自宅近くの公園。
かつて宮田に告白された場所。


涙でグチャグチャの顔のままは帰れない。
母親にハイテンションで問い詰められるのも困るし、父親に見られようものなら、相手の家に怒鳴り込んだりするかもしれない。
一人娘の親はとにかく過保護。


「平気な顔、しなきゃ」


パンパン、と自分の頬を叩く。
夕暮れはだんだん消え失せて、澄んだ青が広がり始めた頃だっった。





「あ〜れ〜？お姉さん、一人？」


アロハ柄とでもいえばいいのか、独特な柄のシャツに身を包み、季節外れのサングラスをかけた、何やら柄の悪そうな男が３人ほど近づいてきた。

反射的に目を擦り、涙の跡を消そうとすると、３人のうちの１人が目敏くそれを指摘する。


「あれれれぇ？泣いてたのぉ？」
「どうしたのぉ〜失恋しちゃったぁ？」
「お兄さんたちが慰めてあげようかぁ？」


ヤンキーは青木村で見慣れていて全く怖くないのだが、それにしても面倒なことになったと奈々は身を一瞬硬らせた。


「あの・・どうも・・・もう・・大丈夫なんで」


目を合わせないようにさっさと逃げようとすると、３人のうちの１人からガッと腕を掴まれてしまった。


「まぁまぁ〜ツレないじゃないのぉ」
「お姉さん、こんな夜に1人でいたら危ないよぉ？」
「狼が出ちゃうかも〜？」


気がつくと３人に周りを囲まれ、逃げる隙間を失いかけていた。まずいことになった、と思いながらも、こう言う時は意外と大声も出ないほど身が竦んでしまう。というのも、ヤンキーは見慣れているが、囲まれることには慣れていないからだ。


「ちょっと・・・やめ・・」
「お兄さんが温めてあげるよぉ」
「やめてくださいって・・」

体を掴んでくる腕が１本、２本、３本と増えてきた時だった。


「止めろって言ってんだろ」


ヤンキーの後方から３人を静止する声が放たれると、３人は一斉に声の主を振り返り、威嚇を始めた。


「あぁ！？誰だテメェ」
「すっこんでろ童貞が！」
「その可愛い顔、ボコボコにされたくないなr・・・ぐはぁ！」


３人目が言い終わらないうちに、宮田の拳が相手の腹に減り込んだ。


「え！？お、おい！マー坊！しっかりしろ！」
「て・・テメェ！ぐ、ぐわぁ！」


続いて２人目の腹にも拳が入る。
腹を押さえながら、くの字になって野田打ち回る二人。
３人目が背後から襲いかかるも、これを軽々と交わしてさらにボディへ拳を放つと、３つ目の“くの字”が出来上がった。



「早く来い！」


宮田に手をつかまれ、一目散でその場を離れる。
掴まれた手は少し汗ばんでいて、走って駆けつけてきたのがわかるくらい、体から蒸気を発していた。