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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

本格的に、豊臣軍及び勇士達がツクモ信者による一揆を阻止している頃、陰のニホン世界の天守閣の地下では、薄暗い石垣に囲まれた実験室に、科学者の壮年の男が細長いガラス瓶を持ち、黒紅色の薬品を入れていた。
「ツクモサマの注文がそろそろ出来そうだ。この間は美羅とかいう妻の手鏡を改造しろと偉そうに。人使いが荒い魔人なことだ」
男が不満を垂らしていると、居城の主が地下室に入ってきた。
「人使いというが、貴様も人を捨てた者であろう。大芹(おおぜり)」
親方は冷たい表情をしながら、大芹の袖で隠れている異形の右腕を見た。大芹は整えた亜麻色の髪を掻き上げながら苦笑いした。
「これはこれは、親方様。今のは内密に」
大芹と呼ばれた男は、作り笑いしながら話をそらした。
「立秋は過ぎ涼しくなったので、九州で一揆が激しくなりましたな。これで、ツクモサマが日ノ本を支配できれば我らの勝利でありますな」
大芹は高笑いしながら言ったが、親方はツクモなど眼中に無く、もっと遠くを見ていた。
「ツクモは勇士達に負けるな。まぁ、最終手段は考えているがな」
「ハッハッハ!!流石は親方様ですな!!」
大芹は親方を煽てた。


その頃、豊臣本隊は山陽道を通り、関門海峡を渡ると、一気に玄界灘から博多に到着した。港町を進むと成政が秀吉を出迎えていた。
「久しぶりだな、秀吉。九州の危機に自ら駆けつけてくれたのか」
「成政・・・ツクモとやらを支援していたみたいだが、何かあったのか?」
秀吉は恐る恐る成政に近づくと、彼は申し訳なさそうな顔をし、土下座して謝った。
「すまぬ、秀吉!!俺が肥後を上手くまとめられなかったから、ツクモを頼ってしまった・・・」
「いいや・・・俺も天下統一しか考えず、九州の状況を読んでいなかった。俺こそ、すまなかった」
「では、共に船に乗り、大阪へ帰ろう!!」
成政は秀吉に握手を求めたが、秀吉は顔色を変え拒否した。秀吉は成政に心を許したつもりではいたが、まだ出方を伺っていた。
「成政、本当にお前は俺に付いていく気はあるのか?」
成政は秀吉の予想外の返答に一瞬、言葉が出なかった。
「あるに決まってるだろう!!一緒に信長様の天下を支えた仲なんだからさー」
成政は昔なじみの態度に変わり、必死に秀吉を説得したが、彼は張り詰めた態度で反論した。
「お前が俺を裏切っていたなど最初から知っていたぞ!!」
「それは・・ツクモに脅されてたから・・」
成政は切羽詰まった表情で否定したが、秀吉は成政が本心を言っていないことを見透かしていた。
「とある密偵から、お前の動向を逐一聞いていたのでな」
秀吉は、大阪城へ千里が放ったフクロウから文を受け取っていた。そこで、成政は反豊臣政府の大名や民から検地を実行しているのは偽りで金や米をトワ・パライソの資金にしているとまで知らせを受けていた。
「・・・やはり、こうなると思ったよ。だが、ツクモの傘下に入れるつもりはない!!」
成政は悪意に満ちた表情で笑い、懐から短銃を取り出し秀吉に銃口を向けた。街の塀などにも、信者が武装し秀吉を囲んだ。
「俺を始末するつもりか?」
「ああ。天下は俺が取る。お前のような能天気な顔して、かつての戦友を踏み台にした貴様に天下は取らせない!!」
秀吉は動ずる事無く溜息をつき、成政に問うた。
「それじゃあ、お前は日ノ本を統一し、民を導く覚悟は出来ているのか?」
秀吉の鋭い眼光と言葉に成政は一瞬怯んだが、臆すること無く反論した。
「出来ているに決まっている!!ツクモと一緒なら、反逆する民の心を支配し服従させる。そうすれば、争いの無い素晴らしい理想郷が出来る!!」
「それは、自分の力じゃないな。そんな宗教に頼らなければ何も出来ない家臣なんかは、もう要らん」
成政は気が狂ったかのように高笑いし、周りに居る信者に合図した。
「クックク!!アーハハハハ。その言葉を待ってたぞ!!サル!!今からお前ら豊臣を俺とツクモ、トワ・パライソへの反逆者として始末してやる」
成政と周りにいる信者は、秀吉を銃で蜂の巣にしようとした。しかし、秀吉は避ける事無く地面を見た。すると、信者は砂嵐に覆われ身動きが取れなくなった。
「何奴!?」
信者は気配を感じ、銃で撃とうとした瞬間、疾風の如き拳が顔に当たり倒れた。砂煙が薄くなった時に、他の信者も攻撃の主目掛け構えたが、発砲寸前に鎌で銃を真っ二つにされた。
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