第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
ツクモの宮殿、『教祖の館』にたどり着いた球磨は、胡桃に案内され、螺旋階段を上っていた。最上階に着くと、『神話の間』という中心部に巨大な地球儀が飾ってあり、円形の天井が広がる神秘的な部屋に入った。胡桃は壁画の炎の神プロメテウスを指差して説明した。
「ギリシヤ神話のプロメテウスはご存知かしら?」
「ああ。世話になった孤児院に石像が祀ってあったぜ」
球磨の返答の後、胡桃は予想外の質問をした。
「あなたに似ていると思いませんか?」
球磨は、「そういえば幼い頃にも院長に言われたな」と、深く考えながら答えた。
「容姿は知らんが、火を操るのは共通するかな」
「では、太陽神アポロは誰に似ていると思います?」
球磨は胡桃の質問に直ぐに答えられなかった。輝く金髪はツクモに似ているが、優しく勇ましい顔立ちは紅史郎に似ていた。
(こいつは・・・ツクモに似ているが、紅史郎にもどこか面影が・・・)
「やはり、考えは同じでしたか。もし、ツクモ様と紅史郎さんが元々は同じ姿でしたら、どうでしょう?」
「な・・何を根拠に!?」
「私は、ツクモ様と紅史郎さんの真の正体が気になるの。それはつまり」
『2人が同化し、本来の姿になる事』と胡桃は言葉を続けようとした時、彼女が身につけている紅玉の首飾りが光り、声を封じた。
「少し説明が過ぎたとね。この先は、余が仕切るとね」
ツクモは地球儀の影から姿を現し、隣には紅史郎が黙り込みながら双剣を構えていた。
「僕は球磨と戦った後、真実を受け入れます」
「・・・しゃーねーな。昔のように、また鍛錬しようぜ、紅史郎♪今回は死闘だがな」
球磨は強い意志とは裏腹に、笑顔で西洋槍を構えた。紅史郎は、彼の言葉に『まさか!?』と揺らいだが、余計なことを考えず、双剣で先制攻撃を仕掛けた。
「球磨、君には選択を与えるけん。紅史郎を倒せば、胡桃は自害する。先に胡桃の術が解けたら、紅史郎が自害する。さあ、どちらを選ぶかね」
ツクモは卑劣な術を2人にかけ、球磨の選択を迫らせていた。しかし、球磨は動ずる事なく、紅史郎の剣舞を槍で受け止めていた。
「そんなくだらねー事考えていたのかよ!!」
球磨は槍をなぎ払い、紅史郎を吹き飛ばした。その時、球磨は前に彼と戦ったよりも攻撃の手応えが無いと感じていた。
「どうした、紅史郎?前なんて俺の攻撃を簡単に受け止めたじゃねーか?」
「・・・く・・お前は僕の兄なのか・・」
「・・・それは、お前が俺をどう思ってるかだぜ。お前がまだ兄は生きていると信じているか、とうの昔に忘れたかだ」
球磨は直ぐには自分が兄だと告げず、紅史郎の気持ちを尊重していた。紅史郎は球磨の言葉が受け入れられず、拳で彼の顔を殴った。
「違う・・お前は兄さんでは無い!!体が弱い兄さんを僕が見捨てた。だから・・お前がもしそうなら、僕を憎み、殺すはず・・・」
紅史郎には兄への罪悪感を知らず知らず、球磨に懺悔していた。しかし、球磨は太陽のような強く暖かい笑顔で答えた。
「だけど、その兄さんは逆境を乗り越え、強くなっていたらどうだ?今の拳、全然ビクともしなかったぜ」
「・・・・・」
紅史郎は球磨の自信に満ちた言葉に、黙り込んだ。
「俺はな、大友家に受け入れられなくて、浮浪児になって辛かったが、助けてくれた恩師に出会えた。そして、今の俺が居る。だから紅史郎・・・いいや、血の繋がった大切な弟を一切憎んだ事なんてないさ!!」
球磨は紅史郎の炎を、自らの煌びやかに灯す炎で打ち消し、強大な拳を彼の腹部に放った。彼の鎧は粉々に砕け、その場に崩れ倒れた。その隙に、ツクモに抱かれている胡桃の足元に古びた書物を投げた。胡桃は本が気になり、ツクモから体を離し本を拾い読んだ。
「この本は、胡桃の母さんから託されたんだぜ。小さい頃から勉強熱心だったんだな」
球磨は、胡桃が住む博多の町を訪れた時、胡桃の母より、幼い頃から歴史の研究を記し続けた本を受け取った。そして胡桃と会った時に渡して欲しいと託された。もし娘が慣れぬ環境で辛くなったら、幼い頃の研究心を思い出して、元気になって欲しいと。
「・・・これは私が書いた字・・・」
胡桃は涙をポロポロ流した。球磨は話を続けた。
「お前なら、ツクモの下に居なくても、勉強したい熱意があれば、学者になれるぜ、きっと!!」
