「よーお、女子高生！」
「あ、久しぶりたっちゃん」


学校からの帰り道。
後ろからクラクションを鳴らされて振り向くと、配達車に乗った木村がウインドウを下げて、奈々に声をかけてきた。


「今日は早いんだな？」
「あー、まあね……たっちゃんの仕事してる姿見るの久しぶりだなぁ」
「真面目にやってるだろ？」
「見た目はね」


奈々がクスクスと笑うと、木村は面白くなさそうに「見た目ってなんだよ」とぶつぶつ文句を言う。


「宮田とはどうよ、最近」
「別に・・・ふつーだけど・・」


人通りの少ない道ということもあり、木村は車をアイドリング状態で停車させながら、おしゃべりを続ける。


「そっかぁ。アイツも忙しくなったからなぁ。最近ジムにライバルも登場したしよ」
「へぇ」
「あれ？聞いてねぇの？」
「・・・・・うん」


奈々の答える間が異様に長いのを気にした木村は、


「まぁアイツも、言いたく無かったのかなぁ？」
「何があったの？」
「ド素人に苦戦させられてよ。で、来月再試合よ」
「・・・そうなんだ」


最近特にボクシングのことで頭がいっぱいなんだろうな、と思ってはいたが、それにしても何も聞かされていなかった、何も話してもらっていなかったことに少なからずショックを受ける。

そんな中、後ろからプッと軽くクラクションを鳴らされ、道を塞いでいた自分たちに気が付き、木村は慌ててギアを入れた。


「ったくアイツも、何にも言わねぇでどんだけボクシングバカなんだか・・・今日オレがジムで説教しとくわ！じゃな〜」