3 昔話

 イザドラは、アールからの手紙を読んで、大変ショックを受けたようでした。怒りこそしませんでしたが、今にも泣きだしそうな顔でこうレイに言いました。
「そんなに家族が恋しかっただなんて……ああ、やっぱり血の繋がりに勝るものはないのかねえ。生まれたときから面倒もみているし、愛情もあると自負していたのだけれどね。もちろん、レイが然るべき年頃になったら話そうとは思っていたんだよ。悪かった。しかし、まさかペンバートン家の坊やまで巻き込むとは……」
 あの日からしばらくは、とてつもなく暗い気持ちで、食事もとる気がしませんでした。けれども、あまりにもイザドラが心配するので、なんだか悪い気がしたので、食事はとるようにしました。また、ノアも毎日元気づけてくれました。
「俺にはよくわかんない話だったけど、いいじゃないか。秘密の国の番人なんだぜ、俺たち! いや、確かにお前にとっては故郷だけどさ……まあ、なんだ、母さんは確実にどこかにいるわけだからさ、元気出せよ」
 不器用なうえに掴みどころのない言葉も、レイにとってはありがたいものでした。
 ――大きくなったら、お母様を探そう。それまでに、お母様に会えるだけの大人になろう。お母様が見つかったときに、イザドラを褒めてくれるように。そして、皆でお父様を目覚めさせる方法を考えればいいのよ――
 そう考えると、なんだか気力が湧いてきました。
 翌日からレイは、少しずつ自分の意見を言えるように努力しはじめました。
 やがて、レイは常に先生に褒められる、優等生になりました。イザドラも、とても喜んでくれました。
5/5ページ
いいね