47.許されるなら
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電話を切った後、妙な興奮冷めやらぬまま子機を1階へ戻しに行くと、只事じゃない様子の奈々に気がついた母親が、心配そうな顔で尋ねた。
「どうしたの。顔が真っ青だよ」
「う、うん・・・」
「具合でも悪いの?」
「いや・・・大丈夫。もう寝るね」
ノロノロと寝支度をしてさっさと2階へ上がる。
ベッドに横になり悶々としていると、寝巻きに着替えた母親がコンコンとドアをノックして入ってきた。
「・・・・ノックなんて珍しいね」
奈々が言うと母親はいつものお調子者のムードはどこへやら、実に落ち着いた声で答えた。
「ママの勘だけど、なんかとてもしんどそうだったから」
そう言って母親は、ベッドサイドにしゃがみ込んで、布団の隙間から奈々の手を握った。
久々に触れた母親の手は、記憶の肌触りより少し萎んでいた。
「頭でも痛いの?薬飲む?」
「う、ううん・・・・大丈夫」
「白湯でも持ってこようか?」
「いや・・寝れば治ると思うから」
普段、ちゃらんぽらんな一面ばかりを見せてはいるが、一人娘の母親は何かと心配性だ。
受験の真っ只中で突然体調を崩したとあっては、心配せずにはいられないのだろう。
母親の手の温もりを感じながら、気がつけば奈々は眠っていたらしい。
どんな不安もつながった手から伝わる熱で溶けていくような気がした。
人の愛情はどんな薬よりも治癒力がある。
夜中にふと目が覚め、誰もいなくなった部屋の静けさに襲われながら、じわりと温もりの残る手のひらを眺めて奈々は思った。
誰かが側にいる温かさ・・・・
私はそれを当たり前だと思って生きてきた。
だけど宮田にとっては、当たり前のものじゃない。
宮田はほとんどお母さんの話をしない。
「あんまり覚えていない」とも言っていた。
だからこそ・・・
彼が安心して、心を預けられる場所になりたい。
辛い時こそ側にいてあげたい。
今頃気づいた。
与えられないと不満を漏らしてばっかりの自分の浅ましさに。
そして自分が相手に与えることができるものを、与えもせずにいた愚かさに。
一番辛い時だからこそ、側にいてあげたい。
もしそれがまだ、許されるのなら・・・
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電話を切った後、妙な興奮冷めやらぬまま子機を1階へ戻しに行くと、只事じゃない様子の奈々に気がついた母親が、心配そうな顔で尋ねた。
「どうしたの。顔が真っ青だよ」
「う、うん・・・」
「具合でも悪いの?」
「いや・・・大丈夫。もう寝るね」
ノロノロと寝支度をしてさっさと2階へ上がる。
ベッドに横になり悶々としていると、寝巻きに着替えた母親がコンコンとドアをノックして入ってきた。
「・・・・ノックなんて珍しいね」
奈々が言うと母親はいつものお調子者のムードはどこへやら、実に落ち着いた声で答えた。
「ママの勘だけど、なんかとてもしんどそうだったから」
そう言って母親は、ベッドサイドにしゃがみ込んで、布団の隙間から奈々の手を握った。
久々に触れた母親の手は、記憶の肌触りより少し萎んでいた。
「頭でも痛いの?薬飲む?」
「う、ううん・・・・大丈夫」
「白湯でも持ってこようか?」
「いや・・寝れば治ると思うから」
普段、ちゃらんぽらんな一面ばかりを見せてはいるが、一人娘の母親は何かと心配性だ。
受験の真っ只中で突然体調を崩したとあっては、心配せずにはいられないのだろう。
母親の手の温もりを感じながら、気がつけば奈々は眠っていたらしい。
どんな不安もつながった手から伝わる熱で溶けていくような気がした。
人の愛情はどんな薬よりも治癒力がある。
夜中にふと目が覚め、誰もいなくなった部屋の静けさに襲われながら、じわりと温もりの残る手のひらを眺めて奈々は思った。
誰かが側にいる温かさ・・・・
私はそれを当たり前だと思って生きてきた。
だけど宮田にとっては、当たり前のものじゃない。
宮田はほとんどお母さんの話をしない。
「あんまり覚えていない」とも言っていた。
だからこそ・・・
彼が安心して、心を預けられる場所になりたい。
辛い時こそ側にいてあげたい。
今頃気づいた。
与えられないと不満を漏らしてばっかりの自分の浅ましさに。
そして自分が相手に与えることができるものを、与えもせずにいた愚かさに。
一番辛い時だからこそ、側にいてあげたい。
もしそれがまだ、許されるのなら・・・
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