い羽衣を身につけた女神の姿の珠姫が出現した。
「美羅、つるぎ・・・わたくしは予言で見ました。ツクモ様の元の姿は太陽神アポロ様だったのよ。そして私達は、前世で彼を護る三種の神器。私は邪を封印する宝玉の化身」
珠姫の言葉に、美羅とつるぎは昔の過去を思い出そうとしていた。すると珠姫は、ツクモ様と紅史郎に大切なことを告げに行くと言い、魔人の体内へと入っていった。


丁度、ツクモと紅史郎が同化しようとしている時、黄金に輝く珠姫の幻が姿を現した。ツクモは彼女の神々しい姿に驚きを隠せなかった。
「珠姫・・・その姿は?」
「わたくしは、太古の昔に太陽神アポロ様を守護した宝玉の化身だったのですよ」
珠姫はツクモの頬を優しく撫でながら答えた。
「わたくしは、ツクモ様が生きておられるのなら、姿形が変わっても良いです。どうか、勇士達と魔人を倒し、美羅とつるぎを幸せにして下さい・・・」」
珠姫は清々しい笑顔で、ツクモと紅史郎に同化を促した。ツクモは珠姫の想いに応え決心した。
「余・・・いいや、私は太陽神アポロ。紅史郎、私と同化し、再び魔人イフリートを退治するぞ!!」
「僕も同じだよ。それに、またプロメテウスと共に戦えるよな、兄さん!!」
紅史郎は球磨に笑いかけると、彼は頭を掻きながら照れた。
「俺はそんな偉い神の化身ではねーけど、共に戦おうぜ!!紅史郎、ツクモ!!」
ツクモは今まで見た事の無い、勇ましく清々しい表情で、紅史郎と手を合わせた。そして、2人は互いに祝詞を唱えた。
『我々は太陽神アポロの片割れだったが、今ここで、再び一身体と成す』
2人の体からは、太陽のような眩い光が放たれ、球磨は目を半開きにしながらも、やったぜ!!と笑った。すると、珠姫は満足した笑みを浮かべ、姿が再び黄金の宝玉に戻った。球磨はそれを拾うと、心の中で彼女の声が聞こえた。
『わたくしは長い時を経て、人間の姿でアポロ様とプロメテウス様と巡り会えたのですわ』
「そうか。日ノ本の古代神話も勾玉と草薙の剣と鏡の伝説があるから、もしかしたら妹達も」
美羅は鏡で、つるぎは剣だなと球磨は察していた。


光が消えると、ツクモと紅史郎は完全に1つの存在となった。黄金に輝く長い髪、絹で出来た衣に黄金の鎧が身につけられていた。さらには真紅のマントが背を包み、太陽神アポロの真の姿だった。球磨は彼の神々しい姿に言葉が出なかったが、アポロは彼の手を握り告げた。
「さぁ、そなたも覚醒せよ、プロメテウス」
球磨の姿もアポロと同じ姿に、炎のような橙のマントが身に付いていた。球磨は驚きながらも、またアポロと共に戦える嬉しさに笑顔になった。
「まずはここを出るぞ!!プロメテウス。外ではそなたの仲間が戦っているだろう」
「ああ、急ごうぜ!!あ・・これは珠姫から」
プロメテウスはアポロに宝玉を渡した。アポロは玉を強く握り、思いを込めながら胸に当てた。
「・・・珠姫。私は真の姿となった。私の体を乗っ取った奴を成敗しに行くぞ!!」
アポロは太陽の眩い力を出現させ、プロメテウスも聖なる炎を体にまとった。

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