6 プリンセス
さて、話は日曜日に戻ります。
バートがどこかへ帰ってしまった後、アリーとギルはバートと別れ、昼食をとりました。
そして、昼食を終えてギルが帰った後、アリーはなんとかして今日中にレイに会おうと画策しました。ギルの時計やバートの魔法のことを尋ねようと思ったのです。知っていれば話を聞きたいし、知らなければなおのこと、教えてあげなければいけません。
しかし、パパはそれを許してくれませんでした。
「今日は休日だ。そりゃあ、臨時で仕事をするときもあるが、基本的にはお休みなんだよ。確かに従業員はうちに住んでいるが、お前の相手をするためにいるんじゃない。話があるのなら、パパが伝えてあげよう」
パパに伝えても仕方がありません。子供の作り話だと思われて終わりです。手紙もだめでしょう。余計なことを書いていないか、開けてチェックされてしまうに違いありません。
そこでアリーは、両親のいない隙にレイを探そうと考えました。ところが、ふたりはずっとアリーの側にいて片時も離れませんでした。
そうこうしているうちに日曜日は終わってしまい、アリーはジョディおばさんの家に戻されてしまいました。
ジョディおばさんは、ママの妹です。年老いた母親、つまりアリーのおばあさんと一緒に住んでいます。そして、普段アリーはこのジョディおばさんの家で暮らしているのです。
「おばあちゃん、ただいま」
「おかえり、アリー」
おばさんの家に帰ると、リビングにはおばあさんとサンダース夫人がいました。サンダース夫人は遠い町に住んでいるのですが、昔からおばあさんと仲がよく、たまに家 に来ておばあさんとお茶を飲みながらお喋りをするのです。
「あら、アレックスじゃないの。久しぶりね」
「サンダースのおばさん、こんにちは。何度も言うけど、私はアレックスじゃなくてアリーです」
「まあ、そうだったかしら」
おばさんはそれだけ言うと、またおばあさんとのお喋りに戻ってしまいました。
「今日はレイチェルに会ってきたの。あの子もういい年なのに、友達も恋人もいないみたい。仕事ばっかりしているのよ。今でこそ仕事をする女の子も珍しくないけれど、あのままじゃ、やっぱりちょっと心配よね。写真を持っていって何人か紹介してみたけれど、突っ返されてしまったわ。本当に、何を考えているのかしら」
「おばさん、レイを知っているの?」
アリーは思わず夫人に駆け寄りました。
「ええ。知っているも何も、あの子をあの店に紹介したのは私よ。だから時々、様子を見にいくの」
「レイの帽子のことは知ってる?」
「帽子?」
夫人はお茶を飲みながら怪訝な顔をしました。
「知らないわね。帽子を被っているところなんて見たことないわ。あの子、服を作る仕事をしているくせに、自分の服には頓着しないそうよ」
その夜、アリーはどうやってレイに会おうか考えました。もちろん本当は、パパやジョディおばさんの言いつけを破りたくはありません。実際、今日、約束を破って森に行ったばかりに、アリーはバートの芝居によってパパを心配させ、酷い目にあわせてしまったのです。本人が覚えていなくても、アリーはちゃんと覚えています。
しかし、レイに帽子のことを言わずに放っておくことは、どうしてもできませんでした。だってこの帽子はレイがくれたのです。やはり、日曜日の出来事は報告しておくべきでしょう。
それに、早くしないと次の日曜日がやってきてしまいます。実をいうとアリーは、次の日曜日、レイにバートと会ってもらいたいと思っていました。そうすればレイもきっと、アリーが真剣に帽子のことを調べていることをわかってくれると考えたのです。
つまり、そのためには今週中にレイと会って話をしなければいけません。
「そうだわ。明日お店にこっそり行って、レイと話をしてこよう。パパに見つからなければ、言いつけを破ったことにはならないもの」
普通、こういうときはもう少しいろいろな方法を思案してみるものですが、アリーはそうではありませんでした。アリーはいつだって、迷わず行動するタイプなのです。確かに、これだけの事件の後にまたパパを裏切るのは気持ちのいいものではありません。しかし、善は急げともいいます。アリーは即決し、明日、レイのもとを訪ねてみることにしました。
