1.宮田ん家
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「・・・何もねぇなと思ったろ」
「う、うん」
「前に鷹村さんにも言われたよ」
「あ、来たことあるんだ?」
「無理やり押しかけてきたんだよ」
ベッドに腰掛けた宮田は、ドアの前で突っ立ったままの奈々を見て、自分の隣をポンポンと叩いた。
緊張のあまり一瞬たじろいだものの、言われるがままに隣に腰掛ける。
「お・・お父さんにご挨拶・・しなきゃ」
「出かけてるよ」
「えっ」
「日曜は結構、あちこち出てるんだよ親父は」
「そ・・・そう」
話すたびにベッドがギシギシと軋み、奈々はなんだか落ち着かない様子で、宮田の顔すらまともに見られないでいた。
その上に“彼氏と家で2人きり”というシチュエーションは、一層緊張感を煽る。
「ほ・・・本棚」
「ん?」
「ボクシングの雑誌・・たくさん・・あるね」
「あぁ。まあ毎月買うから」
本棚をよく見てみようと奈々が立ち上がろうとした時だった。
ぐっと腕を引っ張られ、浮かせた腰がもう一度沈む。
驚いて宮田を見てみると、なんだか面白くなさそうな顔を浮かべている。
「み、みや・・・」
「何をそんなに緊張してんだよ」
「だ、だって・・・」
「なんだよ」
気恥ずかしさでいっぱいなのに、まっすぐこちらを見つめてくる宮田から目が離せない。
パニックのあまり、自分でも何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
「わ、私・・・初めてなんだもん!」
奈々は“初めて男子の家に来た”というつもりだったらしいが、宮田は盛大な勘違いをしたらしい。
「いきなりそんなことするかよ、バカ」
パニック中の奈々の頭には、こう切り返した宮田の一言すら入ってこない。
相変わらず慌てふためいたままで、さらに続ける。
「・・・こんな・・・初めてなのに・・・落ち着いてられるわけないじゃん」
先ほどから繰り返される“初めて”というキーワードは、思春期の男の子をほどよく刺激するようだ。
“いきなりそんなことするかよ”と言ったばかりではあるが、そういう衝動を抑えられなくなってきた。
「じゃあ・・・オレにどうして欲しいんだよ」
冷静を装って宮田が聞くと、奈々は胸のあたりをさすって呼吸を落ち着かせながら、小さな声で呟いた。
「・・・しばらく、ぎゅっとしてて」
奈々は軽いハグを求めたつもりだったが、宮田はどういうわけかこれをオッケーサインと勘違いしたらしい。
さすが、思春期の高校生男子ともなれば、宮田一郎ほどのクレバーボーイでも、このような勘違いを起こすようだ。