2.クリスマス狂想曲 前編
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12月24日、日曜日。
宮田とは12時に駅前で待ち合わせることになっていた。
駅までの道のりは徒歩20分程度。
そろそろ出かけようとした矢先に、家のチャイムがピンポンと鳴った。
宅配でも来たのかと思い、いつも通り母に開門を任せて2階でのんびりしていたら、1階から「男の子が来てるわよぉ」と母の呼ぶ声が聞こえた。
「え!?な、なんで!?」
「どうぞどうぞ上がってぇ?」
「ちょ、ちょっと待ってお母さん!」
慌てて階段を駆け下りると、宮田がすでに靴を脱いで玄関先へ上がっているところだった。
「え。ちょ、ちょっとどうして・・」
「さささ入って入って!お茶入れるわねお茶!」
宮田の背中をグイグイと押すようにしてリビングへ招き入れる母。宮田もおそらく玄関先で止まる予定だったのだろうが、押しの強い母の勢いに負けてつい上がってしまったということなのだろう。
「やっぱり彼氏が出来てたと思ったのよねぇ〜」
「ちょ、ちょっとお母さん・・・」
「前に来てくれた子よね?宮田くん、だっけ?」
「どうも・・・」
「この子が迷惑かけてない?一人っ子だからちょっと甘やかしちゃったところもあってぇ」
「おかーさぁああん」
母親の勢いに押されて宮田はとうとうダイニングテーブルに腰掛けさせられた。幸いにして父親は電気屋に行ってくると言い残し、つい30分ほど前に出かけたばかりだった。
「さぁさ、今お茶を入れてくるわねぇ」
ウキウキとエプロンを締め直し、キッチンへと向かう母親を止めるように、宮田は少し大きめの声を出した。
「お茶はいいです」
「あ、そう?」
「挨拶に来ただけなんで」
そう言うと宮田は少し緊張を含んだ強張った顔をして、後ろで佇んでいた奈々の方を一瞥してから、母親に向かって頭を下げた。
「・・・宮田といいます。娘さんと付き合っています」
「まぁ〜」
「・・・よろしく・・・お願いします」
「まぁまぁまぁ〜」
宮田のシリアスな物言いに対する、母親の陽気な受け答え。普段なら呆れてしまう母親のリアクションだが、この時ばかりはシリアスなテンションを和らげてくれるいい中和剤になった。
「今日は・・・奈々さんを、お借りします」
「あらあら」
「夜までには返します」
「いいのよ、持って行ってもぉ〜なんちゃって!」
「ちょ、ちょっと・・・お母さん・・・」
宮田は決して愛想のいい男では無く、むしろ無愛想というか、時々は失礼なほど態度が悪い時も多々ある。
その男が、決して気持ちの良い好青年のような挨拶では無いが、頭を下げてハッキリと自分のことを述べている様子は、奈々にはかなり意外なものだった。
「宮田くん、お父さんが帰ってこないうちに、さっさと出かけてきなさい」
「・・・・はい」
「奈々、遅くなる時は電話してね」
「わかってるよぉ」
バタバタと支度をして、2人で家を出る。
いきなり竜巻に巻き込まれたかのような衝撃が、いまだに冷めないで頭の中が整理できない。
「・・・な、なんで家まで来たのよ」
「・・・」
宮田は答えずに前を向いたままだ。
これからデートだと言うのに、少し前を歩いたまま、歩調を合わせようともしない。
少し小走りなりながら、奈々が宮田を追いかけて言う。
「私・・・親に言ってなかったんだけど」
「・・・だからだよ」
「え?」
宮田がようやく口を開いたかと思うと、くるりと振り返り立ち止まった。
「クリスマスなんだろ、今日」
「・・・クリスマスイブね」
「・・・なんだか知らねぇけど」
ポケットに仕舞い込んでいた両手の片っぽを、ポンと奈々の頭の上に乗せて、
「心配させたくねぇだろ」
と呟くと、また両手をポケットに仕舞い込み、歩き出した。
奈々はその後ろ姿が妙に小さいのが気になり、ちょっと頭を傾げて考えてみると、すぐさま漫画みたいに頭から電球が飛び出してきて、ある考えが閃いた。
「ねぇ、ひょっとしてさ」
「なんだよ」
「お父さんに言われてきた?」
「なにを」
「挨拶しとけよ、みたいな」