バートがどこかへ帰ってしまった後、アリーとギルはバートと別れ、昼食をとりました。
そして、昼食を終えてギルが帰った後、アリーはなんとかして今日中にレイに会おうと画策しました。ギルの時計やバートの魔法のことを尋ねようと思ったのです。知っていれば話を聞きたいし、知らなければなおのこと、教えてあげなければいけません。
しかし、パパはそれを許してくれませんでした。
「今日は休日だ。そりゃあ、臨時で仕事をするときもあるが、基本的にはお休みなんだよ。確かに従業員はうちに住んでいるが、お前の相手をするためにいるんじゃない。話があるのなら、パパが伝えてあげよう」
パパに伝えても仕方がありません。子供の作り話だと思われて終わりです。手紙もだめでしょう。余計なことを書いていないか、開けてチェックされてしまうに違いありません。
そこでアリーは、両親のいない隙にレイを探そうと考えました。ところが、ふたりはずっとアリーの側にいて片時も離れませんでした。
そうこうしているうちに日曜日は終わってしまい、アリーはジョディおばさんの家に戻されてしまいました。
ジョディおばさんは、ママの妹です。年老いた母親、つまりアリーのおばあさんと一緒に住んでいます。そして、普段アリーはこのジョディおばさんの家で暮らしているのです。
「おばあちゃん、ただいま」
「おかえり、アリー」
おばさんの家に帰ると、リビングにはおばあさんとサンダース夫人がいました。サンダース夫人は遠い町に住んでいるのですが、昔からおばあさんと仲がよく、たまに
「あら、アレックスじゃないの。久しぶりね」
「サンダースのおばさん、こんにちは。何度も言うけど、私はアレックスじゃなくてアリーです」
「まあ、そうだったかしら」
おばさんはそれだけ言うと、またおばあさんとのお喋りに戻ってしまいました。
「今日はレイチェルに会ってきたの。あの子もういい年なのに、友達も恋人もいないみたい。仕事ばっかりしているのよ。今でこそ仕事をする女の子も珍しくないけれど、あのままじゃ、やっぱりちょっと心配よね。写真を持っていって何人か紹介してみたけれど、突っ返されてしまったわ。本当に、何を考えているのかしら」
「おばさん、レイを知っているの?」
アリーは思わず夫人に駆け寄りました。
「ええ。知っているも何も、あの子をあの店に紹介したのは私よ。だから時々、様子を見にいくの」
「レイの帽子のことは知ってる?」
「帽子?」
夫人はお茶を飲みながら怪訝な顔をしました。
「知らないわね。帽子を被っているところなんて見たことないわ。あの子、服を作る仕事をしているくせに、自分の服には頓着しないそうよ」
その夜、アリーはどうやってレイに会おうか考えました。もちろん本当は、パパやジョディおばさんの言いつけを破りたくはありません。実際、今日、約束を破って森に行ったばかりに、アリーはバートの芝居によってパパを心配させ、酷い目にあわせてしまったのです。本人が覚えていなくても、アリーはちゃんと覚えています。
しかし、レイに帽子のことを言わずに放っておくことは、どうしてもできませんでした。だってこの帽子はレイがくれたのです。やはり、日曜日の出来事は報告しておくべきでしょう。
それに、早くしないと次の日曜日がやってきてしまいます。実をいうとアリーは、次の日曜日、レイにバートと会ってもらいたいと思っていました。そうすればレイもきっと、アリーが真剣に帽子のことを調べていることをわかってくれると考えたのです。
つまり、そのためには今週中にレイと会って話をしなければいけません。
「そうだわ。明日お店にこっそり行って、レイと話をしてこよう。パパに見つからなければ、言いつけを破ったことにはならないもの」
普通、こういうときはもう少しいろいろな方法を思案してみるものですが、アリーはそうではありませんでした。アリーはいつだって、迷わず行動するタイプなのです。確かに、これだけの事件の後にまたパパを裏切るのは気持ちのいいものではありません。しかし、善は急げともいいます。アリーは即決し、明日、レイのもとを訪ねてみることにしました。