3.クリスマス協奏曲 後編
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久しく行っていなかったという雑貨屋には、女子高生が好きそうな輸入物の文具やアクセサリーがたくさん並んでいる。
普段の客層は99%女性だが、今日はクリスマスイブともあってカップル率もそれなりに高く、宮田1人が浮くような感じではなかった。
それにしても、男性としては決して居心地のいいスペースではないが。
「わぁー。久々に来たけどやっぱ可愛い」
「・・・そっか」
「前にたっちゃんと来て以来だなぁ」
「・・・・」
宮田が何のリアクションもしないことを不思議に思った瞬間、奈々は“またやってしまった”と思わず頭を抱えてうなだれた。
“たっちゃん”とは宮田のジムメイトであり、自分の幼馴染でもある木村達也のこと。そして彼は自分が長年片想いしていた相手でもあることを、宮田はよくよく知っていた。
「・・・なんだよ」
「・・・妬いてない?」
「バカじゃねぇの」
とは言いながら、宮田はいささか面白くなさそうな顔で、腕を組んで黙り込んでしまった。また頭の中に浮かんだことをそのまま、深く考えもせずに言ってしまう悪癖が出た・・と奈々は相変わらず浅はかな自分の脳味噌を呪う。
「なんか買うつもりか?」
「うーん、見てるだけ」
「要らないのか?」
「見るだけでも楽しいんだよ、女の子は」
「・・・そう」
これから後何時間この時間が続くんだ?と宮田は若干気が遠くなる気がした。
そんな宮田の気持ちなど全く知らない奈々は、目の前の色とりどりの雑貨に心を奪われたままだ。
「あ、ねぇこれ可愛くない?」
「・・・オレに聞いてどうする」
「えー。宮田が可愛いと思うなら買っちゃおうかなぁ、なんて」
どこか外国のものらしい、ビジューがたくさんあしらわれたポーチ。もちろん、男の宮田にこの良さがわかるわけがない。正直店の中に置いてあるものが全部同じに見えるほど興味を引かれない宮田であったが、それでも隣に立っている相手が目をキラキラさせて眺めているものを否定できるはずがなかった。
奈々がポーチを手に取り、うっとりと眺めていると、横から宮田がヒョイとそれを奪い取っていった。
「ちょ、ちょっと!?」
そのまま宮田はレジへ直行。
さすがの奈々も、彼が何をしようとしているかはすぐに分かった。
呆気にとられている中、ただただ宮田の背中を眺めることしかできないでいる。
しばらくして、先ほどのポーチは綺麗な包紙にリボンをかけられた正装で戻ってきた。
「見終わったんなら帰るぞ」
「あ・・・う、うん」
正装に身を包んだポーチは、可愛らしい紙袋の中に眠っている。その可愛らしい紙袋を持ったまま、宮田は奈々の半歩前を歩き出した。
宮田はそれから急に黙り込んで、不似合いな可愛らしい紙袋を手に下げたままズンズン歩いていく。奈々もなぜか、その雰囲気に気圧されて、ただ後ろをついていくしかなかった。
宮田の家と奈々の家はそれほど遠くはないが、駅からの道のりとなると方向がやや異なってくる。そこを右に曲がった先のバス停に乗れば我が家へ、まっすぐ行けば宮田の家へたどり着く。
分岐点に差し掛かろうとするあたりで、奈々が尋ねた。
「宮田・・・もう・・帰る?」
すると宮田はピタリと足を止めて、
「・・・お前はまだ時間あるのか?」
「まぁ・・まだ4時半だし・・あと少しは」
奈々がそう答えたのを聞いて、宮田は“分岐点”から自宅の方角へ歩き始めた。
さすがの奈々でも、これは今から自宅に来いという誘いであることは理解できた。クリスマスに自宅へご招待・・・その意味を思わず深追いして、胸が高鳴り始める。
