店長のぼやきいろいろ
大遅刻「いい夫婦の日」小ネタ
2024/12/01 22:35皆様、お久しぶりです。
せっかく書いたので、供養させてくだせぇ…。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱
「ごめんね織姫ちゃん、こんな日まで残業させちゃって。」
「大丈夫ですよ、店長!…でも、今日なにかありましたっけ?」
残業なんてよくあることなのに、今日はいつもの5倍は申し訳なさそうに頭を下げる店長。
その理由が分からず小首を傾げるあたしに、店長は売れ残りのパンを差し出して。
「ほら、今日は11月22日、『いい夫婦の日』でしょ?織姫ちゃん新婚さんだし、旦那さんも織姫ちゃんの帰りを待ってるかな…ってね。」
「いい夫婦の…日…?」
《いい夫婦の条件》
「いい夫婦の日、かぁ…。」
あたしは街灯がぽつぽつと灯る暗い道を歩きながら、1人呟く。
そもそも「いい夫婦」って、どんな夫婦なのかな。
あたしは、大好きな一護くんと結婚できて、毎日が本当に幸せ。
今日も、一護くんは1日在宅勤務で、あたしは普通に出勤だったから、「家事は任せとけ」って送り出してくれた。
昔から「当たり前だろ」って言って、さりげない優しさを沢山くれていたけど、結婚してますます優しくった気がする。
ずっと優しくて、カッコよくて、あたしを変わらず護ってくれる。
だから、一護くんは間違いなく「いい旦那様」なんだけど…それに対して、あたしは「いい奥様」になれているのかな。
一護くんは、あたしに不満や文句を言ったことなんて、結婚してから一度もなくて。
でも、優しい一護くんのこと…もしかしたらいろいろ我慢してることがあるかもしれない、よね?
もっと家事をしてほしい、とか。
もっと夕飯のおかずの量を増やしてほしい、とか。
もっとキレのあるツッコミしてほしい、とか。
鼻歌を歌うときは、もう少しボリュームを下げてほしい、とか。
「う〜〜〜っ…。」
考えれば考えるほど、あたしのダメダメポイントが浮かんできて、不安になってくる。
今夜だって、「いい夫婦の日」だなんて知らなかったから、夕飯のおかず、普通に唐揚げとお味噌汁を仕込んできちゃったよ。
せっかくなら、もっと豪華なメニューにすれば良かったなぁ…。
「…よし!決めた!」
「いい夫婦」であるためには、「いい旦那様」と「いい奥様」が揃わなくちゃダメだもんね。
「家に帰ったら、一護くんにあたしのダメなところ、思い切って聞いてみよう!」
聞くのはちょっと怖いけど、でも、あたしは一護くんとちゃんと釣り合う「いい奥様」でありたい。
今日は「いい夫婦の日」なんだもの、あたしは一護くんのためにも成長しなくちゃいけないんだ。
あたしは、小走りで一護くんの待つマンションへと向かった。
「ただいま、一護くん!」
「おう、おかえり。遅かったな、お疲れ様。」
玄関先であたしを迎えてくれた一護くんと、「ただいま」「おかえりなさい」のキスをして。
あたしは決心が揺らがないうちに、と彼の顔が離れてすぐに口を開いた。
「ねぇ、一護くん。今日はね、『いい夫婦の日』なんだって!」
「へ?…そういや、さっきニュースでそんなこと言ってたけど…どうしたんだ、帰ってきていきなり。」
不思議そうにあたしを見下ろす一護くん。
「だからね、今日は一護くんにも、普段あたしに言えないようなこと、ちゃんと言ってほしいの。」
「普段言えないようなこと…?」
「うん。あるでしょ?きっと。あたし、一護くんと『いい夫婦』になりたいの!だから!」
どんな文句も不満も、ちゃんと受け止めるよ。
そんな想いを、真っ直ぐ視線でぶつければ。
「あ〜…。」
一護くんは、少し困ったように視線を彷徨わせて。
ため息を一つついたあと、あたしを抱き上げ目の高さを合わせた。
「わかった。…今日は『いい夫婦の日』だからな。1回しか言わないから、ちゃんと聞けよ。」
「う…うん!」
「あのさ、織姫。」
「いつも言葉にはできねぇけど…愛してるよ。俺は、オマエと結婚できて、毎日幸せだ。」
「はにゃ〜…。ず、ズルいよぅ、一護くん…。」
「は?ズルいってなんだ!?『いい夫婦の日』ぐらい、ちゃんと『愛してる』って言ってほしいってことじゃなかったのか!?」
(一護と織姫は、間違いなく「いい夫婦」です!)
(2024.12.01)