37.答え
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騒がしくしていた子供は気がついたらすっかり居なくなっていた。
時計の針は昼過ぎを指していて、どうやら皆、暖かいご飯を食べに帰宅したらしい。
そんな団欒とは対照的な二人はまだ、ベンチから動けないでいた。
「宮田・・・今日これからジムなんでしょ?」
「・・・・」
「早く帰らないと、遅刻しちゃ・・」
「このまま帰れると思うか?」
宮田はまだ腑に落ちていないようで、反論したそうに体を起こして奈々を睨んだ。
「急に勝手なことを言われても、オレは到底・・・」
そこまで言って、言葉に詰まった。
何を言っても、もうこの決定は揺るがない、そんな決意めいた表情が目の前にあるのに気付いたからだ。
「宮田はボクシングで頭がいっぱい、でしょ?」
妙に明るい声で奈々が呟く言葉に、宮田は反論の余地がなかった。
ぐっと押し黙る宮田の様子が予想通りすぎて、奈々は微かな笑みを浮かべた。
「手も繋がなくなったの・・・気づいてなかったんじゃない?」
奈々の見透かすような目線が面白くなく、宮田は反射的に言葉を荒げる。
「繋ぎたかったなら言えばいいだろうが」
宮田のこの言葉も予想通りだったのか、奈々は変わらぬ表情だ。
その淡々とした様子が、宮田の鼓動を余計に逸らせる。
導火線がどんどん短くなって今にも爆発しそうな爆弾が目の前にあるのに、解除するコードもボタンも見当たらないような緊張感と絶望感。
なんとかしようと思っても、もう為す術のない現実がそこにある。宮田はさらにきつく拳を握り締めた。
「言えてたら・・・違った結末だったのかな」
奈々の放った直球は宮田の心臓をひと突きしたが、側から見ると宮田にはなんの変化もないほど、ただただ無表情のままだ。
一方で奈々は、落ち着きを取り戻したような、妙にすっきりとした顔つきで宮田の目を真っ直ぐ見つめながら呟いた。
「今は突然のことで驚いているだけで・・・たぶん、私がいない方が集中できると思うんだ」
宮田は自分の本心をずっと見透かされていたことを知り、返す言葉を失った。
「宮田」
「なんだよ」
「今まで一緒にいてくれて・・・ありがとう」
耳障りのいい優しい言葉は、宮田にとってはただの最後通牒でしかない。何か答えてしまえば、それを認めることになってしまう。
宮田はただ口をつぐみ、真っ直ぐに奈々を見つめる。
「これでやっと素直に、ボクシングの応援ができそう」
「・・・今まで何だったんだよ」
「そりゃもう・・・ライバルだとしか思えなかったから」
ふっと笑みを浮かべる奈々に対し、宮田は厳しい表情を崩さずにいる。その刹那、腕時計のアラームがピピピピと鳴った。
「もう時間なんじゃないの?」
「・・・別に」
「今日から練習なんでしょ。もう行きなよ」
「行けるかよ」
「いいから行きなよ。宮田」
そういうと奈々はすっくと立ち上がり、宮田に拳を向けた。
「ボクシングが・・・宮田の最愛の恋人なんだから」
騒がしくしていた子供は気がついたらすっかり居なくなっていた。
時計の針は昼過ぎを指していて、どうやら皆、暖かいご飯を食べに帰宅したらしい。
そんな団欒とは対照的な二人はまだ、ベンチから動けないでいた。
「宮田・・・今日これからジムなんでしょ?」
「・・・・」
「早く帰らないと、遅刻しちゃ・・」
「このまま帰れると思うか?」
宮田はまだ腑に落ちていないようで、反論したそうに体を起こして奈々を睨んだ。
「急に勝手なことを言われても、オレは到底・・・」
そこまで言って、言葉に詰まった。
何を言っても、もうこの決定は揺るがない、そんな決意めいた表情が目の前にあるのに気付いたからだ。
「宮田はボクシングで頭がいっぱい、でしょ?」
妙に明るい声で奈々が呟く言葉に、宮田は反論の余地がなかった。
ぐっと押し黙る宮田の様子が予想通りすぎて、奈々は微かな笑みを浮かべた。
「手も繋がなくなったの・・・気づいてなかったんじゃない?」
奈々の見透かすような目線が面白くなく、宮田は反射的に言葉を荒げる。
「繋ぎたかったなら言えばいいだろうが」
宮田のこの言葉も予想通りだったのか、奈々は変わらぬ表情だ。
その淡々とした様子が、宮田の鼓動を余計に逸らせる。
導火線がどんどん短くなって今にも爆発しそうな爆弾が目の前にあるのに、解除するコードもボタンも見当たらないような緊張感と絶望感。
なんとかしようと思っても、もう為す術のない現実がそこにある。宮田はさらにきつく拳を握り締めた。
「言えてたら・・・違った結末だったのかな」
奈々の放った直球は宮田の心臓をひと突きしたが、側から見ると宮田にはなんの変化もないほど、ただただ無表情のままだ。
一方で奈々は、落ち着きを取り戻したような、妙にすっきりとした顔つきで宮田の目を真っ直ぐ見つめながら呟いた。
「今は突然のことで驚いているだけで・・・たぶん、私がいない方が集中できると思うんだ」
宮田は自分の本心をずっと見透かされていたことを知り、返す言葉を失った。
「宮田」
「なんだよ」
「今まで一緒にいてくれて・・・ありがとう」
耳障りのいい優しい言葉は、宮田にとってはただの最後通牒でしかない。何か答えてしまえば、それを認めることになってしまう。
宮田はただ口をつぐみ、真っ直ぐに奈々を見つめる。
「これでやっと素直に、ボクシングの応援ができそう」
「・・・今まで何だったんだよ」
「そりゃもう・・・ライバルだとしか思えなかったから」
ふっと笑みを浮かべる奈々に対し、宮田は厳しい表情を崩さずにいる。その刹那、腕時計のアラームがピピピピと鳴った。
「もう時間なんじゃないの?」
「・・・別に」
「今日から練習なんでしょ。もう行きなよ」
「行けるかよ」
「いいから行きなよ。宮田」
そういうと奈々はすっくと立ち上がり、宮田に拳を向けた。
「ボクシングが・・・宮田の最愛の恋人なんだから」