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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

その頃、球磨達は島原の広大な船着場にたどり着いたが、近衛兵はおろか、人っこ一人見かけなかった。3人は、また岩陰に潜伏してないか、武器を構え警戒した。桜龍はまぶたを閉じ、静かに周りの気を感じとっていた。
「殺気も感じないし、恐ろしい程誰もいないぜ」
「近くに罠もなさそうだな・・俺達に怖気づいたのか、それとも、わざとおびき出してるのか・・・」
球磨はとりあえず進むしかないなと判断し、先を急いだ。
しばらくし、雲仙岳に続く山道を進むと、宮殿の門にたどり着いた。桜龍は、身に覚えのある女の妖気を感じた。
「ここで待ち伏せか。狭い切通よりも教祖の宮殿で迎え討つってか」
「どうする?湘さん達が来るまで潜入を待つ?」
仁摩は慎重な判断をしていると球磨は、いいやと首を横に振った。
「俺はここまで来たら立ち往生せず、攻めに行く。桜龍と仁摩殿は、湘達と合流して来てくれ」
「そんな・・1人では無茶ですよ!」
仁摩は球磨を説得しているが、球磨は笑顔で彼女の手の甲に、西洋の騎士のような振る舞いで口付けした。仁摩は突然の行動に赤面し、言葉が出なかった。
「心配してくれて、ありがとうな。だが、何も決闘しに行くんじゃないぜ。止めに行くんだ。こんなくだらねぇ茶番をな」
球磨の揺るがぬ決意に、桜龍は引き止めることなく、頷いた。
「球磨ちゃんの決意に心打たれたぜ」
桜龍は球磨の肩をポンポン叩いた。そして直ぐに、球磨の琥珀色の瞳を見つめながら告げた。
「真に護りたい、救いたい者がいるんだろう?」
「ああ・・。お前達には理解し難いものだと思うが、俺の信念を貫かせて欲しい。それと、何があっても俺を信じて欲しい」
球磨は2人に告げると、桜龍は笑顔で、『おうよ!!』と答えた。
「自分が決めた意志なんだから、貫こうぜ!」
「それでも、ツクモ達にたどり着くまでに多くの敵が待ち構えているから、援護しますよ!!」
仁摩も気合いを入れて、棍棒を回して励ました。
「頼もしいな。だが、桜龍、絶対に仁摩殿を危険にさらすなよ」
球磨は大きい腕で、桜龍と仁摩に肩を組んだ。球磨の強い笑顔は、これから決戦を迎えるのに希望の光を灯す炎のようだった。


球磨達は門へ入ると、全体的に左右対称の造りになっており、広い石畳の広場に周りをアーチ状に飾られた外回廊が囲んでいた。正面の扉も目の前に見えており、日ノ本の城のような守備に特化した複雑な造りとは正反対だった。
「これが西洋建築かぁー。王や貴族が過ごすには良いが、直ぐに攻められる城だぜ」
「それに、城壁が同じ模様で何だか落ち着かないわ・・・」
出雲大社で長く暮らしていた仁摩と桜龍には、初めて見る宮殿の良さが理解できなかった。
球磨も確かにそうだなと、納得していた。その時、外回廊から女と、近衛兵が姿を現した。桜龍はやはりお出ましかと帯刀した。
「ツクモ様の居城にご不満なら、出て行ってくださる?」
「何の小細工も無く、堂々と出てきたとは相当な自信だな」
「ツクモ様は球磨に用があると仰っていたわ。それ以外には用はないわ」
「おいおい・・俺達は頭数に入れてねーのかよ。イイ男は球磨ちゃんだけじゃねーのに」
桜龍は残念そうに呟くと、仁摩に呆れられた。
「仕方ねーな。俺が、この姉さんを骨抜きにしてる間に、球磨ちゃんと仁摩殿は先に行ってくれ」
桜龍は珠姫に挑発的な顔を向けたが、まるで眼中に無い顔であしらわれた。続いて仁摩も、桜龍の隣で、棍棒を構え凛々しく言った。
「桜龍だけでは心もとないわ。私が露払いするから、あなたは真面目に戦いなさい」
「う・・姉さんとのお楽しみは無理だな・・」
「すまねぇ!!桜龍、仁摩殿!!先にゆく」
「直ぐ追いつくからさ♪」
「無用な争いは避けたかったけど、仕方ないわね。さあ、近衛達!!2人にお仕置きしてあげなさい!!」
「望むところよ!!成敗されるのは貴方達よ!!」
「おうよ!!覚悟しな、ツクモの嫁さんよ!!」
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