2.クリスマス狂想曲 前編
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クリスマスだの初詣だの、カップルらしいイベントが目白押しの年末年始。期待しなかったといえば嘘になる。
あれこれ膨らんだ妄想とは厄介で、途中からそれが期待になり、実現しなければならない使命になり、そうしなければ全ての幸せがなかったかのようにすら思えてしまうもの。
「ねぇ、クリスマスどうする?」
極めてカップルらしい話題提起をしたつもりだった。
そして帰ってきた答えは、その“使命”を粉々に打ち砕くような計画だった。
「別になにもねぇけど。なんで?」
“なんで”と来た。
特に理由がないといえばないし、あるといえばある。
これはもう“察してください”と言うしかない案件にもかかわらず、宮田はすました顔を崩さずにいる。
「・・・一緒に・・過ごせたらと・・」
つまらなそうにボソリと呟く奈々が目に入っているのかどうか知らないが、宮田はしばし言葉に詰まって、それから
「まぁ、別にいいけど」
返事になんとなく温度差を感じながらも、きっとこのボクシングバカにクリスマスなんて文字の入った辞書は無いんだろうと勝手に理解する。
「じゃあ、また電話するね」
「ああ、じゃあな」
帰宅した宮田はすぐさま着替えて道具一式を手に取り、ジムへ向かった。まだ5時前だと言うのに、あたりはもうずいぶん暗くなって、そういえばどこからか陽気な音楽が聞こえてきたりもしている。
「クリスマス・・・・か」
いつものように挨拶をしながらジムの扉を開けると、リングの上で何やら3バカトリオがギャーギャーと騒いでいるのが目に入った。
「抜け駆けは許さんぞキサマ!」
「オレだって青春したいんだよ!」
「青木に春を与えてやってくれよぉ〜」
ドタバタと騒がしく走り回る。
会長が不在だといつもこの調子だ。
宮田の父も本業を終えてからジムへ来るため、この時間は八木マネージャー1人しかいないことも多い。つまり、無法地帯と化す時間帯だ。
「お!宮田ァ。お前も裏切るんじゃねぇだろうな?」
無視してさっさと通り過ぎようとしたにもかかわらず、目敏く声をかけてきた。相当ご機嫌が斜めらしい。
「そりゃぁ鷹村サン・・・アイツはだって・・ほら・・」
木村が面白くなさそうに呟くと、鷹村は思い出したようにポンと拳を手に打って、嬉々として語り出した。
「おいおいおい、妹チャンがヤラれちまうぞぉ木村ァ」
「や、止めろ馬鹿野郎!そう言うことを言うな!」
「それとももうヤラれちまってるかもなぁ?おいどうなんだ宮田ァ!」
付き合ってまだ1ヶ月そこそこでそんなことするわけねぇだろ、と思いつつ、それを堂々と宣言するわけにもいかず。
ここは無視を決め込むのが一番賢い選択だ。
ギャーギャー声を通り抜けてロッカーへ。
ふぅ、と小さなため息をつく。
あんまり興味がなくて忘れていたが、そういえばクリスマスというのは恋人同士が一緒に過ごすと思われている日だったと、宮田はようやく思い出した。
そして、昼間聞かれたあの質問と、自分の間抜けな回答にようやく気づく。
“クリスマスどうする?”
”なんで?”
“一緒に過ごせたらと・・・”
“別にいいけど”
「・・・・さすがに・・マズかったかもな」
ふと財布に手を伸ばし、残高を確認する。
最近、シューズを新調したばかりで実に寂しい中身になっていた。
「・・・・めんどくせぇことになったぜ」
宮田は頭を抱えて、暫しうなだれた。
あれこれ膨らんだ妄想とは厄介で、途中からそれが期待になり、実現しなければならない使命になり、そうしなければ全ての幸せがなかったかのようにすら思えてしまうもの。
「ねぇ、クリスマスどうする?」
極めてカップルらしい話題提起をしたつもりだった。
そして帰ってきた答えは、その“使命”を粉々に打ち砕くような計画だった。
「別になにもねぇけど。なんで?」
“なんで”と来た。
特に理由がないといえばないし、あるといえばある。
これはもう“察してください”と言うしかない案件にもかかわらず、宮田はすました顔を崩さずにいる。
「・・・一緒に・・過ごせたらと・・」
つまらなそうにボソリと呟く奈々が目に入っているのかどうか知らないが、宮田はしばし言葉に詰まって、それから
「まぁ、別にいいけど」
返事になんとなく温度差を感じながらも、きっとこのボクシングバカにクリスマスなんて文字の入った辞書は無いんだろうと勝手に理解する。
「じゃあ、また電話するね」
「ああ、じゃあな」
帰宅した宮田はすぐさま着替えて道具一式を手に取り、ジムへ向かった。まだ5時前だと言うのに、あたりはもうずいぶん暗くなって、そういえばどこからか陽気な音楽が聞こえてきたりもしている。
「クリスマス・・・・か」
いつものように挨拶をしながらジムの扉を開けると、リングの上で何やら3バカトリオがギャーギャーと騒いでいるのが目に入った。
「抜け駆けは許さんぞキサマ!」
「オレだって青春したいんだよ!」
「青木に春を与えてやってくれよぉ〜」
ドタバタと騒がしく走り回る。
会長が不在だといつもこの調子だ。
宮田の父も本業を終えてからジムへ来るため、この時間は八木マネージャー1人しかいないことも多い。つまり、無法地帯と化す時間帯だ。
「お!宮田ァ。お前も裏切るんじゃねぇだろうな?」
無視してさっさと通り過ぎようとしたにもかかわらず、目敏く声をかけてきた。相当ご機嫌が斜めらしい。
「そりゃぁ鷹村サン・・・アイツはだって・・ほら・・」
木村が面白くなさそうに呟くと、鷹村は思い出したようにポンと拳を手に打って、嬉々として語り出した。
「おいおいおい、妹チャンがヤラれちまうぞぉ木村ァ」
「や、止めろ馬鹿野郎!そう言うことを言うな!」
「それとももうヤラれちまってるかもなぁ?おいどうなんだ宮田ァ!」
付き合ってまだ1ヶ月そこそこでそんなことするわけねぇだろ、と思いつつ、それを堂々と宣言するわけにもいかず。
ここは無視を決め込むのが一番賢い選択だ。
ギャーギャー声を通り抜けてロッカーへ。
ふぅ、と小さなため息をつく。
あんまり興味がなくて忘れていたが、そういえばクリスマスというのは恋人同士が一緒に過ごすと思われている日だったと、宮田はようやく思い出した。
そして、昼間聞かれたあの質問と、自分の間抜けな回答にようやく気づく。
“クリスマスどうする?”
”なんで?”
“一緒に過ごせたらと・・・”
“別にいいけど”
「・・・・さすがに・・マズかったかもな」
ふと財布に手を伸ばし、残高を確認する。
最近、シューズを新調したばかりで実に寂しい中身になっていた。
「・・・・めんどくせぇことになったぜ」
宮田は頭を抱えて、暫しうなだれた。