16.爆発
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「わ、こんな時間になっちゃった。宿題やんなくていいの?」
ここまで来て、ようやく宮田が今日家に来た理由を思い出した。
一番先に済ませるべきことを一番後回しにしてしまった。
しかも夏休みはもう後数日しかない。間に合うのだろうか?と少し焦りすら感じたときだった。
宮田は少し黙っていたが、やがてボソリとこう答えた。
「宿題は・・・やってある」
「え・・・ええ!?嘘!?」
宮田が自分で宿題をやるなど付き合い始めてから初めてのことである。
それゆえ、宮田の発言はどうしても信じがたいものがあった。
「それにお前は特進クラスでオレは普通課・・・内容違うだろ」
「そうだけどさぁ・・・自分でやったの?本当に?」
訝しげな奈々の目線と声色に、宮田は観念したように声を絞り出した。
「・・・別のヤツに写させてもらった」
“別のヤツ”
予想外の答えにしばし頭がフリーズしたらしい。
そして再起動するまでのちょっとの間に宮田はこの話題を終わらせたいらしい、話をまとめて切り上げようとした。
「だから宿題のことは気にしなくていい。帰る時間まであと少し時間あr・・」
「べ、別のヤツって誰!?」
まとめきらない間に再起動が完了し、一番きかれたくない質問が飛んできた。
「誰だっていいだろ」
「よ、よくないよ!気になるじゃない」
目の前の相手の顔がどんどん曇っていく。
嫌な流れになりそうなのを避けたいが、避ければ避けるほど怪しい気もする。
ここは平然を装いながら様子を見ていくしかない。
「・・・同じクラスのヤツだよ」
「だから誰なの?宮田、友達全然いないじゃん!」
「・・・」
確かに宮田はクラスメートに宿題を見せてもらうようなコミュニケーション能力が皆無だ。
クラスメートと挨拶や短い会話をすることはあるが、誰かと友達になって群れて行動するところは見たことがなかった。
それゆえ、ノートを見せてあげた“別のヤツ”で思い当たるのは、1人しかいなかった。
「同じクラスの・・・女子・・・?」
「・・・そうだけど」
「蓼丸さん?」
「そうだけど。何で知ってるんだよ」
嫌な予感が的中した。
彼女は以前、宮田が長期欠席をした際に電話をかけたり、奈々にも嫌味を言ってきたりしたことがある。宮田への下心をまるで隠さないのは見た目の麗しさからくる自信ゆえとはわかっていたが、実際に目の当たりにすると気分が良いものではない。
「夏休みに・・・彼女と会ってたんだ?」
宮田は返事をしない。
YESであることは明白なので、続けて別の質問をぶつけてみる。
残暑が厳しいはずなのに、指先はどんどん冷えていって感覚が消えてきた。
「結構頻繁に・・・会ってたの?」