9.重ねるな
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そう言われて、奈々は返す言葉がなかった。
確かに、逐一報告する義務なんてない。
だがそもそもこれは“報告”ではなく、カップルの“日常会話”なのではないか。
何だか宮田とは論点がズレているのではないか、と思った矢先のことだった。
「・・・アイツは言うんだろ、そういうの」
「え?」
「ジムで何があったとか、どうしたとか」
宮田は木村のことを言っているらしい。
そして奈々は、宮田の言わんとしていることに気がつき、ハッと目を見開いた。
だが、何を言うべきか分からない。
「オレに・・・」
遠くを見ていた宮田がようやく顔を奈々の方へ向けて、
「オレに、アイツを重ねるな」
目と目があって気がついた。
宮田は怒ってはいない。
宮田は・・・少し悲しい目をしていた。
「宮田は・・・・後悔してる?」
「何を」
「私と・・・付き合ったこと」
奈々はそう言って再び顔を上げ、宮田の顔を見つめた。答えに窮した宮田の一瞬の困り顔は、すでに暮れかけた陽の中でもはっきりと見ることができた。
「・・・そんなわけないだろ」
「・・・きっと、そうだよ」
「違うって言ってんだろ!」
宮田が声を荒げると、奈々はきゅっと目を瞑り、それからベンチに置いた鞄を再び肩に下げると、すっくと立ち上がった。
「もういい」
そう言い残してその場から走り去った奈々を、宮田は追いかけることができなかった。
確かに、逐一報告する義務なんてない。
だがそもそもこれは“報告”ではなく、カップルの“日常会話”なのではないか。
何だか宮田とは論点がズレているのではないか、と思った矢先のことだった。
「・・・アイツは言うんだろ、そういうの」
「え?」
「ジムで何があったとか、どうしたとか」
宮田は木村のことを言っているらしい。
そして奈々は、宮田の言わんとしていることに気がつき、ハッと目を見開いた。
だが、何を言うべきか分からない。
「オレに・・・」
遠くを見ていた宮田がようやく顔を奈々の方へ向けて、
「オレに、アイツを重ねるな」
目と目があって気がついた。
宮田は怒ってはいない。
宮田は・・・少し悲しい目をしていた。
「宮田は・・・・後悔してる?」
「何を」
「私と・・・付き合ったこと」
奈々はそう言って再び顔を上げ、宮田の顔を見つめた。答えに窮した宮田の一瞬の困り顔は、すでに暮れかけた陽の中でもはっきりと見ることができた。
「・・・そんなわけないだろ」
「・・・きっと、そうだよ」
「違うって言ってんだろ!」
宮田が声を荒げると、奈々はきゅっと目を瞑り、それからベンチに置いた鞄を再び肩に下げると、すっくと立ち上がった。
「もういい」
そう言い残してその場から走り去った奈々を、宮田は追いかけることができなかった。