10.させねぇよ
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手を引かれて逃げてきたのは近所のコンビニ。
ここなら明るく、人もいて、ひとまずは安全だ。
「・・・ったく・・・バカじゃねぇの」
宮田がコンビニの壁にもたれて息を吐く。
ちょっと走ったくらいでは息を切らさない男だ。
おそらく公園にくる前から、ずいぶん走ってきたのだろう。
「・・・なんで・・・来たの」
啖呵切って別れた挙句不良に絡まれて助けられたバツの悪さから素直に謝れない奈々は、やや下を向いて目線を合わせぬまま、憎まれ口を叩いた。
「・・・帰るぞ」
「やだ」
手を引いて歩こうとする宮田を振り解いて、奈々は背を向ける。
もうあたりはすっかり暗くなっていて、こんな泣きっ面の女子を1人で置いて帰るわけにも行かない。自分が待つのを知っていてワガママを言う。本当に、“兄貴”に甘やかされて育ったもんだ、と宮田はますます苦々しく思った。
「もう一度しか言わねぇからな」
「・・・・・」
「帰るぞ」
奈々は俯きながらゆっくり振り返り、手を差し出した。
宮田はその手を取り、ゆっくり歩き出す。
「こんな・・・泣きながらなんて・・・帰れないよ」
繋がれていない自由な方の手で涙を拭いながら奈々が言うと、宮田は
「泣き止むまで帰らなきゃいいだろ」
と言って、歩き続けた。
_____________
引っ張るように少し強めの力で手を握りながら前を歩く宮田。
静かな住宅街には、2人の足音と、奈々が鼻を啜る音ばかりが響いている。
「・・・ごめん」
奈々が呟いたものの、宮田からの返事はない。
「・・・なんか・・・言ってよぉ」
声を振り絞って言うと、宮田はピタリと歩みを止めて、奈々の方を振り返った。
「頼むから・・・危ない真似をするな」
「・・・・ごめんなさい」
奈々が素直に頷いたのを見て、宮田は安心したらしい。
再び手を取り、また住宅街を歩き始めた。
歩きながらいつもの調子を取り戻した宮田は、呆れた様子で呟く。
「ったく、バカにつける薬があったら欲しいくらいだぜ」
「う、うるさい!元はと言えば誰のせいで・・・」
そうして、いつもの勝気な様子で言い返してきた奈々を確認すると、宮田は微かに微笑んだ。
ざくざくと、スニーカーの音が響く中で、宮田がボソリと呟く。
「後悔なんて・・・するわけないだろ」
そして、少しずつ歩調を早め、少し前を歩くような形をとりながら、さらに続けた。
「お前にもさせねぇよ」
たくましい背中越しに見えた三日月。
このまま2人だけの世界に行けたらいいのに、なんてロマンチックなことを思い浮かべながら歩いているうちに、気がつけば涙は乾いていた。
ここなら明るく、人もいて、ひとまずは安全だ。
「・・・ったく・・・バカじゃねぇの」
宮田がコンビニの壁にもたれて息を吐く。
ちょっと走ったくらいでは息を切らさない男だ。
おそらく公園にくる前から、ずいぶん走ってきたのだろう。
「・・・なんで・・・来たの」
啖呵切って別れた挙句不良に絡まれて助けられたバツの悪さから素直に謝れない奈々は、やや下を向いて目線を合わせぬまま、憎まれ口を叩いた。
「・・・帰るぞ」
「やだ」
手を引いて歩こうとする宮田を振り解いて、奈々は背を向ける。
もうあたりはすっかり暗くなっていて、こんな泣きっ面の女子を1人で置いて帰るわけにも行かない。自分が待つのを知っていてワガママを言う。本当に、“兄貴”に甘やかされて育ったもんだ、と宮田はますます苦々しく思った。
「もう一度しか言わねぇからな」
「・・・・・」
「帰るぞ」
奈々は俯きながらゆっくり振り返り、手を差し出した。
宮田はその手を取り、ゆっくり歩き出す。
「こんな・・・泣きながらなんて・・・帰れないよ」
繋がれていない自由な方の手で涙を拭いながら奈々が言うと、宮田は
「泣き止むまで帰らなきゃいいだろ」
と言って、歩き続けた。
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引っ張るように少し強めの力で手を握りながら前を歩く宮田。
静かな住宅街には、2人の足音と、奈々が鼻を啜る音ばかりが響いている。
「・・・ごめん」
奈々が呟いたものの、宮田からの返事はない。
「・・・なんか・・・言ってよぉ」
声を振り絞って言うと、宮田はピタリと歩みを止めて、奈々の方を振り返った。
「頼むから・・・危ない真似をするな」
「・・・・ごめんなさい」
奈々が素直に頷いたのを見て、宮田は安心したらしい。
再び手を取り、また住宅街を歩き始めた。
歩きながらいつもの調子を取り戻した宮田は、呆れた様子で呟く。
「ったく、バカにつける薬があったら欲しいくらいだぜ」
「う、うるさい!元はと言えば誰のせいで・・・」
そうして、いつもの勝気な様子で言い返してきた奈々を確認すると、宮田は微かに微笑んだ。
ざくざくと、スニーカーの音が響く中で、宮田がボソリと呟く。
「後悔なんて・・・するわけないだろ」
そして、少しずつ歩調を早め、少し前を歩くような形をとりながら、さらに続けた。
「お前にもさせねぇよ」
たくましい背中越しに見えた三日月。
このまま2人だけの世界に行けたらいいのに、なんてロマンチックなことを思い浮かべながら歩いているうちに、気がつけば涙は乾いていた。