11.何もない
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ある日の放課後。
「高杉さんって、宮田くんと付き合ってるんだよね?」
帰宅しようと歩いていると、廊下ですれ違った、話したこともない女生徒から急に声をかけられた。奈々が戸惑いながら目を大きくすると、
「宮田くん、ずっと休んでるんだけど、どうしたの?」
「え?そ、そうなの?」
「・・・知らないの?彼女なのに?」
宮田は普通に毎日学校に来ているものだと思っていたので、突然の出来事に奈々は困惑して、やや挑戦的な物言いをしてくる相手に対しても何も答えることができないでいた。
この人は一体誰だと思って名札を見ると「蓼丸」と書いてあって全く読めない。
珍しい苗字だなぁと思いながら、会話を続ける。
「ずっと・・・休んでるの?」
「もう三日くらいになるんだけど。先生に聞いても教えてくれないし」
「・・・へ、へぇ」
「“彼女”なら知っているかと思ったんだけどね」
相手の態度で何となくわかる。この子は宮田のことが好きなのだろう、と。
わざわざ“彼女”に近づいてきて、この態度。
見た目の良さといい、きっと自分に自信がある人なんだろうなと察する。
「じゃあ・・・電話でもしてみるよ」
「かけてみたけど全然出ないわよ」
「・・・そう」
クラス名簿には全員の住所と電話が掲載されている。
同じクラスらしいこの子が宮田の電話番号を知っていても、電話をかけても、全く不思議じゃない。
「まぁいいわ、知らないなら」
そう言うと、少しだけ勝ち誇ったような笑みを浮かべて女生徒は去っていった。
「な、な、なにあれ・・・腹立つぅうう」
フーコが後ろ姿を睨みつけながら言う側で、奈々は苦笑いをするしかなかった。
「ははは・・・まぁ、行こうよ」
「マル、あたし中学一緒でさあ。美人だけど性格悪くて有名だったんだから」
フーコが腕組みしながら呆れたように言う。
「ま、まる?」
「そう、タデマルって読むのあの苗字。でもタデをすぐに忘れちゃってみんな“何とか丸”って武士の子供みたいに呼び始めてさぁ・・・」
どうやら彼女は中学時代、結構有名な生徒だったらしい。いくつかの彼女にまつわる悪いエピソードを聞きながら、奈々は乾いた笑いをしつつ、気にしない風でその場を立ち去ろうした。すると、
「奈々さ・・本当に知らないの?」
「え?」
「宮田くんの欠席理由」
フーコが顔を覗き込んで聞くので、防衛本能でも働いたのかとっさに目を逸らしぎみに頭を掻きながら、奈々は答えた。
「知らない・・・って言うか普通に学校来てると思ってた」
フーコがみるみる訝しげな顔つきに変わって、ガシッと両肩を掴んで続ける。
「ま、毎日電話とかしてるでしょ?」
「え・・・全然・・」
「えええええ・・・そ、それって付き合ってるって言えるの!?」
一瞬だけ石膏のように固まった奈々の顔をフーコは見逃さなかったらしい。
マズいことを口走ってしまった、とフーコの顔に焦りの色が見えた瞬間、奈々は慌てて作り笑いをして、
「アイツは今ボクシングに熱中してるからさ・・・」
「奈々は・・それでいいの?」
「うーん。まぁ仕方ないよね、ははは」
「高杉さんって、宮田くんと付き合ってるんだよね?」
帰宅しようと歩いていると、廊下ですれ違った、話したこともない女生徒から急に声をかけられた。奈々が戸惑いながら目を大きくすると、
「宮田くん、ずっと休んでるんだけど、どうしたの?」
「え?そ、そうなの?」
「・・・知らないの?彼女なのに?」
宮田は普通に毎日学校に来ているものだと思っていたので、突然の出来事に奈々は困惑して、やや挑戦的な物言いをしてくる相手に対しても何も答えることができないでいた。
この人は一体誰だと思って名札を見ると「蓼丸」と書いてあって全く読めない。
珍しい苗字だなぁと思いながら、会話を続ける。
「ずっと・・・休んでるの?」
「もう三日くらいになるんだけど。先生に聞いても教えてくれないし」
「・・・へ、へぇ」
「“彼女”なら知っているかと思ったんだけどね」
相手の態度で何となくわかる。この子は宮田のことが好きなのだろう、と。
わざわざ“彼女”に近づいてきて、この態度。
見た目の良さといい、きっと自分に自信がある人なんだろうなと察する。
「じゃあ・・・電話でもしてみるよ」
「かけてみたけど全然出ないわよ」
「・・・そう」
クラス名簿には全員の住所と電話が掲載されている。
同じクラスらしいこの子が宮田の電話番号を知っていても、電話をかけても、全く不思議じゃない。
「まぁいいわ、知らないなら」
そう言うと、少しだけ勝ち誇ったような笑みを浮かべて女生徒は去っていった。
「な、な、なにあれ・・・腹立つぅうう」
フーコが後ろ姿を睨みつけながら言う側で、奈々は苦笑いをするしかなかった。
「ははは・・・まぁ、行こうよ」
「マル、あたし中学一緒でさあ。美人だけど性格悪くて有名だったんだから」
フーコが腕組みしながら呆れたように言う。
「ま、まる?」
「そう、タデマルって読むのあの苗字。でもタデをすぐに忘れちゃってみんな“何とか丸”って武士の子供みたいに呼び始めてさぁ・・・」
どうやら彼女は中学時代、結構有名な生徒だったらしい。いくつかの彼女にまつわる悪いエピソードを聞きながら、奈々は乾いた笑いをしつつ、気にしない風でその場を立ち去ろうした。すると、
「奈々さ・・本当に知らないの?」
「え?」
「宮田くんの欠席理由」
フーコが顔を覗き込んで聞くので、防衛本能でも働いたのかとっさに目を逸らしぎみに頭を掻きながら、奈々は答えた。
「知らない・・・って言うか普通に学校来てると思ってた」
フーコがみるみる訝しげな顔つきに変わって、ガシッと両肩を掴んで続ける。
「ま、毎日電話とかしてるでしょ?」
「え・・・全然・・」
「えええええ・・・そ、それって付き合ってるって言えるの!?」
一瞬だけ石膏のように固まった奈々の顔をフーコは見逃さなかったらしい。
マズいことを口走ってしまった、とフーコの顔に焦りの色が見えた瞬間、奈々は慌てて作り笑いをして、
「アイツは今ボクシングに熱中してるからさ・・・」
「奈々は・・それでいいの?」
「うーん。まぁ仕方ないよね、ははは」