胡桃は球磨の強い言葉と、希望を照らす炎のような瞳を見て、曇っていた瞳に光が映え、同時に紅玉の首飾りが外れた。その時、倒れていた紅史郎には短刀で自害する呪いが発動されたが、即座に球磨が短刀を奪い捨て、代わりに金平糖を入れていた小瓶を見せた。
「ギリシヤ神話のプロメテウスはご存知かしら?」
「ああ。世話になった孤児院に石像が祀ってあったぜ」
球磨の返答の後、胡桃は予想外の質問をした。
「あなたに似ていると思いませんか?」
球磨は、「そういえば幼い頃にも院長に言われたな」と、深く考えながら答えた。
「容姿は知らんが、火を操るのは共通するかな」
「では、太陽神アポロは誰に似ていると思います?」
球磨は胡桃の質問に直ぐに答えられなかった。輝く金髪はツクモに似ているが、優しく勇ましい顔立ちは紅史郎に似ていた。
(こいつは・・・ツクモに似ているが、紅史郎にもどこか面影が・・・)
「やはり、考えは同じでしたか。もし、ツクモ様と紅史郎さんが元々は同じ姿でしたら、どうでしょう?」
「な・・何を根拠に!?」
「私は、ツクモ様と紅史郎さんの真の正体が気になるの。それはつまり」
『2人が同化し、本来の姿になる事』と胡桃は言葉を続けようとした時、彼女が身につけている紅玉の首飾りが光り、声を封じた。
「少し説明が過ぎたとね。この先は、余が仕切るとね」
ツクモは地球儀の影から姿を現し、隣には紅史郎が黙り込みながら双剣を構えていた。
「僕は球磨と戦った後、真実を受け入れます」
「・・・しゃーねーな。昔のように、また鍛錬しようぜ、紅史郎♪今回は死闘だがな」
球磨は強い意志とは裏腹に、笑顔で西洋槍を構えた。紅史郎は、彼の言葉に『まさか!?』と揺らいだが、余計なことを考えず、双剣で先制攻撃を仕掛けた。
「球磨、君には選択を与えるけん。紅史郎を倒せば、胡桃は自害する。先に胡桃の術が解けたら、紅史郎が自害する。さあ、どちらを選ぶかね」
ツクモは卑劣な術を2人にかけ、球磨の選択を迫らせていた。しかし、球磨は動ずる事なく、紅史郎の剣舞を槍で受け止めていた。
「そんなくだらねー事考えていたのかよ!!」
球磨は槍をなぎ払い、紅史郎を吹き飛ばした。その時、球磨は前に彼と戦ったよりも攻撃の手応えが無いと感じていた。
「どうした、紅史郎?前なんて俺の攻撃を簡単に受け止めたじゃねーか?」
「・・・く・・お前は僕の兄なのか・・」
「・・・それは、お前が俺をどう思ってるかだぜ。お前がまだ兄は生きていると信じているか、とうの昔に忘れたかだ」
球磨は直ぐには自分が兄だと告げず、紅史郎の気持ちを尊重していた。紅史郎は球磨の言葉が受け入れられず、拳で彼の顔を殴った。
「違う・・お前は兄さんでは無い!!体が弱い兄さんを僕が見捨てた。だから・・お前がもしそうなら、僕を憎み、殺すはず・・・」
紅史郎には兄への罪悪感を知らず知らず、球磨に懺悔していた。しかし、球磨は太陽のような強く暖かい笑顔で答えた。
「だけど、その兄さんは逆境を乗り越え、強くなっていたらどうだ?今の拳、全然ビクともしなかったぜ」
「・・・・・」
紅史郎は球磨の自信に満ちた言葉に、黙り込んだ。
「俺はな、大友家に受け入れられなくて、浮浪児になって辛かったが、助けてくれた恩師に出会えた。そして、今の俺が居る。だから紅史郎・・・いいや、血の繋がった大切な弟を一切憎んだ事なんてないさ!!」
球磨は紅史郎の炎を、自らの煌びやかに灯す炎で打ち消し、強大な拳を彼の腹部に放った。彼の鎧は粉々に砕け、その場に崩れ倒れた。その隙に、ツクモに抱かれている胡桃の足元に古びた書物を投げた。胡桃は本が気になり、ツクモから体を離し本を拾い読んだ。
「この本は、胡桃の母さんから託されたんだぜ。小さい頃から勉強熱心だったんだな」
球磨は、胡桃が住む博多の町を訪れた時、胡桃の母より、幼い頃から歴史の研究を記し続けた本を受け取った。そして胡桃と会った時に渡して欲しいと託された。もし娘が慣れぬ環境で辛くなったら、幼い頃の研究心を思い出して、元気になって欲しいと。
「・・・これは私が書いた字・・・」
胡桃は涙をポロポロ流した。球磨は話を続けた。
「お前なら、ツクモの下に居なくても、勉強したい熱意があれば、学者になれるぜ、きっと!!」
胡桃は球磨の強い言葉と、希望を照らす炎のような瞳を見て、曇っていた瞳に光が映え、同時に紅玉の首飾りが外れた。その時、倒れていた紅史郎には短刀で自害する呪いが発動されたが、即座に球磨が短刀を奪い捨て、代わりに金平糖を入れていた小瓶を見せた。