34.一人がいい
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日曜日。
バイト終わりの宮田がそのまま駅まで迎えにきた。
行きたいところがあるなら付き合うぜ、なんて言われたけど、年末はどこの店も閉まっている。宮田の家からほど近い、ちょっとお洒落な喫茶店も今日から3日まで休みと張り紙がしてある。
結局、そのまま宮田の家に到着して、そしてそのまま、いつもの流れになった。
いつもの流れ、とは言っても久々なもので。
指が肌に触れるだけで、胸の鼓動がおさまらない。
ギシギシと軋むベッドの音、荒い息遣い、体のぶつかり合う音、漏れる吐息。
初めてじゃないのにいつも、初めてみたいに緊張してしまう。
そして体を硬らせている私を宮田はいつも笑う。
いつもはピクリとも笑わないくせに。
「宮田って本当・・・・好きだよね」
情事の後、意地悪く呟くと宮田は「何が」と低い声で答えた。
「何がって・・・最近会うとコレしかしてない」
「そんなわけねぇだろ」
「前回もこんな感じだったような・・・」
「今日はどこも閉まってるから、行くところねぇし」
そう言いながら宮田はベッドで半身を起こし、ふぅ、と短くため息をついた後、ベッドサイドに無造作に脱ぎ捨てた服を着始めた。
「散歩でも・・・行くか」
「・・・うん」
すでに薄暗くなった空、どこもかしこも降りているシャッター、車の少ない大通り。
1年を恙無く終えた安息感と、新たなスタート前の妙な緊張感が入り混じって、雪こそ降っていないものの、しんと底から冷えるような空気が漂っている。
宮田は両手をポケットに入れたまま、奈々の2歩ほど前を歩いている。
奈々は手袋をしてても冷たい両手を胸の前で合わせて揉みながら、どこへ行くのかわからない宮田の後ろをただただ追いかけていた。
いつからかな。
手を繋がなくなったの。
宮田は気付いているのかな。
宮田はこちらを振り返ることもせず、2歩ほど前を歩いている。
意地を張らずに手を伸ばせば、腕と腕を絡めることくらいはできる気はするけれど。
気付いてほしいからこそ、手を伸ばすことができない。
「どこも閉まってるし、暗くなってきたし、そろそろ帰るか」
「そうだね・・・」
ぐるぐると近所を散歩したが休めるスペースの一つも見つからなかった。
こんなことなら家でおしゃべりの一つや二つしておけばよかったかもしれない。
「送るよ」
「駅まででいいよ」
「年の瀬は変な奴が多いからダメだ。行くぞ」
駅に着いて、切符を買って乗り込んで。
ホームで電車を待ち、電車に乗っている間・・・・。
特に会話がない。
何か共通の話題を探そうと、奈々は最近友達の間でもよく話す進路のことを持ち出してみた。