昨日のジムでの出来事。



「あ、おい宮田ぁ」


宮田がジムに入るなり、ベンチに腰掛けバンテージを巻いていた木村がすっくと立ち上がり、手招きをしながら名前を呼ぶ。

だからと言って素直にそこへ歩みを寄せる宮田でもない。
どうせ何か面倒な話だろうと察し、目を伏せながら無視をするように通り過ぎる。


「あ！テメェこのやろシカトかよ！」


後ろを追いかけながら、ロッカールームまでたどり着いた二人。


「なんです、さっきから」


カバンをロッカーに入れ、着替えながらめんどくさそうに宮田が呟くと、木村はチッと舌打ちをして、


「なんなんです、じゃねーよ。お前、奈々に何にも話してねぇのかよ」


奈々の名前が出てきたところでやっぱり面倒な話だった、と宮田は心底嫌そうに軽いため息をつく。


「一歩が来たこととか、再戦することとか、全然知らなかったぞ」
「・・・わざわざ話すことじゃないでしょ」
「なんだよ、苦戦したからか？ダセェ話はしたくないのかよ」
「苦戦した覚えはないですよ」


苛立ちが扉を閉める音にも現れ、やや強めの音が二人以外誰もいない静かな室内に響く。


「宮田とはどうだ？って聞いたら、なんか浮かない顔してるしよ。お前らどーなってんだよ？」
「別に・・・関係ないでしょ、木村さんには」
「お。出たよその態度。オレはなぁ、兄貴として・・・」
「そんなに妹のお守りがしたいのかよ」
「は・・・はぁ？話すり替えんなよ！」
「とにかく、余計なお世話なんで」


ポーカーフェイスを貫く宮田に何か一撃でもお見舞いしたい・・・と苛立ちを重ねた木村は、厳つい顔をしながらさらに詰め寄る。