「あら、奈々ちゃん彼氏が？」
「いえ、その、あの」


木村の母親が驚いて聞くと、奈々はあたふたと答えに窮した。そこに木村がさらなる爆弾を落とす。


「それがオレのジムメイトなんだよ」
「ちょ、ちょっとやめてよたっちゃん！」
「あら〜じゃあ、達也くんの紹介だったの？」
「ま、そんなトコっす」


母親同士がへぇ〜だのほぉ〜だの興味津々で前のめりになっているのを見て、奈々はめまいがする思いだった。

同席していた父親も聞きたくないらしく、「木村さん、最近ゴルフの方はどうです？」などと関係ない話をブチ込んできたが、木村の父親は心ここに在らずのようで、会話がまるで弾まない。


「たっちゃん変なこと言うのやめてよ！さもないと・・・色々ばらしちゃうからね！？」
「あ！それはやめろ！」
「なになに？おばさん聞きたいなぁ〜」
「ふっふっふ・・・」
「わ、わかった！分かったから！黙っててくれ奈々！」


そうして笑いの中、団欒の時間は過ぎていく。



気がつけば奈々と木村はトランプに熱中していて、父親同士、母親同士での雑談タイムとなっていた。



「それにしてもねぇ、木村さん」
「ん？」
「うちの子、達也くんと一緒にいると楽しそうで。本当に・・・達也くんのお嫁さんになるんじゃないか？なんて思ってたこともあったのよ」
「そうねぇ・・・私もそう思ったりしたことあるわ、小さい時」


木村の母はズズッとお茶を飲んで、目を遠くにやって思いを馳せながら答えた。


「ね！だけど、連れてきた彼氏は達也くんとは全然違うタイプで」
「そうなの？」
「不器用そうな子でねぇ・・・不思議よねぇ」


奈々の母親は、木村と共に遊びながらギャーギャーと楽しそうに騒ぐ娘を眺めながら、



「あの子と合うのかしらねぇ？」




と呟いた。