電話を切ってから、宮田は怠そうに首を上げて天井を見つめた。電灯が切れかかっているらしく、２、３回チカチカと点滅しては点くのを繰り返している。時計を見るともう９時半。どこの電気屋もスーパーも閉まっている。明日も買いに行く余裕はなさそうなので、父親に買っておいてもらおうと思ったが、受話器をあげる気力が沸かない。


「・・・・ダセェにも程があるぜ」


週末は珍しくバイトが休みの、完全オフの日だった。
ジムを移籍する前から・・・いや、高校2年に上がってからほとんど構ってやれない日々が続いていたので、この週末に相手を誘ってどこかへ行こうかと考えたのだが。




電話の先から、男の声が聞こえた。




知らない男ではない、アンパイであるはず人物だが、時間はもう夜の９時を回っており、何より久しく聞いてなかった奈々の楽しそうな笑い声に、心の奥底が炙られるような嫉妬を覚えずにはいられなかった。


「そうか」なんて冷たい返事で電話を切った後で、今更相手を誘うなどできるわけがない。そして相手も・・・気を遣って最近はこちらを誘ってくることもなくなった。

前はもっと自然に一緒にいた気がするのに、今は一緒にいようと思えば思うほど気力と体力を奪われる。



好きな気持ちは変わらないはずなのに。