17.最終日
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ーーーー宮田サイドーーーーー
夏休みの最終日。
朝っぱらからファミレスでノートを広げている、側から見ればカップルのような男女。
男は一心不乱にノートを写し、女はその様子をうっとり眺めながら時折男に話しかける。
「結局最終日までかかっちゃったねぇ」
「・・・お前が出し惜しみするからだろうが」
宮田はつまらなそうに呟きつつも、相手の顔を見ることはない。
一方の蓼丸は上機嫌で鼻歌なんかを口ずさんでいる。
蓼丸はこの夏休み、明らかに終わっているであろう課題も「まだ終わってないから今日は此処まで」などと言い、続きを見せることを口実に宮田を呼び出し続けていたのだった。
「最初に電話もらった時はビックリしたけど、でもうれしかったなぁ」
「気が散るからこれ以上喋るな」
「何その態度。ここに入ってる残りの宿題は要らないのかしら?」
宮田の冷たい態度にも億することなく、蓼丸はキラキラのスパンコールがついた派手なトートバッグをポンポンと叩いて、その中に入っているお宝 −宿題− の存在感を示した。
「宮田くん何か飲む?」
「・・・・水」
「はーい」
写すだけはあるが、それでも5分10分でできるような量ではない。
特に国語は漢字一つ書くのにも時間がかかる。今は朝の9時。宮田は10時からバイトが入っている。店には10分前に到着していれば問題なく、その店もこの喫茶店から100mも離れていないが、それでもあと1時間以内に全ての宿題を写し終えることができるかは、やってみなければわからなかった。
焦る宮田の前で、蓼丸は肘をついてじぃっと宮田を眺め、時折アイスコーヒーに口をつける、その繰り返しだった。宮田は視界にうっすら映るその行動が気に障るようで、
「暇なら手伝えよ」
「え〜。キスしてくれたらいいけど♪」
蓼丸がおちゃらけていうと、宮田はギロリと睨み付けて、
「最初に言ったはずだ、そういうコトならお断りだってな」
宮田はむしろへり下ってノートを貸していただく立場にあるにも関わらず、上から目線で「ノートを借りてやってる」と言わんばかりの態度だ。
「わ〜怖。まあ、私は宮田くんを独り占めできるなら、それでいいけど」
蓼丸は肩を竦めて、戯けたようにしてアイスコーヒーを啜った。
宮田は蓼丸が本気で自分を口説きに来ていないのはわかっていた。
何やら珍しい、自分になびかない男を揺さぶってみようというような、遊び心で近づいているのだと。それならその遊び心をこちらも最大限に利用してやろうというだけのこと。
ーそれにしても、こんな無愛想な男の何が面白いんだかー