9.重ねるな
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ここのところずっと気ぜわしい感じが続いている。
春休みの平穏な日々が、遥か昔に感じられて・・・
変な輩がジムに入門してきてから、周りがにわかにうるさい。
“なんだよ、苦戦したからか?ダセェ話はしたくないのかよ”
苦戦・・・?
素人だと思ってナメていたことは認める。
石でもぶつけられたかと思うほどの鋭いジャブ。
幼い頃から鍛えてきたオレの両腕を、簡単に吹っ飛ばす威力のストレート。
オレにないものを、目の前で見せつけられた。
心中穏やかで過ごせるはずがない。
・・・・燃えてるんだよ。
父さんのボクシングを証明したい。
父さんは間違っちゃいないんだって。
“非力なボクサーなど、所詮ワンパンチで終わりよ”
そんなことがあってたまるか。
テクニックがパワーに劣るなんて誰が決めた?
証明してやる、証明するんだ。
頭の中がボクシングだらけなのは認めるよ。
昔から、それで変人扱いされているのは慣れている。
だけどそこに、チラチラと入り込んでくる・・・
ノイズ、とは言いたくない存在がある。
“アイツはああ見えて結構溜め込むタイプなんだよ”
言われなくても知ってるよ。
オレよりアイツのことを知っている風なのが気に入らない。
お前はもう手を離したんだろ?
だったらもう、いつまでもまとわりついてくるなよ。
「・・・ねぇ、ちょっと」
「・・・・」
「ねぇったら」
囁くようなトーンでありながら、強めの語気で話しかけてきたのは、向かい合って座っていた奈々。
恒例の図書館デート・・というか勉強中の二人だったが、宮田は奈々から声をかけられて初めて、周りがザワザワと騒がしくなっているのに気がついた。
「そろそろ閉館だよ。帰ろ?」
「ああ・・・そうだな」
宮田はふと自分のノートに目を落としてみると、ミミズのようなぐちゃぐちゃとした線が書いてあるだけで、全く進んでいないことに気が付いた。
「・・・コピーさせろよ」
「やだ」
「いいだろ、ちょっとくらい」
「何よ、全然上の空だったの、知ってるんだからね」
机の上の文具やノートをささっと鞄に仕舞い込むと、奈々はやや怒ったような雰囲気を体から発しながら、くるりと宮田に背を向けた。
「今日はもう・・・一人で帰る」
「・・・送るよ」
「いい」
「いいから」
宮田は強引に奈々の手を取り、相手の抵抗など全く無視をする形で館外へ出て行った。
春休みの平穏な日々が、遥か昔に感じられて・・・
変な輩がジムに入門してきてから、周りがにわかにうるさい。
“なんだよ、苦戦したからか?ダセェ話はしたくないのかよ”
苦戦・・・?
素人だと思ってナメていたことは認める。
石でもぶつけられたかと思うほどの鋭いジャブ。
幼い頃から鍛えてきたオレの両腕を、簡単に吹っ飛ばす威力のストレート。
オレにないものを、目の前で見せつけられた。
心中穏やかで過ごせるはずがない。
・・・・燃えてるんだよ。
父さんのボクシングを証明したい。
父さんは間違っちゃいないんだって。
“非力なボクサーなど、所詮ワンパンチで終わりよ”
そんなことがあってたまるか。
テクニックがパワーに劣るなんて誰が決めた?
証明してやる、証明するんだ。
頭の中がボクシングだらけなのは認めるよ。
昔から、それで変人扱いされているのは慣れている。
だけどそこに、チラチラと入り込んでくる・・・
ノイズ、とは言いたくない存在がある。
“アイツはああ見えて結構溜め込むタイプなんだよ”
言われなくても知ってるよ。
オレよりアイツのことを知っている風なのが気に入らない。
お前はもう手を離したんだろ?
だったらもう、いつまでもまとわりついてくるなよ。
「・・・ねぇ、ちょっと」
「・・・・」
「ねぇったら」
囁くようなトーンでありながら、強めの語気で話しかけてきたのは、向かい合って座っていた奈々。
恒例の図書館デート・・というか勉強中の二人だったが、宮田は奈々から声をかけられて初めて、周りがザワザワと騒がしくなっているのに気がついた。
「そろそろ閉館だよ。帰ろ?」
「ああ・・・そうだな」
宮田はふと自分のノートに目を落としてみると、ミミズのようなぐちゃぐちゃとした線が書いてあるだけで、全く進んでいないことに気が付いた。
「・・・コピーさせろよ」
「やだ」
「いいだろ、ちょっとくらい」
「何よ、全然上の空だったの、知ってるんだからね」
机の上の文具やノートをささっと鞄に仕舞い込むと、奈々はやや怒ったような雰囲気を体から発しながら、くるりと宮田に背を向けた。
「今日はもう・・・一人で帰る」
「・・・送るよ」
「いい」
「いいから」
宮田は強引に奈々の手を取り、相手の抵抗など全く無視をする形で館外へ出て行った。