第2章 九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神
ツクモの宮殿、豪華な装飾を施した鏡台が並ぶ『化粧の間』で、珠姫は女官を呼び、胡桃に天女のような礼服を着せ、髪型と化粧を整えさせていた。
「もう少しで完成よ。貴方はきっと、新しいツクモ様の妻に迎え入れられるわね」
「ありがとうございます、珠姫様」
珠姫は無感情な胡桃に、さりげなく聞いてみた。
「球磨の事はどう思っているの?」
「突然何でしょうか?私はトワ・パライソに身を捧げる所存なので、そんな人は知りません」
「そう・・変な事を聞いてごめんさいね」
(完全に球磨の事は頭には無いみたいね)
珠姫は少しホッとしていた。
「ところで・・・珠姫様、美羅さんとつるぎさんは何かあったのでしょうか?あれから何も情報を聞かないのですが・・・」
胡桃は心を操られていても、気遣いが出来る優しい性格は変わっておらず、2人の身を案じていた。珠姫は複雑な心境ながらも、胡桃に余計な心配をかけないようにと、適当に誤魔化した。
「あの子達は九州で信者を引き連れ、豊臣兵に一揆を仕掛けているわ。結構長引いているみたいだけど、妹達は強いから直に戻ってくるわよ」
胡桃はそうですか、と安堵していた。珠姫は化粧の最後に、頬紅と口紅を付けた。
その後、珠姫は胡桃の着付け化粧を終えた後、石畳の広場に集う近衛兵に命じた。
「では、この策で参りますわよ。登山道での戦いは、貴方達も危ない。この宮殿に賊兵を引き付けて袋のネズミにするのよ!!」
珠姫の艶やかで勇ましい姿に、近衛兵は一斉にかけ声をあげ、それぞれ持ち場に移動した。珠姫は彼らの姿が見えなくなったのを見計らって、ツクモが爽やかな笑顔で彼女に近づいた。
「随分と気合いを入れているとね、珠姫。美羅とつるぎは余の元を離れてしまい、宮殿内も寂しいとね。・・珠姫は大丈夫かね?」
「ええ。あの子達は自分の道を選んだのだから、もうわたくしにもツクモ様にも関係ない存在ですわ。わたくしは、何があろうともツクモ様のお側にいさせていただきます」
珠姫は妹達への愛情を捨てているつもりが、ツクモは彼女の細い体を強く抱きしめ、長い黒髪を優しく撫でた。
「無理をしてはいかんとね。大切な妹達をそう簡単に切り捨てられんのは十分理解しているとね」
「ツクモ様・・・貴方は、変わらないで欲しいです・・・。もし、姿や人格が変わってしまっても、わたくしは、貴方のお側にずっとおります」
珠姫は目を潤わせながら、ツクモのかんらん石の瞳を見続けた。ツクモは彼女の言葉を察し、安心させるように耳元で囁いた。
「願わくば、余は余のままで居たいとね。ばってん、それが叶わない事もあるけん。その時は、受け入れられなかったら無理に受け入れんでよかとーね」
ツクモは陽気な口調と表情で、珠姫に笑いかけた。そして、語り部のように言葉を続けた。
「余が変わるか変わらんかは、球磨の選択次第とね。彼とは過去に深い因縁があると感じてしまうとね。そして、再び戦う宿命なのか・・・その真実も確かめたいとね」
ツクモは珠姫に深く甘い口付けをした。珠姫は彼の覚悟に感化されると、予言で知ってしまった真実を口に出すことが出来なかった。
(ツクモ様が真実を知ったとき、変わってしまうのかしら?それとも・・・)
珠姫はツクモへの複雑な想いを心の奥底に封印しながら、これからの戦いを考えた。
「もう少しで完成よ。貴方はきっと、新しいツクモ様の妻に迎え入れられるわね」
「ありがとうございます、珠姫様」
珠姫は無感情な胡桃に、さりげなく聞いてみた。
「球磨の事はどう思っているの?」
「突然何でしょうか?私はトワ・パライソに身を捧げる所存なので、そんな人は知りません」
「そう・・変な事を聞いてごめんさいね」
(完全に球磨の事は頭には無いみたいね)
珠姫は少しホッとしていた。
「ところで・・・珠姫様、美羅さんとつるぎさんは何かあったのでしょうか?あれから何も情報を聞かないのですが・・・」
胡桃は心を操られていても、気遣いが出来る優しい性格は変わっておらず、2人の身を案じていた。珠姫は複雑な心境ながらも、胡桃に余計な心配をかけないようにと、適当に誤魔化した。
「あの子達は九州で信者を引き連れ、豊臣兵に一揆を仕掛けているわ。結構長引いているみたいだけど、妹達は強いから直に戻ってくるわよ」
胡桃はそうですか、と安堵していた。珠姫は化粧の最後に、頬紅と口紅を付けた。
その後、珠姫は胡桃の着付け化粧を終えた後、石畳の広場に集う近衛兵に命じた。
「では、この策で参りますわよ。登山道での戦いは、貴方達も危ない。この宮殿に賊兵を引き付けて袋のネズミにするのよ!!」
珠姫の艶やかで勇ましい姿に、近衛兵は一斉にかけ声をあげ、それぞれ持ち場に移動した。珠姫は彼らの姿が見えなくなったのを見計らって、ツクモが爽やかな笑顔で彼女に近づいた。
「随分と気合いを入れているとね、珠姫。美羅とつるぎは余の元を離れてしまい、宮殿内も寂しいとね。・・珠姫は大丈夫かね?」
「ええ。あの子達は自分の道を選んだのだから、もうわたくしにもツクモ様にも関係ない存在ですわ。わたくしは、何があろうともツクモ様のお側にいさせていただきます」
珠姫は妹達への愛情を捨てているつもりが、ツクモは彼女の細い体を強く抱きしめ、長い黒髪を優しく撫でた。
「無理をしてはいかんとね。大切な妹達をそう簡単に切り捨てられんのは十分理解しているとね」
「ツクモ様・・・貴方は、変わらないで欲しいです・・・。もし、姿や人格が変わってしまっても、わたくしは、貴方のお側にずっとおります」
珠姫は目を潤わせながら、ツクモのかんらん石の瞳を見続けた。ツクモは彼女の言葉を察し、安心させるように耳元で囁いた。
「願わくば、余は余のままで居たいとね。ばってん、それが叶わない事もあるけん。その時は、受け入れられなかったら無理に受け入れんでよかとーね」
ツクモは陽気な口調と表情で、珠姫に笑いかけた。そして、語り部のように言葉を続けた。
「余が変わるか変わらんかは、球磨の選択次第とね。彼とは過去に深い因縁があると感じてしまうとね。そして、再び戦う宿命なのか・・・その真実も確かめたいとね」
ツクモは珠姫に深く甘い口付けをした。珠姫は彼の覚悟に感化されると、予言で知ってしまった真実を口に出すことが出来なかった。
(ツクモ様が真実を知ったとき、変わってしまうのかしら?それとも・・・)
珠姫はツクモへの複雑な想いを心の奥底に封印しながら、これからの戦いを考えた。