46.震える
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先日の模試の結果は、第一志望の大学に受かるかどうかと言ったところだった。
あと一歩、安心できると思えるレベルに達しない。
最後までやるしかない、だけど・・・ときどき自信がなさに落ち込んでしまう。
「はぁ」
模試の結果をグチャグシャと丸めたい気分をグッと堪え、大きく息を吸う。
そして鞄の中からノート類を取り出し、机の上に広げる。
ノートの束の一番上に書かれた“古文”の文字を見て、ふとあの時のセリフを思い出した。
『お前なら、大丈夫だから』
あの時の宮田は、ちっとも心配してないというような余裕の表情だった。
全幅の信頼を寄せられた気がして、心がじんわりと温かくなる。
鉛筆を持とうとした手をじっと見つめると、いつか掴んだシャツの感触や匂いが薫ってきて、思わず胸が苦しくなった。
『宮田がお前と話してる時な、すげぇ楽しそうなんだよ』
木村が言い放った一言が、頭を掠める。
その刹那、どくん、と大きく胸が波打ったのがわかった。
手のひらは鉛筆を持てないまま、どんどん血の気がひいていく。
ふるふると震え出してきたところで、何か得体の知れない暗闇が自分を飲み込んでいくような感覚に襲われた。
「奈々、フーコちゃんから電話よぉ」
ノックと同時に母親がドアから顔と子機を覗かせた。
その瞬間、自分を乗っ取ろうと襲い掛かってきた暗闇が、ドアやタンスの隙間にサッと逃げていったのがわかった。
「あ、うん。ありがと」
いつもの表情を取り戻し、子機を手にする。するとフーコは開口一番、「勉強中ごめん!今テレビに吉田栄作が出てるんだけど、このロケ現場ってこないだみんなで行ったクレープ屋じゃない!?」と興奮気味に捲し立ててきた。
「え?ほんと?チャンネルどこ!?」
「フジフジ!あ、もう終わっちゃう!早く!」
「えー!おかあさん、フジかけてよぉ〜」
フーコの“おかげ”か“せい”かは分からないが、見てはいけないものから身をカモフラージュするのには最適な喧騒だった。
今は見たくない、考えたくない。
自分の出した答えが、正しいと思っていたことが、間違いだったかもしれないなんて。
あと一歩、安心できると思えるレベルに達しない。
最後までやるしかない、だけど・・・ときどき自信がなさに落ち込んでしまう。
「はぁ」
模試の結果をグチャグシャと丸めたい気分をグッと堪え、大きく息を吸う。
そして鞄の中からノート類を取り出し、机の上に広げる。
ノートの束の一番上に書かれた“古文”の文字を見て、ふとあの時のセリフを思い出した。
『お前なら、大丈夫だから』
あの時の宮田は、ちっとも心配してないというような余裕の表情だった。
全幅の信頼を寄せられた気がして、心がじんわりと温かくなる。
鉛筆を持とうとした手をじっと見つめると、いつか掴んだシャツの感触や匂いが薫ってきて、思わず胸が苦しくなった。
『宮田がお前と話してる時な、すげぇ楽しそうなんだよ』
木村が言い放った一言が、頭を掠める。
その刹那、どくん、と大きく胸が波打ったのがわかった。
手のひらは鉛筆を持てないまま、どんどん血の気がひいていく。
ふるふると震え出してきたところで、何か得体の知れない暗闇が自分を飲み込んでいくような感覚に襲われた。
「奈々、フーコちゃんから電話よぉ」
ノックと同時に母親がドアから顔と子機を覗かせた。
その瞬間、自分を乗っ取ろうと襲い掛かってきた暗闇が、ドアやタンスの隙間にサッと逃げていったのがわかった。
「あ、うん。ありがと」
いつもの表情を取り戻し、子機を手にする。するとフーコは開口一番、「勉強中ごめん!今テレビに吉田栄作が出てるんだけど、このロケ現場ってこないだみんなで行ったクレープ屋じゃない!?」と興奮気味に捲し立ててきた。
「え?ほんと?チャンネルどこ!?」
「フジフジ!あ、もう終わっちゃう!早く!」
「えー!おかあさん、フジかけてよぉ〜」
フーコの“おかげ”か“せい”かは分からないが、見てはいけないものから身をカモフラージュするのには最適な喧騒だった。
今は見たくない、考えたくない。
自分の出した答えが、正しいと思っていたことが、間違いだったかもしれないなんて。