お、お父さん・・・今日はいるのかな・・・
冬だと言うのに、なんだか手に妙な汗をかきはじめた。
普段の客層は99%女性だが、今日はクリスマスイブともあってカップル率もそれなりに高く、宮田1人が浮くような感じではなかった。
それにしても、男性としては決して居心地のいいスペースではないが。
「わぁー。久々に来たけどやっぱ可愛い」
「・・・そっか」
「前にたっちゃんと来て以来だなぁ」
「・・・・」
宮田が何のリアクションもしないことを不思議に思った瞬間、奈々は“またやってしまった”と思わず頭を抱えてうなだれた。
“たっちゃん”とは宮田のジムメイトであり、自分の幼馴染でもある木村達也のこと。そして彼は自分が長年片想いしていた相手でもあることを、宮田はよくよく知っていた。
「・・・なんだよ」
「・・・妬いてない?」
「バカじゃねぇの」
とは言いながら、宮田はいささか面白くなさそうな顔で、腕を組んで黙り込んでしまった。また頭の中に浮かんだことをそのまま、深く考えもせずに言ってしまう悪癖が出た・・と奈々は相変わらず浅はかな自分の脳味噌を呪う。
「なんか買うつもりか?」
「うーん、見てるだけ」
「要らないのか?」
「見るだけでも楽しいんだよ、女の子は」
「・・・そう」
これから後何時間この時間が続くんだ?と宮田は若干気が遠くなる気がした。
そんな宮田の気持ちなど全く知らない奈々は、目の前の色とりどりの雑貨に心を奪われたままだ。
「あ、ねぇこれ可愛くない?」
「・・・オレに聞いてどうする」
「えー。宮田が可愛いと思うなら買っちゃおうかなぁ、なんて」
どこか外国のものらしい、ビジューがたくさんあしらわれたポーチ。もちろん、男の宮田にこの良さがわかるわけがない。正直店の中に置いてあるものが全部同じに見えるほど興味を引かれない宮田であったが、それでも隣に立っている相手が目をキラキラさせて眺めているものを否定できるはずがなかった。
奈々がポーチを手に取り、うっとりと眺めていると、横から宮田がヒョイとそれを奪い取っていった。
「ちょ、ちょっと!?」
そのまま宮田はレジへ直行。
さすがの奈々も、彼が何をしようとしているかはすぐに分かった。
呆気にとられている中、ただただ宮田の背中を眺めることしかできないでいる。
しばらくして、先ほどのポーチは綺麗な包紙にリボンをかけられた正装で戻ってきた。
「見終わったんなら帰るぞ」
「あ・・・う、うん」
正装に身を包んだポーチは、可愛らしい紙袋の中に眠っている。その可愛らしい紙袋を持ったまま、宮田は奈々の半歩前を歩き出した。
宮田はそれから急に黙り込んで、不似合いな可愛らしい紙袋を手に下げたままズンズン歩いていく。奈々もなぜか、その雰囲気に気圧されて、ただ後ろをついていくしかなかった。
宮田の家と奈々の家はそれほど遠くはないが、駅からの道のりとなると方向がやや異なってくる。そこを右に曲がった先のバス停に乗れば我が家へ、まっすぐ行けば宮田の家へたどり着く。
分岐点に差し掛かろうとするあたりで、奈々が尋ねた。
「宮田・・・もう・・帰る?」
すると宮田はピタリと足を止めて、
「・・・お前はまだ時間あるのか?」
「まぁ・・まだ4時半だし・・あと少しは」
奈々がそう答えたのを聞いて、宮田は“分岐点”から自宅の方角へ歩き始めた。
さすがの奈々でも、これは今から自宅に来いという誘いであることは理解できた。クリスマスに自宅へご招待・・・その意味を思わず深追いして、胸が高鳴り始める。
お、お父さん・・・今日はいるのかな・・・
冬だと言うのに、なんだか手に妙な汗をかきはじめた。