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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

成政はモトスと千里の攻撃に押されてきたが、最後の悪あがきで、闇の波動を放った。モトスは精霊のハネから翡翠の結界を出現させたが、攻撃に耐えきれず衝撃を受けてしまった。
「くっ・・・なかなか・・しぶといな」
「より協力な劇薬に出来ているのでしょう。成政殿はあの者の実験台にされてしまったのか・・・」
千里が同胞で敵対心を抱いている大芹の憎々しい顔を思い出し悔やんでいると、モトスは彼の頭をくしゃっと掴んだ。
「今のお前は一人ではない。今は過去を悔いず、目の前で苦しんでいる成政殿を救おうぞ!!」
モトスは先の攻撃で傷を負っても、気丈な態度で千里を励ました。千里は吹っ切れたように『そうですね』と頷き、再び術を放つ準備をした。美羅は、モトスと千里の戦いを静かに見守っていると、成政の懐から手鏡が反射しているのを目にした。
「モトス!!千里!!成政様は、あたしが渡した鏡を持っているわ!!その鏡には禍々しい紅玉が埋め込まれているの。それを壊せば邪の力は半減するわ!!」
モトスは美羅に『恩に着る!!』と告げると、彼女は照れながら視線をずらした。お都留はその光景に朗らかに笑みが出た。
「弱点が分かれば、一気に片を付けるぞ!!千里」
モトスは分身の術で、成政を錯乱させた。その隙に千里は彼の懐に入り、手鏡を奪った。
「それは美羅から貰った大切な鏡だ!!帰せー!!!!」
(成政様・・・姿や人格は変わっても、あたしの鏡を大切に持ってくれていたとは・・・)
美羅は変わり果ててても、まだ成政としての理性が残っているので、希望を捨てていなかった。
成政はモトスを振り払い、千里に金棒を喰らわせようとしたが、彼は遠慮無く、鏡を金棒の棘に投げ、鏡と紅玉は木っ端微塵に砕け落ちた。すると、紅玉は黒い石に変わり、成政の邪気が薄れてきた。2人は今が好機と、お互いの手を握り、片手に翡翠と深紅の光をまとい術を唱えた。モトスの聖なる嵐に千里の鉄鋼の如き岩石が混ざり合い、成政の巨体にぶつけた。成政の腹部に堅く神秘的な光を放つ岩が当たった。それと同時に、劇薬の毒は消え去り、成政は元の姿へと戻った。美羅は素早く成政の元に駆けつけたが、彼は『来るな!!』とさけんだ。
「美羅・・お前を巻き込んで、すまなかった。俺は、秀吉に降伏するよ。俺は最後までやり通せなかった」
成政が涙を流しながら、美羅に告げたが、彼女は必死に反対した。
「それはいけません、成政様!!それならあたしが、貴方の変わりに・・・」
「それはならん!!」
成政は美羅に歩み寄り優しく諭した。
「お前には、本当に心から想う男と結ばれて欲しい。そして、戦とは無縁な幸せな家庭を築いて欲しい。それが俺の願いだ」
「嫌よ!!あたしは貴方を愛している!!あなたと共に生きると決めた・・・」
美羅は涙を流しながら訴えたが、成政は優しい笑みを浮かべ、彼女の額に口づけをした。
「ありがとう、美羅。でも、もう俺にはお前を護れる力は無いんだ。それに、俺はお前の父ではないよ。お前は俺に恋心を抱いていたよりも、父に重ねていたのだろう」
成政は美羅の本心を理解していた。だからこそ、彼女には生きて幸せになって欲しいと願っていた。すると、千里が美羅に告げた。
「成政殿はあなたの事を思った末に決めた事なので、受け入れましょう」
美羅はまぶたを閉じ沈黙したが、成政の儚げな笑顔を見て、新たな決意をした。
「成政様・・・少しの間でしたが、一緒にいられて嬉しかったです。だから、あたしはあなたの考えを受け入れます」
「美羅・・・」
「あたしは、彼らと共に、姉と妹と・・・ツクモの野望を止めに行きます!!」
美羅の大きな瞳は、鏡のように真実を映し、希望に満ちた輝きを放っていた。


その頃、雲仙の宮殿では、ツクモの元に成政が降伏し、美羅がモトス達に寝返ったと知らせが届いた。珠姫は信じられないと動揺を隠せなかったが、ツクモは怒ることも動揺もせず、予想通りだと悟っていた。
「よかよか、むしろ好都合とね。珠姫も余の元を離れてもよかよ」
ツクモは庭園を一望できる外回廊で、呑気にスペイン王国のハープを弾きながら珠姫に言うと、彼女は彼を後ろから抱きしめた。
「美羅はもう、わたくしの妹ではありませんわ。わたくしは何があっても、貴方様のお側におります」
ツクモは、『そうかね』と言い、演奏を止め珠姫を抱きしめ口づけをした。

                                                   第9話 完
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