27.優しいから
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「・・・こ、これ・・・ガム」
「なわけないよな」
「ですよね」
ぽかんと固まる奈々をよそに、宮田はゴツゴツした指でブレスレットの金具を開き、そしてそっと奈々の腕に装着させた。
「み、宮田、これって・・・・」
ブレスレットの長さはまるで設えたかのように丁度よい。
そこでふと、階段の踊り場で手首を何度も掴まれたあの日の出来事を思い出した。
何をしているのか全く見当もつかなかったが、まさか手首のサイズを測っていたとは。
「あの日も確かこんな、薄ら寒い日だったな」
宮田の意外な一言に、ブレスレットを凝視していた目が思わず上を向く。
“あの日”とは、二人の想いが通じ合った日。
奈々が密かに手帳に○をつけている付き合って1周年の記念日のことだ。
「・・・正確にはあと5日後だけど」
意地悪く奈々が言うと、宮田は少し罰が悪そうに答えた。
「悪かったな、覚えてなくて」
相手は何の気なしに言い放ったのだろうと思うが、その何気ない一言が心に刺さる時がある。悪意がない真っ直ぐなナイフは、何処もえぐり取らない代わりに、ただただ真っ直ぐ深いところまで刺さっていく。
「まぁ・・・覚えてるわけないと思ってたから、別に・・・」
そこまで言って、次の言葉が出る前に、涙が出た。
手の甲に落ちた滴が滑り落ち、さっきつけてもらったブレスレットの間に流れていく。
遠くの方をぼんやり見ていた宮田は、奈々が急に静かになったのを不思議に思って目を見やると、相手が涙を流していることに気がついて思わず固まった。
記念日なんて覚えている男、滅多にいないとは聞いたことがある。
宮田がそんなのを覚えてマメにお祝いするようなタイプではないのも知っている。
だけど、自分にとっては、その日はとても大切な、思い出の日で・・・
“覚えてない”なんて聞きたくなかった。
「なわけないよな」
「ですよね」
ぽかんと固まる奈々をよそに、宮田はゴツゴツした指でブレスレットの金具を開き、そしてそっと奈々の腕に装着させた。
「み、宮田、これって・・・・」
ブレスレットの長さはまるで設えたかのように丁度よい。
そこでふと、階段の踊り場で手首を何度も掴まれたあの日の出来事を思い出した。
何をしているのか全く見当もつかなかったが、まさか手首のサイズを測っていたとは。
「あの日も確かこんな、薄ら寒い日だったな」
宮田の意外な一言に、ブレスレットを凝視していた目が思わず上を向く。
“あの日”とは、二人の想いが通じ合った日。
奈々が密かに手帳に○をつけている付き合って1周年の記念日のことだ。
「・・・正確にはあと5日後だけど」
意地悪く奈々が言うと、宮田は少し罰が悪そうに答えた。
「悪かったな、覚えてなくて」
相手は何の気なしに言い放ったのだろうと思うが、その何気ない一言が心に刺さる時がある。悪意がない真っ直ぐなナイフは、何処もえぐり取らない代わりに、ただただ真っ直ぐ深いところまで刺さっていく。
「まぁ・・・覚えてるわけないと思ってたから、別に・・・」
そこまで言って、次の言葉が出る前に、涙が出た。
手の甲に落ちた滴が滑り落ち、さっきつけてもらったブレスレットの間に流れていく。
遠くの方をぼんやり見ていた宮田は、奈々が急に静かになったのを不思議に思って目を見やると、相手が涙を流していることに気がついて思わず固まった。
記念日なんて覚えている男、滅多にいないとは聞いたことがある。
宮田がそんなのを覚えてマメにお祝いするようなタイプではないのも知っている。
だけど、自分にとっては、その日はとても大切な、思い出の日で・・・
“覚えてない”なんて聞きたくなかった。