3 佑雲の祖母
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例の魔法円に戻ると、ルリはあかりたちを連れて円に飛びのり、杖に話しかけた。
「ありがとう、もういいよ。元いたところに帰して!」
すると、足元の円が一瞬きらめいた。
気がつくと、目の前には白い壁と、古風な日本庭園が見える窓があった。
足元には魔法円を描いた布が敷かれている。もといた場所に、帰ってきたのだ。
「ついたー!」
ルリは大声を張りあげ、そしてそのまま床に寝転がった。
「もうダメ。夢空間は疲れるって聞いていたけど、本当みたい」
あかりもくたくたに疲れきっていた。訊きたいことは山ほどあったが、それどころではなかった。
ずるずると床にへたりこむと、そのまま近くにあった壁に背中を預けた。
どれくらいそうしていただろうか。
コンコン、という音で、あかりははっと目をさました。どうやら、ドアがノックされていたらしい。そのままドアが開けられた。いたのはルリの父──望月さんだった。
「急にごめんね。夕食作ってて思いだしたんだけど、あかりちゃんにアレルギーはなかったよね?」
「は、はい。大丈夫です」
あかりは慌てて上半身を起こした。望月さんはふと、何かに気がついたようで、部屋をぐるりと見渡したあと、顔をゆがめてある一点を指した。
「あそこに誰かいるな。ルリ、いったい何を連れてきたんだ?」
その様子から、「誰か」があかりではないことは明白だった。あかりも不思議に思って望月さんと同じ方を見、そして、その場に凍りついた。
閉じていたはずのクローゼットは開けはなたれ、服やら玩具やら、学校で作ったのであろう工作などが床に散らばっていた。そして、こげ茶の髪をした子供がクマのぬいぐるみの足をぐいぐいと引っぱって遊んでいる。
ルリもはじめてそれに気づいたようで、しばし瞬きを繰りかえしていた。
「あの子、いつの間にあんなに散らかしたの!?」
「やっぱり、誰かいるんだな?」
「あれっ、パパはわかんない?」
「ああ。パパはおばあちゃんと違って、『そういうこと』には疎 いからな。だが、誰かがこの部屋にいることと、ぬいぐるみが宙に浮いていることだけはわかるよ。なんだか知らんが、とにかく、早いとこ帰ってもらえよ。じゃ、あと三十分したら居間においで」
望月さんはそれだけ言って、出ていってしまった。バタンと音をたててドアが閉まったあと、あかりは血相を変えて子供の側に駆けよった。色白な肌に、こげ茶の髪の子供は、こちらの気配に気づいて振りかえった。そして翡翠色のぱっちりとした瞳があかりの方をじっと見つめている。
「君、いつからいたの?」
「一緒にここに来てからずっとだよ。ふたりとも寝ちゃうから、ぼく、いろいろ見てたんだ。でもこれ、どうやって使うのかわかんなかった。これなあに?」
子供は──ストラは、クマのぬいぐるみを上下逆さに掲げて見せた。逆さにしているところからして、このぬいぐるみが何なのか本気で理解していないようだ。
「でも、君の姿は望月さんに見えていなかったわ。いったい君は何者なの?」
すると、ストラは嬉しそうに笑った。
「ぼく、ストラだよ!」
「それだけ?」
「うん、ストラだよ」
「はあ……」
話にならない。あかりは頭を抱えた。しかし、考えてもみれば、せいぜい三、四歳の子供に話せるのはこれが限界だろう。
「どうしよう……」
「どうして落ちこんでるの?」
ルリがやってきて、あかりの隣に座りこんだ。
「だって、知らない子を家に置いておけないでしょ。でも、こんな得体のしれない子じゃ、警察に連れていくこともできないじゃない」
「でもさ、ストラって虹の国から来たんでしょ?」
ルリはじっとストラを見つめた。
「その虹の国っていうところに連れていけばいいんじゃない?」
「ありがとう、もういいよ。元いたところに帰して!」
すると、足元の円が一瞬きらめいた。
気がつくと、目の前には白い壁と、古風な日本庭園が見える窓があった。
足元には魔法円を描いた布が敷かれている。もといた場所に、帰ってきたのだ。
「ついたー!」
ルリは大声を張りあげ、そしてそのまま床に寝転がった。
「もうダメ。夢空間は疲れるって聞いていたけど、本当みたい」
あかりもくたくたに疲れきっていた。訊きたいことは山ほどあったが、それどころではなかった。
ずるずると床にへたりこむと、そのまま近くにあった壁に背中を預けた。
どれくらいそうしていただろうか。
コンコン、という音で、あかりははっと目をさました。どうやら、ドアがノックされていたらしい。そのままドアが開けられた。いたのはルリの父──望月さんだった。
「急にごめんね。夕食作ってて思いだしたんだけど、あかりちゃんにアレルギーはなかったよね?」
「は、はい。大丈夫です」
あかりは慌てて上半身を起こした。望月さんはふと、何かに気がついたようで、部屋をぐるりと見渡したあと、顔をゆがめてある一点を指した。
「あそこに誰かいるな。ルリ、いったい何を連れてきたんだ?」
その様子から、「誰か」があかりではないことは明白だった。あかりも不思議に思って望月さんと同じ方を見、そして、その場に凍りついた。
閉じていたはずのクローゼットは開けはなたれ、服やら玩具やら、学校で作ったのであろう工作などが床に散らばっていた。そして、こげ茶の髪をした子供がクマのぬいぐるみの足をぐいぐいと引っぱって遊んでいる。
ルリもはじめてそれに気づいたようで、しばし瞬きを繰りかえしていた。
「あの子、いつの間にあんなに散らかしたの!?」
「やっぱり、誰かいるんだな?」
「あれっ、パパはわかんない?」
「ああ。パパはおばあちゃんと違って、『そういうこと』には
望月さんはそれだけ言って、出ていってしまった。バタンと音をたててドアが閉まったあと、あかりは血相を変えて子供の側に駆けよった。色白な肌に、こげ茶の髪の子供は、こちらの気配に気づいて振りかえった。そして翡翠色のぱっちりとした瞳があかりの方をじっと見つめている。
「君、いつからいたの?」
「一緒にここに来てからずっとだよ。ふたりとも寝ちゃうから、ぼく、いろいろ見てたんだ。でもこれ、どうやって使うのかわかんなかった。これなあに?」
子供は──ストラは、クマのぬいぐるみを上下逆さに掲げて見せた。逆さにしているところからして、このぬいぐるみが何なのか本気で理解していないようだ。
「でも、君の姿は望月さんに見えていなかったわ。いったい君は何者なの?」
すると、ストラは嬉しそうに笑った。
「ぼく、ストラだよ!」
「それだけ?」
「うん、ストラだよ」
「はあ……」
話にならない。あかりは頭を抱えた。しかし、考えてもみれば、せいぜい三、四歳の子供に話せるのはこれが限界だろう。
「どうしよう……」
「どうして落ちこんでるの?」
ルリがやってきて、あかりの隣に座りこんだ。
「だって、知らない子を家に置いておけないでしょ。でも、こんな得体のしれない子じゃ、警察に連れていくこともできないじゃない」
「でもさ、ストラって虹の国から来たんでしょ?」
ルリはじっとストラを見つめた。
「その虹の国っていうところに連れていけばいいんじゃない?」