宮田はふっと笑みを浮かべ、小さく小さく呟いた。
「・・・・さぁな」
宮田とは12時に駅前で待ち合わせることになっていた。
駅までの道のりは徒歩20分程度。
そろそろ出かけようとした矢先に、家のチャイムがピンポンと鳴った。
宅配でも来たのかと思い、いつも通り母に開門を任せて2階でのんびりしていたら、1階から「男の子が来てるわよぉ」と母の呼ぶ声が聞こえた。
「え!?な、なんで!?」
「どうぞどうぞ上がってぇ?」
「ちょ、ちょっと待ってお母さん!」
慌てて階段を駆け下りると、宮田がすでに靴を脱いで玄関先へ上がっているところだった。
「え。ちょ、ちょっとどうして・・」
「さささ入って入って!お茶入れるわねお茶!」
宮田の背中をグイグイと押すようにしてリビングへ招き入れる母。宮田もおそらく玄関先で止まる予定だったのだろうが、押しの強い母の勢いに負けてつい上がってしまったということなのだろう。
「やっぱり彼氏が出来てたと思ったのよねぇ〜」
「ちょ、ちょっとお母さん・・・」
「前に来てくれた子よね?宮田くん、だっけ?」
「どうも・・・」
「この子が迷惑かけてない?一人っ子だからちょっと甘やかしちゃったところもあってぇ」
「おかーさぁああん」
母親の勢いに押されて宮田はとうとうダイニングテーブルに腰掛けさせられた。幸いにして父親は電気屋に行ってくると言い残し、つい30分ほど前に出かけたばかりだった。
「さぁさ、今お茶を入れてくるわねぇ」
ウキウキとエプロンを締め直し、キッチンへと向かう母親を止めるように、宮田は少し大きめの声を出した。
「お茶はいいです」
「あ、そう?」
「挨拶に来ただけなんで」
そう言うと宮田は少し緊張を含んだ強張った顔をして、後ろで佇んでいた奈々の方を一瞥してから、母親に向かって頭を下げた。
「・・・宮田といいます。娘さんと付き合っています」
「まぁ〜」
「・・・よろしく・・・お願いします」
「まぁまぁまぁ〜」
宮田のシリアスな物言いに対する、母親の陽気な受け答え。普段なら呆れてしまう母親のリアクションだが、この時ばかりはシリアスなテンションを和らげてくれるいい中和剤になった。
「今日は・・・奈々さんを、お借りします」
「あらあら」
「夜までには返します」
「いいのよ、持って行ってもぉ〜なんちゃって!」
「ちょ、ちょっと・・・お母さん・・・」
宮田は決して愛想のいい男では無く、むしろ無愛想というか、時々は失礼なほど態度が悪い時も多々ある。
その男が、決して気持ちの良い好青年のような挨拶では無いが、頭を下げてハッキリと自分のことを述べている様子は、奈々にはかなり意外なものだった。
「宮田くん、お父さんが帰ってこないうちに、さっさと出かけてきなさい」
「・・・・はい」
「奈々、遅くなる時は電話してね」
「わかってるよぉ」
バタバタと支度をして、2人で家を出る。
いきなり竜巻に巻き込まれたかのような衝撃が、いまだに冷めないで頭の中が整理できない。
「・・・な、なんで家まで来たのよ」
「・・・」
宮田は答えずに前を向いたままだ。
これからデートだと言うのに、少し前を歩いたまま、歩調を合わせようともしない。
少し小走りなりながら、奈々が宮田を追いかけて言う。
「私・・・親に言ってなかったんだけど」
「・・・だからだよ」
「え?」
宮田がようやく口を開いたかと思うと、くるりと振り返り立ち止まった。
「クリスマスなんだろ、今日」
「・・・クリスマスイブね」
「・・・なんだか知らねぇけど」
ポケットに仕舞い込んでいた両手の片っぽを、ポンと奈々の頭の上に乗せて、
「心配させたくねぇだろ」
と呟くと、また両手をポケットに仕舞い込み、歩き出した。
奈々はその後ろ姿が妙に小さいのが気になり、ちょっと頭を傾げて考えてみると、すぐさま漫画みたいに頭から電球が飛び出してきて、ある考えが閃いた。
「ねぇ、ひょっとしてさ」
「なんだよ」
「お父さんに言われてきた?」
「なにを」
「挨拶しとけよ、みたいな」
宮田はふっと笑みを浮かべ、小さく小さく呟いた。
「・・・・さぁな」