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第2章  九州の大一揆編 炎の魔人と聖火の神

翌日、球磨と桜龍と湘と仁摩は、先発隊として別府から肥後を通り、先に島原へ向かった。モトスと千里は、後発隊として秀吉の援軍の到着を待っていた。
直ぐに、豊後の別府港では加藤清正率いる兵が到着した。彼は幼い頃から豊臣秀吉に仕える、剛毅と聡明さに長ける武将である。モトスと千里は下船した清正に深くお辞儀をした。すると彼は豪快に2人に挨拶した。
「そんな固っ苦しい挨拶じゃなくて、もっと砕けて欲しいぜ。偵察ご苦労だったな、モトスと千里」
「ああ、そうでしたね。清正殿も瀬戸内海からの渡航、御足労様でした」
「途中に山陽や四国の兵にも協力要請を頼んだから、一気に秀吉様にあだなす輩を退治してやるぜ!!」
「清正殿の強さは誰にも劣らぬ事は十分理解していますが、ツクモは強大な力を持っています。どうか無茶をしないで下さい」
モトスが清正に用心深く言うと、清正も『ああ、そのつもりだ』と答えた。その時、清正の隠密が慌ただしい表情で彼に伝えた。
「清正様!!大変です!!トワ・パライソの信者共に博多と太宰府を占拠されました!!」
「何だと!?秀吉様率いる本陣が危ない!!」
清正は太宰府に向かおうとしたが、秀吉の腹心、石田三成から肥後の守備を任されているので、迷っている。モトスは私が行きますと申し出た。
「僕も行きます。もしかしたら、成政殿も秀吉様の元へ向かうと思いますので」
いつの間にか現れた千里も申し出た。モトスは太宰府、千里は博多町へと向かった。


数刻が経った太宰府では、美羅が信者を引率れ、天満宮内の書庫の方へ向かった。豊臣兵も、彼女の愛くるしさに魅了され攻撃出来ずにいた。
「こんな所に歴史書や神道本なんて要らないわ。トワ・パライソの教本を置く書庫にしてあげる」
美羅は本殿の直ぐ側の書庫をまさに襲撃しようとした。その時、学者の紋治(もんじ)が目の前に立ちはだかった。
「戯言をぬかすな、インチキ宗教め!!娘をさっさと返せ!!」
「娘って、胡桃ちゃんの事かしら?おじさん?無駄よー。あの娘は学者になる夢を叶えるために、広告塔として励んでいるわよ」
紋治はそんな馬鹿な・・と信じ難い表情をした。美羅は澄ました顔で笑いながら提案した。
「それなら、おじさまも信者になりましょうよ。そしたら、親子一緒に幹部になれるわよ」
「断じて断る!!それより、胡桃はここにいるのか?」
美羅は何処にいるか教えてあげると、彼の目の前に鏡を出した。すると、島原の町民に宗教の教えを説いているところが映し出された。
「そんな・・胡桃がこんな姿に・・・」
愕然とした紋治を見て、美羅は嘲笑いながら言った。
「胡桃ちゃんは、宮殿に来てから勉強熱心だから、あなたもツクモ様の下で働かない?もう一度言うわ、親子で幹部になれるよ♪」
美羅は鏡の力で紋治を操ろうとした。しかし突如、数本の手裏剣が鏡を割った。
「これ以上、人の心を惑わすのは許さぬ!!」
モトスが翡翠の精霊のハネを羽ばたかせ、颯爽と美羅の前に現れた。すると彼女は陽気な口調で挨拶した。
「あらー!!何時ぞやの森精霊じゃないのー?おじさまも、あたしの下僕になりたいの?」
美羅は甘い声で誘惑したが、モトスは動じること無く首を横に振った。
「可愛い声をしても、俺は誘惑に乗らぬ。若き娘でも、悪さが過ぎると容赦はせぬぞ」
モトスは双剣を構え美羅を睨むと、彼女は何か企んでいる顔をした。
「まぁ、可愛いハネを持ってるのに、怖いおじさまね。そんなおじさまには、精神的苦痛を与えちゃうよ。みんなー出番よ♪」
美羅は門で待機していた親衛隊の男達を呼び叫ぶと、彼らは武装しモトスに襲い掛かった。
「美羅ちゃんの邪魔する虫親父なんぞ、駆除してやるぜ!!」
「く・・四面楚歌か。それにしても、虫親父とは酷いな・・・」
モトスは不満な顔をしながらも、目にも止まらね速さで、次から次へと現れる親衛隊を戦闘不能にしたが、キリがない。すると、上空から輝きの鱗粉が撒かれ、親衛隊の動きを止めた。そこには、モトスの同胞、森精霊の仲間達が援護に来た。
「モトスさん!!私達も加勢に参りました」
モトスの恋人、お都留(おつる)が短い銀髪をなびかせながら上空から舞い降り、襲って来る敵を長剣で峰打ちした。続いて、精霊戦士の実力者、白州(はくしゅう)が大太刀から真空波を放ち、敵を一網打尽に吹き飛ばした。
「エンザン長老からの命だ。九州のヘンテコ宗教とやらを潰しに来たぜ」
白州が得意げに公言すると、彼の懐から小精霊の小助が出てきて、冷やかした。
「白州兄ちゃんは九州に行って、球磨兄ちゃんに会いたいと言ってたじゅら。あと、『カリーご飯』と、『かすてら』を食べてみたいとも言ってたじゅら♫」
白州は顔を赤くしながら、『余計なこと言うな!!』と、小助の頭を指でグリグリさせた。球磨とは、過去に好敵手として刃を交え、大切な者を護る為に共闘し友情を分かち合った。白州は今度は自分が借りを返したいと九州まで援軍にきたのだ。事実、南蛮の食べ物にも興味を持っている。美羅は、『変な人達ね』と冷笑していた。
「あらまぁ、可愛いお客さんねー。甲斐国の森精霊も、信者になりにはるばる九州に来たのかしら?」
美羅がお都留達を挑発すると、気の強い女戦士と、血気盛んな男戦士と、小精霊が自信満々な態度で言い返した。
「小娘如きに、モトスさんも森精霊もやられたりしないわよ!!あんたこそ、森精霊の力をみくびるんじゃないよ!!」
「森精霊の侍魂を見せてやるぜ!!」
「おら達は富士山信仰じゅら!!」
精霊戦士と小精霊の気迫に、お都留と白州は苦笑いした。
「まぁ・・親衛隊とやらは俺らに任せろ。モトスは、美羅って女に目を覚まさせろ」
精霊戦士は武器を構え、小精霊も武装し木刀や弓を構えた。美羅は予想外の乱入者にも動ずる事無く、モトスを挑発した。
「まあ良いわ。何十人仲間が来ても、脅威ではないわ。それじゃあおじさま、あたしが相手してあげる」
美羅は鏡を複数出現させ、モトスを囲んだ。モトスは、まさか!?と何が起こるか分かっていたが、鏡を壊す前に、後ろから鏡に写った自分が現れ、なす術なく、鏡の中に引き込まれた。お都留はモトスを助けようとしたが、透明な壁に阻まれた。
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