51.あるべきところ
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しばしの沈黙の後、宮田は慌てふためき顔を真っ赤にした奈々を前に、ポーカーフェイスを保つ事ができなくなったらしい。口元に手を当ててプッと吹き出すと、そのまま目元まで手で顔を覆ってしまった。
「ちょ、ちょっと・・・何!?」
宮田は指の股から目を覗かせて、
「顔、真っ赤だぜ」
と言って、体を小刻みに揺らして笑った。
「い、意味わかんない!どう言う事?まさか付き合ってなかったの?」
「さぁ?」
「もう!何よちゃんと言いなさいよ!」
奈々が右拳で宮田の胸を軽くどつくと、ドンと小さな鈍い音がした。
宮田は真面目な顔を崩さないまま、その胸に刺さった右拳を掴んで言った。
「聞いてどうするんだよ?」
淡々とした口調だが、内容は実に加虐的・・・諦めて蓋をした感情を無理やりこじ開けてくる誘導尋問だ。
「・・べつに」
「もし付き合ってなかったら?」
「・・・べつに」
しばし見つめ合い、お互いの出方を探る格好となった二人。
宮田はそのままつかんでいた拳を引き寄せて、奈々を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと・・・」
突然の展開に奈々は一旦拒否するそぶりを見せたが、ふっと香る宮田の懐かしい匂いに、全身の力が抜けていくような感覚がして、それ以上はできなかった。
「オレは・・・」
宮田は一度ぎゅっと、優しく抱きしめるように力を込めてから、またすぐに腕を緩めて、囁いた。
「お前以外を好きになるはずがない。これからもずっと」
宮田の淡々としてそれでいて確かな一言が、奈々の心にずんと響く。
「あとは・・・お前次第だ」
宮田はさらにきつく奈々を抱きしめて、耳元で呟いた。
懐かしい匂い、懐かしい感触。
ああそうだ、これなんだ。
一度手放したくせに、やっぱり諦められなかったのは。
もう、誰かのものになったと思ってた。
だけど・・・ずっと、待っていてくれたんだ。
このまま流されて恋に落ちていきたい。
何もなかったことにしてやり直したい。
だけどそれは、あまりにも、
一方的で、虫が良すぎて、自分の気が済まない。
「もう少し・・・時間をくれる?」
「・・・どのくらい」
「受験が終わるまで」
「いつ終わるんだよ」
実は気が短くてせっかちな宮田、相手の言葉尻にかぶせるようにして質問を返すと、
「2月・・・・」
「・・・・わかった」
宮田は腕を解き、それから額に小さく口付けた。
唇の触れた部分が熱い。
宮田はそのまま「じゃあな」と呟いて、奈々の顔も見ずに部屋を後にした。
バタンとドアの閉まる音。
母親の間抜けな挨拶音。
ぐわんぐわんとハウリングした脳内に、全てが混ざり合って響き合っている。
今起きたこと全てが夢みたい。
だけど夢じゃない。
1枚分だけ隙間の空いたCDラック。
欠けてたピースの最後のかけらが、あるべきところへ還って行ったみたい。
とりあえずは今・・・・やるべきことをやろう。
そして、全てが終わったら・・・
私の答えを、出そう。
「ちょ、ちょっと・・・何!?」
宮田は指の股から目を覗かせて、
「顔、真っ赤だぜ」
と言って、体を小刻みに揺らして笑った。
「い、意味わかんない!どう言う事?まさか付き合ってなかったの?」
「さぁ?」
「もう!何よちゃんと言いなさいよ!」
奈々が右拳で宮田の胸を軽くどつくと、ドンと小さな鈍い音がした。
宮田は真面目な顔を崩さないまま、その胸に刺さった右拳を掴んで言った。
「聞いてどうするんだよ?」
淡々とした口調だが、内容は実に加虐的・・・諦めて蓋をした感情を無理やりこじ開けてくる誘導尋問だ。
「・・べつに」
「もし付き合ってなかったら?」
「・・・べつに」
しばし見つめ合い、お互いの出方を探る格好となった二人。
宮田はそのままつかんでいた拳を引き寄せて、奈々を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと・・・」
突然の展開に奈々は一旦拒否するそぶりを見せたが、ふっと香る宮田の懐かしい匂いに、全身の力が抜けていくような感覚がして、それ以上はできなかった。
「オレは・・・」
宮田は一度ぎゅっと、優しく抱きしめるように力を込めてから、またすぐに腕を緩めて、囁いた。
「お前以外を好きになるはずがない。これからもずっと」
宮田の淡々としてそれでいて確かな一言が、奈々の心にずんと響く。
「あとは・・・お前次第だ」
宮田はさらにきつく奈々を抱きしめて、耳元で呟いた。
懐かしい匂い、懐かしい感触。
ああそうだ、これなんだ。
一度手放したくせに、やっぱり諦められなかったのは。
もう、誰かのものになったと思ってた。
だけど・・・ずっと、待っていてくれたんだ。
このまま流されて恋に落ちていきたい。
何もなかったことにしてやり直したい。
だけどそれは、あまりにも、
一方的で、虫が良すぎて、自分の気が済まない。
「もう少し・・・時間をくれる?」
「・・・どのくらい」
「受験が終わるまで」
「いつ終わるんだよ」
実は気が短くてせっかちな宮田、相手の言葉尻にかぶせるようにして質問を返すと、
「2月・・・・」
「・・・・わかった」
宮田は腕を解き、それから額に小さく口付けた。
唇の触れた部分が熱い。
宮田はそのまま「じゃあな」と呟いて、奈々の顔も見ずに部屋を後にした。
バタンとドアの閉まる音。
母親の間抜けな挨拶音。
ぐわんぐわんとハウリングした脳内に、全てが混ざり合って響き合っている。
今起きたこと全てが夢みたい。
だけど夢じゃない。
1枚分だけ隙間の空いたCDラック。
欠けてたピースの最後のかけらが、あるべきところへ還って行ったみたい。
とりあえずは今・・・・やるべきことをやろう。
そして、全てが終わったら・・・
私の答えを、出そう。