46.震える
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紅葉なんて来る気配がなく、残暑をいつまで引きずってるんだろうってくらい暑い10月。
放課後、古文の問題でわからないところがあって国語準備室に行ったら、ちょうど先生が席を外していた。
出直そうと思ったけど「すぐ戻ってくると思うよ」なんて言われて、準備室のソファに腰掛けて待っていたら、突然ガラリと開いた扉の向こうから、宮田と宮田のクラスの担任が顔を出した。
宮田のクラスの担任は奈々がソファに腰掛けているのを珍しそうに見て、
「ん?高杉か?どうした?」
「いえ、その・・・古文の問題でちょっとわからないところがあって」
「蛍原先生は会議であと1時間くらいは帰ってこないぞ。俺でよければ見てやるが」
「えっ・・・・先生、現代文ですよね?」
「国語教師をナメるな。古文もわかるに決まっているだろう。宮田の話の後でいいか?」
教師のやや曇ったメガネの奥がきらりと光った気がした。現代文の教え方には定評があるが、古文にも相当自信があるのだろう。と言うか、古文を教えたくて仕方がないようにも見える。ある種国語オタクみたいなものなのかもしれない。
「えっ・・あ、はい」
「宮田、資料取ってくるから、お前もそこ座って待ってろ」
宮田は教師に促されて、奈々の顔も見ずにソファに腰掛け、手と足を組んでやや猫背の格好で目を瞑った。
準備室のソファは十分な2人掛けサイズで、隣同士に座っても肩や膝がぶつかることはない。
妙に開いた隙間風が、今の二人の距離を表している気がした。
教師は自分のデスクをガサゴソと漁っていて、バサバサと乱雑な音は本棚を隔てた横のソファに座っている二人の耳にもよく届いた。
「あれ?俺、教室に忘れてきたかな・・・すまん宮田、もう少し待っててくれ」
宮田は返事をしないものだと分かりきっているのか、教師は「はい」も「いいえ」も聞かずに白衣を翻して準備室をでていった。全く化学の先生でもないのになぜ白衣を着ているのか。噂によるとチョークでスーツが汚れないように、ということらしい。白衣で見えないスーツなんて着る必要があるのかどうか。
5分経っても10分経っても教師は帰ってこなかった。
奈々はチラリと腕時計を見て、それから隣にいるのが宮田だと言うことを一瞬忘れて、
「なかなか戻ってこないね」
「・・・・そうだな」
返事が返ってきたことで初めて、隣に宮田がいたと言うことを思い出した。
と同時に、得体の知れない緊張が全身を襲う。
何かなんでもいいから話して緊張を解さなくては、とうわずった声で出てきたのは本当に普通の言葉だった。
放課後、古文の問題でわからないところがあって国語準備室に行ったら、ちょうど先生が席を外していた。
出直そうと思ったけど「すぐ戻ってくると思うよ」なんて言われて、準備室のソファに腰掛けて待っていたら、突然ガラリと開いた扉の向こうから、宮田と宮田のクラスの担任が顔を出した。
宮田のクラスの担任は奈々がソファに腰掛けているのを珍しそうに見て、
「ん?高杉か?どうした?」
「いえ、その・・・古文の問題でちょっとわからないところがあって」
「蛍原先生は会議であと1時間くらいは帰ってこないぞ。俺でよければ見てやるが」
「えっ・・・・先生、現代文ですよね?」
「国語教師をナメるな。古文もわかるに決まっているだろう。宮田の話の後でいいか?」
教師のやや曇ったメガネの奥がきらりと光った気がした。現代文の教え方には定評があるが、古文にも相当自信があるのだろう。と言うか、古文を教えたくて仕方がないようにも見える。ある種国語オタクみたいなものなのかもしれない。
「えっ・・あ、はい」
「宮田、資料取ってくるから、お前もそこ座って待ってろ」
宮田は教師に促されて、奈々の顔も見ずにソファに腰掛け、手と足を組んでやや猫背の格好で目を瞑った。
準備室のソファは十分な2人掛けサイズで、隣同士に座っても肩や膝がぶつかることはない。
妙に開いた隙間風が、今の二人の距離を表している気がした。
教師は自分のデスクをガサゴソと漁っていて、バサバサと乱雑な音は本棚を隔てた横のソファに座っている二人の耳にもよく届いた。
「あれ?俺、教室に忘れてきたかな・・・すまん宮田、もう少し待っててくれ」
宮田は返事をしないものだと分かりきっているのか、教師は「はい」も「いいえ」も聞かずに白衣を翻して準備室をでていった。全く化学の先生でもないのになぜ白衣を着ているのか。噂によるとチョークでスーツが汚れないように、ということらしい。白衣で見えないスーツなんて着る必要があるのかどうか。
5分経っても10分経っても教師は帰ってこなかった。
奈々はチラリと腕時計を見て、それから隣にいるのが宮田だと言うことを一瞬忘れて、
「なかなか戻ってこないね」
「・・・・そうだな」
返事が返ってきたことで初めて、隣に宮田がいたと言うことを思い出した。
と同時に、得体の知れない緊張が全身を襲う。
何かなんでもいいから話して緊張を解さなくては、とうわずった声で出てきたのは本当に普通の言葉だった。