25.義務感
お名前設定はこちら
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『好きなだけじゃダメか?』
そう問いかけた時、相手からの返事はなかった。
つまりそれは、好きなだけじゃダメだと言う返事だ。
アイツのやりたいこと、望み、期待するものなんか分かっている。
だけど今のオレは与えてやれない。
今、アイツにそれを与えているのは・・・あの野郎だ。
じゃあオレは代わりに何を与えてやれるだろう?
そう考えると、急に何も出てこなくなる。
相手の欲しがっている物はわかる。
だけど・・・・
オレが、アイツに何かをしてやりたいと思ったことは・・・・あるのか?
白紙回答は、アイツの泣き顔ですぐに覆い隠される。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
ピピピと無機質な機械音が、沈み切っていた体を無理やり布団から引き剥がそうとする。
寝覚は悪くない方なのに、今日は嫌に体が重たい。
だからと言って、もうすぐ冬だから気圧の変化もあるのだろうなんて、能天気な分析はしない。
自分の心身のコンディションくらい、文字に書き起こせるほどに明確に理解している。
朝のロードワーク。
人気の少ない河原の空気が清々しい。
身体の重りが少しずつ抜けていくような気がする。
試合が終わったと思ったらもう次の試合の話が舞い込んできた。
幕之内と同じ階級でデビューすると決めたはいいが、やはりウェイト的には少し負荷がかかる。
おまけに最近どんどん身長が伸びて、筋肉の付きもガキのころのソレとは変わってきて、次の減量が少しキツくなりそうなのは目に見えていた。
頭の中はボクシングだらけだ。
そしてその隙間にふと、アイツの悲しげな顔が通り過ぎて消える。
刺さり込んだ細やかな氷柱が溶けずにじわじわと胸を刺していく。
誰もいない庭で一人霜柱を取っていた幼少の頃を思い出す。
「あれは眺めている間に溶けていったけど」
ざっざっと規則正しい足音の合間に、宮田はボソリと呟く。
「これはずっと刺さったまま抜けやしねぇ」
そう問いかけた時、相手からの返事はなかった。
つまりそれは、好きなだけじゃダメだと言う返事だ。
アイツのやりたいこと、望み、期待するものなんか分かっている。
だけど今のオレは与えてやれない。
今、アイツにそれを与えているのは・・・あの野郎だ。
じゃあオレは代わりに何を与えてやれるだろう?
そう考えると、急に何も出てこなくなる。
相手の欲しがっている物はわかる。
だけど・・・・
オレが、アイツに何かをしてやりたいと思ったことは・・・・あるのか?
白紙回答は、アイツの泣き顔ですぐに覆い隠される。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
ピピピと無機質な機械音が、沈み切っていた体を無理やり布団から引き剥がそうとする。
寝覚は悪くない方なのに、今日は嫌に体が重たい。
だからと言って、もうすぐ冬だから気圧の変化もあるのだろうなんて、能天気な分析はしない。
自分の心身のコンディションくらい、文字に書き起こせるほどに明確に理解している。
朝のロードワーク。
人気の少ない河原の空気が清々しい。
身体の重りが少しずつ抜けていくような気がする。
試合が終わったと思ったらもう次の試合の話が舞い込んできた。
幕之内と同じ階級でデビューすると決めたはいいが、やはりウェイト的には少し負荷がかかる。
おまけに最近どんどん身長が伸びて、筋肉の付きもガキのころのソレとは変わってきて、次の減量が少しキツくなりそうなのは目に見えていた。
頭の中はボクシングだらけだ。
そしてその隙間にふと、アイツの悲しげな顔が通り過ぎて消える。
刺さり込んだ細やかな氷柱が溶けずにじわじわと胸を刺していく。
誰もいない庭で一人霜柱を取っていた幼少の頃を思い出す。
「あれは眺めている間に溶けていったけど」
ざっざっと規則正しい足音の合間に、宮田はボソリと呟く。
「これはずっと刺さったまま抜けやしねぇ」