53.The Answer
お名前設定はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
小雪舞い散る卒業式。
後輩が手作りしたコサージュをつけるのが、我が校の伝統。
そしてそのコサージュが、第二ボタンと同じくらいの争奪戦になるのも我が校の伝統。
卒業式が終わって、みんな名残惜しそうに校門の前で立ち話をしている。
フーコは「3組の彼にコサージュもらっちゃった♪」と満面の笑みだ。
ハルとトモは恋愛体質のフーコに軽いツッコミを入れながら、「私も誰かの貰えばよかったかな〜」なんて青春し損ねた自分を恨むような声を発している。
「高杉」
卒業証書の入った筒で頭を叩かれ、振り向くとそこにはいつもの仏頂面した宮田の顔があった。
「あ、卒業おめでと」
「・・・お前もな」
宮田は柔らかく微笑むと、奈々の頭をぽんぽんと撫でた。それから続けて、
「今日、オレ行くところがあるから先に帰るぜ」
「ああ例の?わかったよ。気をつけてね」
いつもの調子でやり取りする二人。
その二人の前で、ハル・トモ・フーコの3人はポカンと口を開けて見ている。
奈々は、そういえば何も話していなかった・・・と、親友たちに報告のひとつもなく重大な事柄が進展していたことに、全身の血の気が引く思いがした。
3匹のメデューサに睨まれて、奈々は身体中が石化したような心地だ。
「奈々・・・・どういうこと?」
「あ、あの。その。あのね?」
チラチラと宮田に助けを求めるように目配せをするも、宮田は意地悪そうな目線を返してくるだけで、何もフォローするつもりがないらしい。焦っている自分を見て楽しんでいるようにも思える。
「まさかとは思うけど・・・・あんたたち・・」
「あ、あの、そのまさかで・・・」
タハハと妙にひょうきんじみた笑いで誤魔化そうとする奈々を前に、トモが珍しく宮田の前にずいっと一歩踏み出して、
「宮田くん、説明してよ」
と言った。
普段このような強行姿勢を見せないトモが前に出てきたので、他の親友たちにも強い緊張が走った。みんなが思うより、トモはずっとずっと奈々を心配してきたらしかった。
「説明?」
「うん。ちゃんと貴方の口から男らしく宣言してください」
口調は穏やかだが隙のない一言。
皆が胸を高鳴らせて成り行きを見守る中、宮田はトモから目を逸らすことなく答えた。