36.ごめん
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ベンチに座って、自販機で買ったコーヒーを飲みながらホッとひと息。
宮田は甘ったるいコーヒーは嫌いなようで、この寒い中スポーツドリンクを飲んでいる。
子供の遊び場で、子供たちが凧揚げをしている。
きゃあきゃあと楽しそうな笑い声が聞こえる、長閑な正月の風景。
「もう、いいか?」
宮田が突然ボソリと呟いたので、奈々は慌てふためき
「えっ・・・な、何が!?」
「渡すモン、あるんだけど」
「あっ・・・・あ、ああ」
奈々の挙動不審な態度を宮田は少し訝しげな目で見つめていたが、特に気にもしないようで、ポケットをガサガサと弄り、そこから小さな白い紙袋を取り出して、奈々に手渡した。
「今日、ジムの連中と初詣に行ったんだ」
宮田にそう言われ、手の中の白い紙袋を開け、隙間からそっと中を見てみると、ピンクのちりめんが可愛らしい女性向けのお守りが見えた。
「神頼みはしない主義なんだけどよ。お前が好きそうな柄だったから、つい買っちまったぜ」
袋からお守りを取り出す指が震えているのが自分でもわかった。
小さなお守りには「御守」とだけ刺繍されていて、学業やら縁結びやら、御守りのジャンルみたいなものはよくわからない。
改めて袋を見ると、袋の裏に“幸せ守”とスタンプが押してあるのがわかった。
「しあわせ・・・まもり・・?」
奈々が袋に書かれた文字を読み上げると、宮田は急にそっぽを向いて、両手をコートのポケットの中に仕舞い込んだ。
自分が買ったものとその意味を知られるのは気恥ずかしい。だから玄関先でさっさと渡して帰りたかったのに、なんて宮田は遠くに目をやりながら考えていた。
それゆえ、“隣”の異変に気がついたのは、グズグズと鼻を啜る音が聞こえてからだった。
「・・・どうした?」
宮田は最初、感動しやすい単純な奈々が喜びのあまり泣き出したのか、なんて思っていたが、どうやら様子が少しおかしいことに気付いた。
お守りと紙の袋を握りしめた両手が震え、顔を伏せるあまり体はくの字に折れ曲がっているからだ。
どうして?
いつも、こんなことしないのに。
決心が鈍る。
言えない。
言いたくない。
離れたくない。
大好き。
・・・だけど・・・
「ごめん・・・」
あれこれ考えてまとまらない頭の中から出てきた言葉がこれだった。
「宮田、ごめん・・・・」
真っ黒に滲んだ視界には、宮田がどういう顔をしているかすら、映らない。
宮田は甘ったるいコーヒーは嫌いなようで、この寒い中スポーツドリンクを飲んでいる。
子供の遊び場で、子供たちが凧揚げをしている。
きゃあきゃあと楽しそうな笑い声が聞こえる、長閑な正月の風景。
「もう、いいか?」
宮田が突然ボソリと呟いたので、奈々は慌てふためき
「えっ・・・な、何が!?」
「渡すモン、あるんだけど」
「あっ・・・・あ、ああ」
奈々の挙動不審な態度を宮田は少し訝しげな目で見つめていたが、特に気にもしないようで、ポケットをガサガサと弄り、そこから小さな白い紙袋を取り出して、奈々に手渡した。
「今日、ジムの連中と初詣に行ったんだ」
宮田にそう言われ、手の中の白い紙袋を開け、隙間からそっと中を見てみると、ピンクのちりめんが可愛らしい女性向けのお守りが見えた。
「神頼みはしない主義なんだけどよ。お前が好きそうな柄だったから、つい買っちまったぜ」
袋からお守りを取り出す指が震えているのが自分でもわかった。
小さなお守りには「御守」とだけ刺繍されていて、学業やら縁結びやら、御守りのジャンルみたいなものはよくわからない。
改めて袋を見ると、袋の裏に“幸せ守”とスタンプが押してあるのがわかった。
「しあわせ・・・まもり・・?」
奈々が袋に書かれた文字を読み上げると、宮田は急にそっぽを向いて、両手をコートのポケットの中に仕舞い込んだ。
自分が買ったものとその意味を知られるのは気恥ずかしい。だから玄関先でさっさと渡して帰りたかったのに、なんて宮田は遠くに目をやりながら考えていた。
それゆえ、“隣”の異変に気がついたのは、グズグズと鼻を啜る音が聞こえてからだった。
「・・・どうした?」
宮田は最初、感動しやすい単純な奈々が喜びのあまり泣き出したのか、なんて思っていたが、どうやら様子が少しおかしいことに気付いた。
お守りと紙の袋を握りしめた両手が震え、顔を伏せるあまり体はくの字に折れ曲がっているからだ。
どうして?
いつも、こんなことしないのに。
決心が鈍る。
言えない。
言いたくない。
離れたくない。
大好き。
・・・だけど・・・
「ごめん・・・」
あれこれ考えてまとまらない頭の中から出てきた言葉がこれだった。
「宮田、ごめん・・・・」
真っ黒に滲んだ視界には、宮田がどういう顔をしているかすら、映らない。