36.ごめん
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「今年は、一郎は来ないのかい」
宮田父の母親が呟くと、宮田父はゴホンと咳をして、
「ああ、バイトがあるらしい」
「そうかい。あの子も大きくなったねぇ」
「たまには顔を見せろと言ってるんだがな」
「いいのよ。ここに来るのも辛いんでしょう。あの子も苦労したから」
宮田の祖母がズズズっとお茶を飲みながら言うと、宮田父もバツが悪そうにビールを一口飲んだ。
宮田父がタイトルマッチに敗れ荒れていた一時期、息子・一郎はネグレクト同様の扱いを受けていた。祖父母が何度も家を訪れては一郎を引き取取ろうとしたが、それに同意しなかったのは他でもない一郎本人。
母親が出て行き、父親も荒れてまともな育児ができない中で、息子は自分のことよりも何よりも父親のことを考え、そのそばを離れないことを誓ったのだ。
宮田父が酒をやめて更生し、仕事を始めてからはしばらく、年末年始だけは祖父母の家に預けられることになったが、それでも本人にとっては面白くない出来事だったらしい。
決して祖父母宅での待遇が悪かったわけではない、むしろこれ以上ないほど持て囃されていたのだが、それが返って、一人で働く父に思いを馳せる結果となってしまっていた。
「“父さんが帰ってくるまで寝ない”なんて言ってコタツで寝ちゃったこともあったわね」
「何度も言ってくれるなよ母さん」
「お正月だってのに夜はさっさと寝ちゃって、朝早くから走りに行って」
「・・・まぁ、それは今もそうだが」
テレビから流れてくる歌謡曲に興味のない宮田父は、母親が食卓を離れた隙にチャンネルを変えようとしたが、仏壇に年越し蕎麦を供えて戻ってきたところで見つかり、慌てて手を引っ込めた。
「紅白、父さんが好きだったのよ」
「う、うむ」
「もう少し見せてあげてよ」
宮田父が食卓に置かれた写真に目をやると、写真がギロリと自分を睨んだ気がした。
「この頑固さは・・・親父譲りか」
宮田父の母親が呟くと、宮田父はゴホンと咳をして、
「ああ、バイトがあるらしい」
「そうかい。あの子も大きくなったねぇ」
「たまには顔を見せろと言ってるんだがな」
「いいのよ。ここに来るのも辛いんでしょう。あの子も苦労したから」
宮田の祖母がズズズっとお茶を飲みながら言うと、宮田父もバツが悪そうにビールを一口飲んだ。
宮田父がタイトルマッチに敗れ荒れていた一時期、息子・一郎はネグレクト同様の扱いを受けていた。祖父母が何度も家を訪れては一郎を引き取取ろうとしたが、それに同意しなかったのは他でもない一郎本人。
母親が出て行き、父親も荒れてまともな育児ができない中で、息子は自分のことよりも何よりも父親のことを考え、そのそばを離れないことを誓ったのだ。
宮田父が酒をやめて更生し、仕事を始めてからはしばらく、年末年始だけは祖父母の家に預けられることになったが、それでも本人にとっては面白くない出来事だったらしい。
決して祖父母宅での待遇が悪かったわけではない、むしろこれ以上ないほど持て囃されていたのだが、それが返って、一人で働く父に思いを馳せる結果となってしまっていた。
「“父さんが帰ってくるまで寝ない”なんて言ってコタツで寝ちゃったこともあったわね」
「何度も言ってくれるなよ母さん」
「お正月だってのに夜はさっさと寝ちゃって、朝早くから走りに行って」
「・・・まぁ、それは今もそうだが」
テレビから流れてくる歌謡曲に興味のない宮田父は、母親が食卓を離れた隙にチャンネルを変えようとしたが、仏壇に年越し蕎麦を供えて戻ってきたところで見つかり、慌てて手を引っ込めた。
「紅白、父さんが好きだったのよ」
「う、うむ」
「もう少し見せてあげてよ」
宮田父が食卓に置かれた写真に目をやると、写真がギロリと自分を睨んだ気がした。
「この頑固さは・・・親父譲りか」