48.クラクション
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「いつ…退院なの?」
「今週末」
「なんか手伝うことある?土曜日なら午後なら・・」
「土日は親父が休みだから」
「そっか」
会話がひと段落ついたところで宮田が、
「昨日」
と呟いた。
なんとなく来るだろうと思っていた本題が降りてきたとわかり、奈々はぐっと身構える。
「来てくれて・・・サンキュな」
「・・・・ううん」
宮田がじいっと見つめるので、奈々は思わず目を逸らしてしまった。
心臓がドキドキと音を立てて、内側から体を打ち付けているのがわかる。
次の言葉を待つか話すか考えているうちに、宮田は腕を組みながら、目線を天井にずらして続けた。
「みっともねぇところ・・・見せちまったけど」
そんなふうに宮田が言うので、ひょっとしたら見間違いだったのか、夢だったのかと思っていた宮田の涙がどうやら現実だったことを確認した。
あのプライドの高い宮田がそれを無かったことにせず自ら言及してきたことに奈々は驚きながらも、なんと答えるべきかわからずにただ「ううん」と返事をするしか無かった。
「迷惑じゃ・・・・なかった?」
か細く絞り出すように奈々が聞くと、宮田はよく聞こえなかったのか、
「ん?」
「その、わ、私が・・・お見舞いに来たこと・・・嫌じゃなかった・・?」
すると宮田は頭を2回ほど掻いて、
「・・・・寝てる間に来られて、断れるかよ」
「う・・・やっぱり嫌だったんだ・・・?」
「そう言う意味じゃねぇけど」
がっくりと頭を下げて項垂れる奈々を横目に、宮田はベッドサイドの机に置きっぱなしの雑誌を手に取ると、それを丸めて奈々の頭をポコンと叩いた。
「ところでコレ、読んだか?」
感触として雑誌のようなもので頭を叩かれたのは理解した奈々。頭の上に手を伸ばして雑誌を掴み、その表紙を見るべく開いてみると、そこには「スティーブン・ドラン特集」と書かれてあった。
スティーブン・ドランとは宮田と奈々が二人とも大ファンの映画監督で、付き合う前に映画を一緒に見に行ったこともある。宮田は幼少の頃、父親に初めて連れていってもらった映画がスティーブン監督だったからということで、それ以来ずっとファンなのだという。
奈々は表紙を見てキラキラと目を輝かせながら、
「何これ、こんなの出てたの?知らなかった!」
「親父が本屋で見つけて、買ってきてくれたんだ」
「わあ・・・え、幻のデビュー作『ボルケーノ・アタック』についても言及されてる!この編集者、絶対オタクだよね」
「後半の脇役一覧も見てみろよ。『ハリケーン』のR26号も書いてあるんだぜ」
「え?あの一言しか喋らないポンコツロボが?もうこれ絶対オタクのチョイスだよ!」
雑誌を広げながらオタク話に花が咲く。
いつもの友人たちにも、木村にも、ここまでの深い話はできないし、きっとついてきてもくれない。
それなのに宮田はいつまでも飽きないといった感じでどこまでもついてくる。
ああ、そうだった。
宮田と、こんなふうに話をする時間が、好きだったんだ。
二人でいるのが楽しくて、宮田の嬉しそうな顔を見るのが好きだったんだ。
それだけで、よかったんだ・・・
なのに・・・
「今週末」
「なんか手伝うことある?土曜日なら午後なら・・」
「土日は親父が休みだから」
「そっか」
会話がひと段落ついたところで宮田が、
「昨日」
と呟いた。
なんとなく来るだろうと思っていた本題が降りてきたとわかり、奈々はぐっと身構える。
「来てくれて・・・サンキュな」
「・・・・ううん」
宮田がじいっと見つめるので、奈々は思わず目を逸らしてしまった。
心臓がドキドキと音を立てて、内側から体を打ち付けているのがわかる。
次の言葉を待つか話すか考えているうちに、宮田は腕を組みながら、目線を天井にずらして続けた。
「みっともねぇところ・・・見せちまったけど」
そんなふうに宮田が言うので、ひょっとしたら見間違いだったのか、夢だったのかと思っていた宮田の涙がどうやら現実だったことを確認した。
あのプライドの高い宮田がそれを無かったことにせず自ら言及してきたことに奈々は驚きながらも、なんと答えるべきかわからずにただ「ううん」と返事をするしか無かった。
「迷惑じゃ・・・・なかった?」
か細く絞り出すように奈々が聞くと、宮田はよく聞こえなかったのか、
「ん?」
「その、わ、私が・・・お見舞いに来たこと・・・嫌じゃなかった・・?」
すると宮田は頭を2回ほど掻いて、
「・・・・寝てる間に来られて、断れるかよ」
「う・・・やっぱり嫌だったんだ・・・?」
「そう言う意味じゃねぇけど」
がっくりと頭を下げて項垂れる奈々を横目に、宮田はベッドサイドの机に置きっぱなしの雑誌を手に取ると、それを丸めて奈々の頭をポコンと叩いた。
「ところでコレ、読んだか?」
感触として雑誌のようなもので頭を叩かれたのは理解した奈々。頭の上に手を伸ばして雑誌を掴み、その表紙を見るべく開いてみると、そこには「スティーブン・ドラン特集」と書かれてあった。
スティーブン・ドランとは宮田と奈々が二人とも大ファンの映画監督で、付き合う前に映画を一緒に見に行ったこともある。宮田は幼少の頃、父親に初めて連れていってもらった映画がスティーブン監督だったからということで、それ以来ずっとファンなのだという。
奈々は表紙を見てキラキラと目を輝かせながら、
「何これ、こんなの出てたの?知らなかった!」
「親父が本屋で見つけて、買ってきてくれたんだ」
「わあ・・・え、幻のデビュー作『ボルケーノ・アタック』についても言及されてる!この編集者、絶対オタクだよね」
「後半の脇役一覧も見てみろよ。『ハリケーン』のR26号も書いてあるんだぜ」
「え?あの一言しか喋らないポンコツロボが?もうこれ絶対オタクのチョイスだよ!」
雑誌を広げながらオタク話に花が咲く。
いつもの友人たちにも、木村にも、ここまでの深い話はできないし、きっとついてきてもくれない。
それなのに宮田はいつまでも飽きないといった感じでどこまでもついてくる。
ああ、そうだった。
宮田と、こんなふうに話をする時間が、好きだったんだ。
二人でいるのが楽しくて、宮田の嬉しそうな顔を見るのが好きだったんだ。
それだけで、よかったんだ・・・
なのに・・・