13.伝聞系の夏
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毎年恒例、鴨川ジム主催の花火大会。
ジム主催と言っても、会長も八木マネージャーもノータッチ。
選手と練習生、その友人たちが勝手に集って騒ぐだけのイベントだ。
今年は宮田がいなくなった穴を、その原因となった人物・幕之内一歩が埋めていた。
噂には聞いていたが、実際に会うのは初めて。
「あ、木村さん!こんばんは」
「よぉ一歩ォ。随分買い込んだな〜」
「はい!この巨大花火なんて5軒も回ってようやく見つけたんです!・・って」
鼻息荒く花火を紹介する途中で、木村の隣からひょいと顔を出した奈々に気づいたらしい、一歩はふと手を止めて
「あ、こ、こんばんは!その・・・き、木村さんの、か、彼女ですか?」
「バーカ。オレがそんなロリコンに見えるかよ」
「悪かったわねお兄様」
奈々が後ろから腕をつねると、木村は「痛ぇ!」と叫んで体をよじらせた。
「あ・・い、妹さんですか?」
「まぁ・・そんなもんだ」
「そんなもんです」
木村のことだから、続けて「宮田の彼女なんだよぉ」とか紹介するのかと思ったが、どうやら奈々の話題はこれで終わりらしい。一歩の中で奈々は単なる木村の妹としてしか認識されなかったようだ。
「よーぉ、妹ちゃん!」
しばらくしてから現れた鷹村が、至極ご機嫌で鼻歌を歌いながら奈々に近づいてきた。
「久しぶりです、鷹村さん」
「うむ。最近どうだね?」
「え?」
「宮田とズッコンバッコンしてるんだろ?え?どうだアイツのチンポは?」
ああこの人は相変わらずだなと思い、ついつい可笑しくて吹き出してしまう。
「ぬ。どうした」
「だ、だって・・・鷹村さん相変わらずだから」
「アイツは下半身の鍛え方が足りねぇからな。妹ちゃんもさぞかし不満だろう?」
「いや・・・」
ちょっと控えてほしいくらい、と言いかけたところで止めた。
話が変な風に改変されて広まるのが目に見えていたからだ。
「いや?」
「いや、その・・・最近忙しくて、全然会ってないから」
「ほぅ。それは体が夜泣きしてたまらんだろう。ハァ・・・誰でもいいから抱いてぇ〜ってな!」
「鷹村さん、妹にセクハラすんの止めてくれねぇかな!?」
変な会話を聞きつけた木村が花火を鷹村に向けて威嚇しながら割り込んできた。
「うおぉ!て、てめえ木村のくせに何しやがる!」
「鷹村さん、まだ16歳のガキに変なこと教えないでくださいよ」
「ヤることヤってる猿のどこがガキだ、宮田におっぱい揉まれてアンアンしてんだろうがぁ!」
「生々しいこと言うなっ!!」
相変わらずの騒々しさと、相変わらずの笑い声。
去年も楽しかったけど、何か心から楽しめないモヤモヤがあって。
今年も楽しいけど、やっぱり心から楽しめないモヤモヤが残ったままだ。
宮田もここにいれば、心から笑えたのかなぁ。