45.当然
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ーーーーー
「おぉーい」
幕之内にハッパをかけ、鴨川ジムをでてしばらくしてから、背中越しに大声で呼びかける声が響いた。振り返らなくても分かる、声の主は・・・・木村だ。
スピードを遅くする理由も早くする理由もない。
一定のペースを保って走っているうちに、相手はぜいぜいとしんどそうな息遣いをしながら追いついてきた。
「お・・おま・・・少しくらい待て・・・よ・・」
「待ってくれと言われた覚えはありませんが」
「あのなぁ・・・・何だよ・・ジム来てたんなら・・・言えっての・・」
少しばかりスピードを下げてやると、木村の呼吸は少しずつ整ってきた。
「ロードワークのついでに寄っただけですよ」
「鷹村さんのお祝いってやつか。お前も律儀な後輩だな」
「・・・オレの方が先に入門してたんですけどね」
「まぁまぁ」
木村は途中まで同じコースを走るらしかった。
いつのまにか二人は無言になり、規則正しい靴音と、時折通り過ぎる自転車の鈴の音が妙に心地いい。
「しかし9月だってのに、暑っちいよな」
「・・・・」
「あ、こないだの青木の試合なんだけどよ。速水の後、みんな帰っちまってよ」
「鷹村さんから聞きましたよ」
「なんだよ、知ってんのかよ・・・まあ実際速水はスゲーわな。お前のファンも持ってかれるぞぉ?」
どこまで同じ話をする気だ、と鴨川の血の恐ろしさに宮田は若干寒気がした。
「オレのスタイルは玄人好みなんでね」
と、これまた同じセリフを返す。
自分にもどうやらそんな血が流れているらしい。
「お前、最近どうなのよコッチの方はよ?」
スカしたセリフを吐いた宮田の股間に木村が手を伸ばすと、宮田は間一髪で距離をとり、冷たく一瞥した。
「なんだよ、全然使ってねぇーんじゃねぇの?萎びて縮んじまうぞ」
「大きなお世話だ」
「アイツと別れてから新しい彼女、できてねぇのかよ」
またこの話か。
久々に会ったと思えば・・・と宮田は面倒臭そうな顔を隠さなかったが、何かを追求されるわけではなく、若干ネタにしたようなフランクさは、それほど気の重たくなるものではなかった。
「そもそも興味がない」
「ん?興味ないって・・・恋愛にか?」
「そう」
「お前そんなんでよくアイツと付き合ってたな。そりゃフラれるわ」
木村は何の気なしに言ったのだろうが、なかなかに癪に触る一言だ。
しかしながら図星すぎて、宮田には返す言葉がない。
「でもお前、アイツといる時は楽しそうにしてたぜ?」
「・・・そりゃ」
当然だろ、と言いかけて止める。
「なんだよ」
痺れを切らした木村が聞くと宮田はハッと我に返り、
「別に。木村さんもボクシングに集中したらどうです」
「よ・・余計なお世話だこの野郎!」
それから程なくしてロードワークのコースが分かれ、それぞれ軽く手を上げて別れを告げた。
「おぉーい」
幕之内にハッパをかけ、鴨川ジムをでてしばらくしてから、背中越しに大声で呼びかける声が響いた。振り返らなくても分かる、声の主は・・・・木村だ。
スピードを遅くする理由も早くする理由もない。
一定のペースを保って走っているうちに、相手はぜいぜいとしんどそうな息遣いをしながら追いついてきた。
「お・・おま・・・少しくらい待て・・・よ・・」
「待ってくれと言われた覚えはありませんが」
「あのなぁ・・・・何だよ・・ジム来てたんなら・・・言えっての・・」
少しばかりスピードを下げてやると、木村の呼吸は少しずつ整ってきた。
「ロードワークのついでに寄っただけですよ」
「鷹村さんのお祝いってやつか。お前も律儀な後輩だな」
「・・・オレの方が先に入門してたんですけどね」
「まぁまぁ」
木村は途中まで同じコースを走るらしかった。
いつのまにか二人は無言になり、規則正しい靴音と、時折通り過ぎる自転車の鈴の音が妙に心地いい。
「しかし9月だってのに、暑っちいよな」
「・・・・」
「あ、こないだの青木の試合なんだけどよ。速水の後、みんな帰っちまってよ」
「鷹村さんから聞きましたよ」
「なんだよ、知ってんのかよ・・・まあ実際速水はスゲーわな。お前のファンも持ってかれるぞぉ?」
どこまで同じ話をする気だ、と鴨川の血の恐ろしさに宮田は若干寒気がした。
「オレのスタイルは玄人好みなんでね」
と、これまた同じセリフを返す。
自分にもどうやらそんな血が流れているらしい。
「お前、最近どうなのよコッチの方はよ?」
スカしたセリフを吐いた宮田の股間に木村が手を伸ばすと、宮田は間一髪で距離をとり、冷たく一瞥した。
「なんだよ、全然使ってねぇーんじゃねぇの?萎びて縮んじまうぞ」
「大きなお世話だ」
「アイツと別れてから新しい彼女、できてねぇのかよ」
またこの話か。
久々に会ったと思えば・・・と宮田は面倒臭そうな顔を隠さなかったが、何かを追求されるわけではなく、若干ネタにしたようなフランクさは、それほど気の重たくなるものではなかった。
「そもそも興味がない」
「ん?興味ないって・・・恋愛にか?」
「そう」
「お前そんなんでよくアイツと付き合ってたな。そりゃフラれるわ」
木村は何の気なしに言ったのだろうが、なかなかに癪に触る一言だ。
しかしながら図星すぎて、宮田には返す言葉がない。
「でもお前、アイツといる時は楽しそうにしてたぜ?」
「・・・そりゃ」
当然だろ、と言いかけて止める。
「なんだよ」
痺れを切らした木村が聞くと宮田はハッと我に返り、
「別に。木村さんもボクシングに集中したらどうです」
「よ・・余計なお世話だこの野郎!」
それから程なくしてロードワークのコースが分かれ、それぞれ軽く手を上げて別れを告げた。