店長のぼやきいろいろ

遅刻!猫の日小ネタです!

2025/02/24 11:50



「ねぇお父さん、お母さん、今日は何の日か知ってる?」

休日の朝、3人で朝食を囲み「いただきます」と声をそろえて。
最初に味噌汁を一啜りしたところで一勇にそう問われた俺は、壁にかかっているカレンダーに視線を移した。

「ん?あ〜、そうか、今日は2月22日…。」
「猫の日、だね!」

箸を片手に答えを告げる嫁さん。
情報収集のために朝からつけっぱなしのテレビからも、「今日は猫の日です!」と爽やかに告げるアナウンサーの声が聞こえた。







《続々々々々々々々々々々・2月22日》







「昨日ね、友達と話してたんだ。もし猫になったらどんな感じかな、って。」

茶碗に山盛りのご飯を思いっきり頬張ったあと、一勇が突然そう言い出すので、俺は危うく口に含んだ味噌汁を吹き出しそうになった。

「ぶっ!一勇、おまえ…。」
「うん、ぼくは猫になった感じをちょっとだけ知ってるからね。でも言ってないよ、ちゃんと話を合わせておいた。安心して。」

ぽやぽやっとしているようで、実は賢い息子に胸を撫で下ろす。
こういうところは、嫁さんに似たんだろうな…なんて。

猫の日にちなんだ限定猫型スイーツやら猫グッズやらを紹介しているテレビ画面を眺めつつ、俺は箸を進める。

「それでね、友達が『もし一緒に猫になっなら、いつもの公園のいちばん大きな木に登ってみたいね、どっちが先にてっぺんに着けるか競争しよう』って言ってたんだ。」
「ふふ、楽しそうだね。」

もりもりと朝ごはんを食べながら、にこにこと穏やかな笑顔で一勇の話に耳を傾ける嫁さん。
どこまでも空想の話なのに(いや、俺達の場合は若干過去でもあるのが何とも言えないが)、一勇はまるで将来の夢を語るかのように目を輝かせていて。

「でしょ?そう言えば、僕たちも、いつも誰か一人が猫になってて、みんなで一緒に猫になったことないなぁって。」

ああ…そう来たか。

一勇、毎年誰かが猫になる家庭なんて、世界中でウチぐらいしかないからな?

その話題で「確かにね〜」って母親が頷いてくれる状況も、ウチでしかありえないからな?

「ね、お父さんとお母さんは、もし3人一緒に猫になったら、何がしたい?」

突然の一勇からの質問、真剣に答えを探す嫁さん。

「うーん、猫だからできること…かぁ。やっぱり、木登り?」
「僕はね、まず3人でお散歩!」
「それは猫じゃなくてもできるんじゃないか?」

俺が突っ込めば、一勇はいつの間にか最後の一口になっていたご飯をぱくん!と口に放り込んで。

「でも、猫だったら狭いところも通れるし、塀の上も歩けるし、きっと楽しいよ!」
「なるほど。」
「あとね、疲れたら3人でお昼寝する!」
「それも猫じゃなくてもできるけど?」
「でも、みんなもふもふだから、くっついて寝たらきっとあったかくて気持ちいいよ!」
「それもそうかもね。」
「あと、3人で美味しいものをいっぱい食べる!」
「それも別に…いや、猫ならそれこそ腹がいっぱいになるまで食えるか。身体が小さいもんな。」
「一勇、いつもはお魚はあんまり食べてくれないけれど、猫になったら沢山食べてくれるかしら?」

空想上の話で盛り上がる、朝の食卓。

楽しげな一勇と嫁さんを視界に捉え、こんな話もたまにはいいか…なんて思いながら、同時に、そうだ、これは空想の話なんだ…と改めて自分に言い聞かせる。

今年は、誰も猫にならないぞ。
簡単なことだ、今日1日、浦原商店に近づかなければいいだけなんだ。

「ああ美味しかった!」
「ごちそうさまでした〜!」

そして、いつものように朝食を食べ終わり、家族3人でぱちんと手を合わせた、その時だった。

ぽんっ!
「にゃっ?!」
ぽんっ!
「ににゃっ?!」
ぽんっ!
「ニャッ?!」

…見事、俺達3人は、それぞれの座っていた椅子の上で、猫の姿になっていた。




「ニャニャ、ニャニャ〜!?(な、なんで猫になっちまったんだ!?)」
「な〜ん?(お母さん、浦原さんからもらったもの、朝食に出てた?)」
「に、にに〜?(そう言えば、今日のお味噌汁のお味噌は、浦原さんからいただいたものだけど…でも、ずっと前から使ってたよ?)」
「ニャニャ〜…(まさか、味噌の奥の方に猫になる薬が仕込んであったとか…?)」
「な〜ん?(それが、ちょうど猫の日に発動しちゃったとか?狙ってたのかな?)」
「ニャ〜…(浦原さんめ…ウチの味噌の減り具合まで計算してるとか、恐ろしすぎるだろ…)」
「にゃあ〜ん(せめて、お茶碗を水につけてから猫になりたかったなぁ)」
「ニャニャ…(織姫、そこじゃねぇだろ…)」

にゃ〜にゃ〜、にーにーと会話して。
俺達3人は猫になった顔を見合わせると、同時に「ぷにゃっ!」と小さく吹き出した。

「ニャニャ!ニャ!(しょーがねぇ。猫になっちまったんだし、この際一勇のやりたかったこと、全部やるか!)」
「な〜ん?(え、いいの!?)」
「にゃ〜ん?(ふふ、いいんじゃない?まずは3人でお散歩かな?)」

猫にならなくたってできるだろ?なんて言ったけど、3人で散歩なんて、いつしたのかもう思い出せないくらい前のこと。

今年も猫になっちまったのは不服だけど、3人で散歩…という一勇の願いを叶えるいいきっかけになったこともまた事実。

猫になっちまった以上、今日は仕事にならねぇからな。
それならいっそ、家族と1日過ごすのも悪くない。

どうせ、半日程度で元に戻れるんだろうし…なんて、楽観的になっちまうのは、多分嫁さんの影響だ。

「ニャニャー!(じゃあ、腹ごなしの散歩と行くか!疲れたら昼寝すればいいし)」
「なーん!(やったー!)」
「にゃにゃ〜!(ふふふ、すっごく楽しそうね!)」

換気用に少しだけ開けてあったリビング窓から、するり…と抜け出して。
俺達3人は、猫の姿で散歩へと出かけたのだった。








「うーん…どうしてお父さんだけ、元に戻れないんだろうねぇ?」
「ねぇ…もう夕方なのに。」
「ニャニャ…(何でだよ…)。」


(2025.2.24)



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遅刻しましたが、どうにか今年も猫の日小ネタをアップできました!ああ、よかった!(自己満)

それにしても、サイトを確認しようとしたら、強制でCM見させるタイプの広告がでてきたんですけど、あれ何ですか…?
サイトのお客様、毎回アレに対応しなくちゃいけないの、かなりのストレスなのでは…?

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