「まさか、疑ってるの？」
「・・・何を？」
「まだ・・・たっちゃんが好きなんじゃないか、とか」
「・・・別に」
「じゃあ・・・なんなの？」


夕焼けが涙腺を溶かそうとしてくる。ずっとずっと溜め込んでいた奥底の、すでに凝固したと思われていたものまで、とめどなく溢れてきてしまいそうになる。


「お前は本当にオレで・・・よかったのか？」


宮田がさらに続ける。


「どういう・・・意味？」


宮田はしばらく答えず、そしてそのまま静かに腰を下ろした。
だが、目線は奈々の方へ向けることなく、厳しい顔を崩さないままだ。


「わ、私はただ・・・・」


奈々は宮田の顔を見つめて言おうとしたが、次に出そうとした言葉が喉に引っかかり、思わず下を向いた。


「ただ？」


宮田が遠くを見たまま聞き返す。
きっとこの聞き方は、その先の答えを分かっている。


「私はただ・・・寂しかった」


夕暮れの影は長く長く伸びて、遠くに見えるブランコの影すら足元に届きそうな気がする。静まった空気の中に、暖かい赤の光が微かな希望にすら思えた。


「宮田が忙しいのは知ってるし・・・邪魔もしたくない。だけど・・・」


ギュッと拳を握って、短い一呼吸を挟んで続ける。


「前みたいにたくさん会えなくなったからこそ・・・もっと話がしたい」


隣の宮田がどんなリアクションをしているのかは分からない。


「とても大事なこと他人から聞いて・・・自分は知らなくて・・・蚊帳の外みたいで・・・」


奈々が最後まで言い終わらないうちに、宮田はさらに苛立ったような様子で口を挟んだ。


「関係ないだろ、お前に」


まるっきり予想外の挑戦的な言葉が帰ってきて、奈々は驚くと同時にショックと怒りの混ざったような、ザワザワとした感覚に襲われた。


「か、関係・・ない？」
「ジムで何があったとか、どうしたとか、こうしたとか・・・」


宮田はふぅっと大きなため息をついて続けた。


「何でいちいち言わなきゃいけねぇんだよ」