42.扉の奥で
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6月の宮田の試合は無事に勝利したらしい、とこれまた木村情報。
もうしばらく試合を見ていないけど、リング上で笑みを浮かべている楽しそうな宮田の顔が目に浮かぶ。
よかったなぁ、なんて思いながら歩いていた矢先の出来事だった。
「高杉」
廊下で突然、懐かしい声に呼び止められ、思わず肩を硬直させた。
振り向かなくてもわかるこの声の持ち主は・・・宮田だ。
久々に名前を呼ばれて何事かと心穏やかではなかったが、動揺を悟られないようにゆっくりと振り向く。
「ど、どうしたの?」
「落としたぜ」
「え?な、何を?」
動揺を悟られないように・・・なんて思いながら明らかにドギマギとぎこちない奈々。それを知ってか知らずか、宮田はいつものポーカーフェイスを保ちながら、2歩ほど前に進んで、手に持っているものをポンと頭に乗せた。
「あ・・・ハンカチ」
頭に乗せられた物の感触でそれが何かをすぐに理解した奈々。それを取ろうと頭に手を伸ばした際に、微かに宮田の手に指が触れた。
雷にでも打たれたかと思うほど、ビリビリと電気が走ったかのような衝撃。
「ありがとう」
動揺を悟られないように奈々はニコリと笑って礼を言ったが、宮田はポーカーフェイスのまま、じっと奈々の目を見つめたままだ。
なんだか気恥ずかしくて、何か言わなければと思って咄嗟に出た言葉が、
「し、試合」
「ん?」
「か、勝ったみたいね」
なぜか力んでうまく言葉が出てこない。
宮田ってこんなに緊張する相手だったっけ、と思いながらピチピチと目で泳ぐ魚をどう処理しようか悩んでいると、
「まぁな」
と宮田が微かな笑みを浮かべて答えた。
宮田のこんな穏やかな顔はいつぶりに見たかな、となんだか変な懐かしさに胸が掴まれるような気がした。
「お・・・おめでと」
絞り出すような声で奈々がつぶやくと、宮田は一瞬目を見開いてから、フッと笑って「お陰様でな」と呟いた。
宮田の態度からは今までのような近寄り難い鋭さが消えていて、心の底を見透かすような澄んだ眼差しが、逆にひどく胸をえぐってくる。
そして自分の意思とは関係なく、全くなんの意図もせずに胸が勝手に高鳴り始める・・・。
これ以上ここにいては危険な気がする、と奈々はハンカチをさっと制服のポケットにしまいこみ宮田とはこれで別れようとしたが、その矢先に、向こうが行手を阻むように声をかけてきた。
「お前さ」
「な、なに?」
宮田が口を開いて何か次の言葉を言おうとしかけた時だった。
6月の宮田の試合は無事に勝利したらしい、とこれまた木村情報。
もうしばらく試合を見ていないけど、リング上で笑みを浮かべている楽しそうな宮田の顔が目に浮かぶ。
よかったなぁ、なんて思いながら歩いていた矢先の出来事だった。
「高杉」
廊下で突然、懐かしい声に呼び止められ、思わず肩を硬直させた。
振り向かなくてもわかるこの声の持ち主は・・・宮田だ。
久々に名前を呼ばれて何事かと心穏やかではなかったが、動揺を悟られないようにゆっくりと振り向く。
「ど、どうしたの?」
「落としたぜ」
「え?な、何を?」
動揺を悟られないように・・・なんて思いながら明らかにドギマギとぎこちない奈々。それを知ってか知らずか、宮田はいつものポーカーフェイスを保ちながら、2歩ほど前に進んで、手に持っているものをポンと頭に乗せた。
「あ・・・ハンカチ」
頭に乗せられた物の感触でそれが何かをすぐに理解した奈々。それを取ろうと頭に手を伸ばした際に、微かに宮田の手に指が触れた。
雷にでも打たれたかと思うほど、ビリビリと電気が走ったかのような衝撃。
「ありがとう」
動揺を悟られないように奈々はニコリと笑って礼を言ったが、宮田はポーカーフェイスのまま、じっと奈々の目を見つめたままだ。
なんだか気恥ずかしくて、何か言わなければと思って咄嗟に出た言葉が、
「し、試合」
「ん?」
「か、勝ったみたいね」
なぜか力んでうまく言葉が出てこない。
宮田ってこんなに緊張する相手だったっけ、と思いながらピチピチと目で泳ぐ魚をどう処理しようか悩んでいると、
「まぁな」
と宮田が微かな笑みを浮かべて答えた。
宮田のこんな穏やかな顔はいつぶりに見たかな、となんだか変な懐かしさに胸が掴まれるような気がした。
「お・・・おめでと」
絞り出すような声で奈々がつぶやくと、宮田は一瞬目を見開いてから、フッと笑って「お陰様でな」と呟いた。
宮田の態度からは今までのような近寄り難い鋭さが消えていて、心の底を見透かすような澄んだ眼差しが、逆にひどく胸をえぐってくる。
そして自分の意思とは関係なく、全くなんの意図もせずに胸が勝手に高鳴り始める・・・。
これ以上ここにいては危険な気がする、と奈々はハンカチをさっと制服のポケットにしまいこみ宮田とはこれで別れようとしたが、その矢先に、向こうが行手を阻むように声をかけてきた。
「お前さ」
「な、なに?」
宮田が口を開いて何か次の言葉を言おうとしかけた時だった。