5.バレンタイン・デイ
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放課後、なんとなく声をかけるのが躊躇われて、宮田に背を向けて教科書をカバンにしまいながらモタモタと準備していると、後ろから丸めたプリントで頭を叩かれた。ポコ、と間抜けな音がする。
「さっさと帰るぞ」
宮田はこちらもろくに見ないまま、命令口調で言い放った。
「あ・・うん・・・じゃね」
「うん、ばいばーい」
フーコたちがニヤニヤとしながら見送る中、教室を出る。
なんとなくジロジロと見られている気がしなくもないが、宮田はどこ吹く風と言った感じでずんずん進む。
そして玄関までたどり着き、宮田が靴箱を開けた瞬間だった。
ドサドサ・・・数箱のチョコレートが落ちてきて床に散らばる。漫画みたいな展開に、2人だけでなく周りにいた人たちも一瞬固まった。
それから宮田は大きなため息をして、落ちたチョコレートを拾い、
「・・・・食うか?」
「は、はぁ?何言ってんの要らないよ!」
宮田は観念したように、カバンの中に放り込んだ。
その仕草に少し胸が痛む。
もちろん、その場で捨てたり、踏みつけたりするわけにもいかないのはわかるけど・・・チョコレートに込められた思いまで一緒に鞄に入れられたみたいな気持ちになって、変な嫉妬心が芽生えてしまう。
駅までの道のりは15分程度。
いつもはあっという間に着いてしまう道なのに、今日はお互いが無言のせいか、やけに長く感じられた。
「宮田・・あの・・・」
「なんだよ」
「チョコレート・・・嫌い?」
何を間抜けな質問をしているのかと、宮田は呆れながら答えた。
「さっさと出せ」
「・・・何よ、偉そうに」
「お前のだけは食べてやる」
「わ!輪をかけて偉そう!」
ツンツンと尖った無礼な態度にもかかわらず、“お前のだけは”なんて甘いことを言われてつい頬が緩んでしまう。
カバンから昨日買ってきたチョコレートを出して渡すと、宮田は無言のまま受け取って、それから
「・・・他のは親父に食わすから」
「お、お父さんチョコ好きなの?」
「意外とな」
宮田はちょっと笑って、それからポンポンと奈々の頭を撫でた。
「来月楽しみにしてろ」
「う、うん・・・」
「サンキュな」
と言って、後ろ手に手を振り、駅の中へ入って行った。
ーーーーーー
その日の夕方。
「あ、達也。奈々ちゃんからチョコレート預かってるわよ」
「おお、今年も。なんか冬って感じするなぁ」
奈々が木村にチョコレートをあげるのは毎年の恒例になっている。母親からチョコレートを受け取ると、木村は早速包み紙を開けて、
「お、去年よりマシになってんじゃん。しかし下手な字だなぁ〜ぎゃはは」
「ちょっと、やめなさいよもう」
木村はヨレヨレになった文字を見て爆笑しながら、ハート型のチョコに大口でかぶりつき、そのままペロリと平らげた。
「さっさと帰るぞ」
宮田はこちらもろくに見ないまま、命令口調で言い放った。
「あ・・うん・・・じゃね」
「うん、ばいばーい」
フーコたちがニヤニヤとしながら見送る中、教室を出る。
なんとなくジロジロと見られている気がしなくもないが、宮田はどこ吹く風と言った感じでずんずん進む。
そして玄関までたどり着き、宮田が靴箱を開けた瞬間だった。
ドサドサ・・・数箱のチョコレートが落ちてきて床に散らばる。漫画みたいな展開に、2人だけでなく周りにいた人たちも一瞬固まった。
それから宮田は大きなため息をして、落ちたチョコレートを拾い、
「・・・・食うか?」
「は、はぁ?何言ってんの要らないよ!」
宮田は観念したように、カバンの中に放り込んだ。
その仕草に少し胸が痛む。
もちろん、その場で捨てたり、踏みつけたりするわけにもいかないのはわかるけど・・・チョコレートに込められた思いまで一緒に鞄に入れられたみたいな気持ちになって、変な嫉妬心が芽生えてしまう。
駅までの道のりは15分程度。
いつもはあっという間に着いてしまう道なのに、今日はお互いが無言のせいか、やけに長く感じられた。
「宮田・・あの・・・」
「なんだよ」
「チョコレート・・・嫌い?」
何を間抜けな質問をしているのかと、宮田は呆れながら答えた。
「さっさと出せ」
「・・・何よ、偉そうに」
「お前のだけは食べてやる」
「わ!輪をかけて偉そう!」
ツンツンと尖った無礼な態度にもかかわらず、“お前のだけは”なんて甘いことを言われてつい頬が緩んでしまう。
カバンから昨日買ってきたチョコレートを出して渡すと、宮田は無言のまま受け取って、それから
「・・・他のは親父に食わすから」
「お、お父さんチョコ好きなの?」
「意外とな」
宮田はちょっと笑って、それからポンポンと奈々の頭を撫でた。
「来月楽しみにしてろ」
「う、うん・・・」
「サンキュな」
と言って、後ろ手に手を振り、駅の中へ入って行った。
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その日の夕方。
「あ、達也。奈々ちゃんからチョコレート預かってるわよ」
「おお、今年も。なんか冬って感じするなぁ」
奈々が木村にチョコレートをあげるのは毎年の恒例になっている。母親からチョコレートを受け取ると、木村は早速包み紙を開けて、
「お、去年よりマシになってんじゃん。しかし下手な字だなぁ〜ぎゃはは」
「ちょっと、やめなさいよもう」
木村はヨレヨレになった文字を見て爆笑しながら、ハート型のチョコに大口でかぶりつき、そのままペロリと平らげた。