21.ずるい男
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長々とお喋りをしたところで解散。家に着いた時には6時近くになっていた。ただいま、と呟きながら玄関を入ったところで、電話の子機を持った母がリビングから姿を現した。
「あ、奈々、たった今、宮田くんが電話くれたわよ」
「え?こんな時間に?」
「折り返しかけてみたら?」
「うん・・・」
そのまま子機を受け取り、2階に上がりながら電話をかける。
プルルル・・と2回鳴るか鳴らないかのうちに、相手が電話に出た。
「あ、宮田?私だけど・・・」
「ああ」
「今電話くれたみたいで・・・どうしたの?」
奈々が不思議そうに尋ねると、宮田はハッキリとした口調で
「今からジムに行くから手短に言う」
「あ、うん」
「試合が決まった」
突然の言葉に、しばし思考がついていかず一瞬固まってしまった。
プロテストを受けて合格したのは聞いていたが、試合が決まった・・・ということは、宮田がとうとう、プロボクサーとしてデビューすることが決まったということだ。
「そ、そう・・・おめでとう。って、あれ?おめでとう?なのかな?」
「さあ・・・なんだろうな」
宮田はふっと笑って、
「用件はそれだけだ」
「あ・・ありがとう・・それで、わざわざ電話くれたんだ?」
宮田は普段そもそも電話をかけてくることが少なく、またこんな時間に電話など滅多にしないので不思議そうに奈々が聞くと、宮田はしれっと
「一番最初に、言いたかったから」
と言い放った。
予想外の甘い言葉を喰らって、返答に困りしばし固まる。
「あ・・・あ、ありがとう。その・・・試合、見に行くね」
「ああ。じゃあな」
そういうと、ブツっとぶっきらぼうに電話が切れた。
ツーッツーッと無機質な電子音が耳に響く中、静かに電話を耳から離して電源を切る。
“一番最初に言いたかった”
「またそういう・・・ずるいこという・・・・」
昼間、友人と宮田のことを散々愚痴ったにもかかわらず、最後にはやはり宮田の術にかけられて、深い沼に落ちていく自分がいた。
「あ、奈々、たった今、宮田くんが電話くれたわよ」
「え?こんな時間に?」
「折り返しかけてみたら?」
「うん・・・」
そのまま子機を受け取り、2階に上がりながら電話をかける。
プルルル・・と2回鳴るか鳴らないかのうちに、相手が電話に出た。
「あ、宮田?私だけど・・・」
「ああ」
「今電話くれたみたいで・・・どうしたの?」
奈々が不思議そうに尋ねると、宮田はハッキリとした口調で
「今からジムに行くから手短に言う」
「あ、うん」
「試合が決まった」
突然の言葉に、しばし思考がついていかず一瞬固まってしまった。
プロテストを受けて合格したのは聞いていたが、試合が決まった・・・ということは、宮田がとうとう、プロボクサーとしてデビューすることが決まったということだ。
「そ、そう・・・おめでとう。って、あれ?おめでとう?なのかな?」
「さあ・・・なんだろうな」
宮田はふっと笑って、
「用件はそれだけだ」
「あ・・ありがとう・・それで、わざわざ電話くれたんだ?」
宮田は普段そもそも電話をかけてくることが少なく、またこんな時間に電話など滅多にしないので不思議そうに奈々が聞くと、宮田はしれっと
「一番最初に、言いたかったから」
と言い放った。
予想外の甘い言葉を喰らって、返答に困りしばし固まる。
「あ・・・あ、ありがとう。その・・・試合、見に行くね」
「ああ。じゃあな」
そういうと、ブツっとぶっきらぼうに電話が切れた。
ツーッツーッと無機質な電子音が耳に響く中、静かに電話を耳から離して電源を切る。
“一番最初に言いたかった”
「またそういう・・・ずるいこという・・・・」
昼間、友人と宮田のことを散々愚痴ったにもかかわらず、最後にはやはり宮田の術にかけられて、深い沼に落ちていく自分がいた。