24.今思えば
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「よ〜」
ノックと同時にドアが開き、若干ユルめの木村の声が隙間から漏れたと同時に、全く作っていない自然体そのものの木村がひょっこりと顔を出した。
ボクシングの練習の後なのだろう、シャワーを浴びて爽やかではあるが、顔には疲労感が見て取れる。
「はいコレ」
「おうよ」
木村はジャンプを受け取るとそのまま床に座り、ベッドに背を預け、ページをめくり始めた。
ページのめくる音と、それから時折クククだのハハハだの漏れてくる笑い声に、奈々の宿題を進める手も止まりがちだ。
「ねぇ、今度から持って帰って読んでくれない?」
「え?いいじゃねーか、あと1つで読み終わるからよ。オレいま4つくらいしか連載追ってねぇんだわ」
「う、うそぉ!?どの漫画も捨てるとこないラインナップだけど!?」
「ドラゴンボールとろくでなしブルースだろ、あとシティーハンターと・・そのくらいかな」
「じょ、ジョジョ読まないの!?燃えるお兄さんとか!!」
「あ、てんで性悪キューピッド好きだな。エロいし」
「またそういうエッチなものばかり見て・・・」
ぎゃあぎゃあといつものおしゃべりが続く。盛り上がる会話の中、ドアのノックする音が聞こえなかったらしい。
母親がおもむろにドアを開けて、隙間からニュッと子機を差し出した。
「盛り上がっているところ悪いけど、電話よ」
「あー、はいはい。ごめんたっちゃん、電話」
「あいよ」
「で、誰?フーコ?」
「宮田くんよ」
さっと血の気が引く音が聞こえた。
先ほどの盛り上がりは一気に冷え切って、なんとなく気まずい空気が漂う。天然の母親のことだ、もちろん電話を保留になんてしていなかったようで、大盛り上がりの会話は全部筒抜けだったと考えておかしくないだろう。
「あ・・・も、もしもし」
「・・・」
宮田からの返事がない。
「み、宮田?だよね?どうしたの?」
「・・・取り込み中なら切ってもいいけど」
「え!いやいやいや、ちょっと待ってよ!」
焦る奈々の横で、木村が抜き足差し足で部屋を出ていく様子が見えた。片手にはしっかりジャンプを抱えて、音を立てないようにそっとドアノブを握って姿を消した。
「ちょっとたっちゃんが・・・漫画を借りに来て」
「あ、そう」
「今来たばかりだけど、もう帰ったから」
「へえ」
しいん、と音の鳴りそうな静寂。先ほどまで木村と笑い合っていた時間が嘘のようだ。
いくら相手が木村とはいえ、こんな時間に男性が部屋に上がり込んでいたのはマズかっただろう。かと言ってやましいことをしたわけでもない。何かを言うべきなのに頭が固まって言葉が何一つ出てこない。
「しばらく構ってやれなかったから、どうしているかと思ったけど」
宮田が小さいため息を挟んで続けた。
「元気そうで安心したよ」
字面とは裏腹に、その口調はひどく冷淡に聞こえた。奈々は誤解されているのだとわかり、考えがまとまらないまま言葉を返す。
「そ、そんなことないよ。さ・・・寂しかったよ・・・」
それきり、何の言葉も浮かばなかった。
「そうか」
宮田は平坦な声でそう言うと、じゃあなと静かに呟いて電話を切ってしまった。ツーツーと電話の無機質な音が内耳にこだまして、変な催眠術に掛けられたかのように頭がぼうっとする。
好きな人から電話が来て嬉しいはずなのに。
もうずっとこうだ。
相手のことを考えるのが苦しくて、辛い。
思えば片思いしている時からそうだった。
宮田を好きでいると・・・・
心が痛い。
ノックと同時にドアが開き、若干ユルめの木村の声が隙間から漏れたと同時に、全く作っていない自然体そのものの木村がひょっこりと顔を出した。
ボクシングの練習の後なのだろう、シャワーを浴びて爽やかではあるが、顔には疲労感が見て取れる。
「はいコレ」
「おうよ」
木村はジャンプを受け取るとそのまま床に座り、ベッドに背を預け、ページをめくり始めた。
ページのめくる音と、それから時折クククだのハハハだの漏れてくる笑い声に、奈々の宿題を進める手も止まりがちだ。
「ねぇ、今度から持って帰って読んでくれない?」
「え?いいじゃねーか、あと1つで読み終わるからよ。オレいま4つくらいしか連載追ってねぇんだわ」
「う、うそぉ!?どの漫画も捨てるとこないラインナップだけど!?」
「ドラゴンボールとろくでなしブルースだろ、あとシティーハンターと・・そのくらいかな」
「じょ、ジョジョ読まないの!?燃えるお兄さんとか!!」
「あ、てんで性悪キューピッド好きだな。エロいし」
「またそういうエッチなものばかり見て・・・」
ぎゃあぎゃあといつものおしゃべりが続く。盛り上がる会話の中、ドアのノックする音が聞こえなかったらしい。
母親がおもむろにドアを開けて、隙間からニュッと子機を差し出した。
「盛り上がっているところ悪いけど、電話よ」
「あー、はいはい。ごめんたっちゃん、電話」
「あいよ」
「で、誰?フーコ?」
「宮田くんよ」
さっと血の気が引く音が聞こえた。
先ほどの盛り上がりは一気に冷え切って、なんとなく気まずい空気が漂う。天然の母親のことだ、もちろん電話を保留になんてしていなかったようで、大盛り上がりの会話は全部筒抜けだったと考えておかしくないだろう。
「あ・・・も、もしもし」
「・・・」
宮田からの返事がない。
「み、宮田?だよね?どうしたの?」
「・・・取り込み中なら切ってもいいけど」
「え!いやいやいや、ちょっと待ってよ!」
焦る奈々の横で、木村が抜き足差し足で部屋を出ていく様子が見えた。片手にはしっかりジャンプを抱えて、音を立てないようにそっとドアノブを握って姿を消した。
「ちょっとたっちゃんが・・・漫画を借りに来て」
「あ、そう」
「今来たばかりだけど、もう帰ったから」
「へえ」
しいん、と音の鳴りそうな静寂。先ほどまで木村と笑い合っていた時間が嘘のようだ。
いくら相手が木村とはいえ、こんな時間に男性が部屋に上がり込んでいたのはマズかっただろう。かと言ってやましいことをしたわけでもない。何かを言うべきなのに頭が固まって言葉が何一つ出てこない。
「しばらく構ってやれなかったから、どうしているかと思ったけど」
宮田が小さいため息を挟んで続けた。
「元気そうで安心したよ」
字面とは裏腹に、その口調はひどく冷淡に聞こえた。奈々は誤解されているのだとわかり、考えがまとまらないまま言葉を返す。
「そ、そんなことないよ。さ・・・寂しかったよ・・・」
それきり、何の言葉も浮かばなかった。
「そうか」
宮田は平坦な声でそう言うと、じゃあなと静かに呟いて電話を切ってしまった。ツーツーと電話の無機質な音が内耳にこだまして、変な催眠術に掛けられたかのように頭がぼうっとする。
好きな人から電話が来て嬉しいはずなのに。
もうずっとこうだ。
相手のことを考えるのが苦しくて、辛い。
思えば片思いしている時からそうだった。
宮田を好きでいると・・・・
心が痛い。