31.嘘
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12月。
学校は期末試験の真っ最中。
試験中は昼で学校が終わる。
宮田と奈々は、奈々の家で明日の試験対策に勤しんでいた。
「で、ここにさっきの計算式を代入するでしょ?すると・・」
「・・・ちょっと待て。このxは何だ?」
「だから、このxは・・・」
宮田は英語や現代文は得意なくせに、数学がものすごく苦手だ。
時々数学を「算数」と言い間違えるほど、知識が小6で止まっているらしい。
「よくうちの高校に入学できたよね・・・まぁ、別に取り立ててすごい進学校でもないけどさ」
「嫌味はいいから、早く次教えろよ」
「教えてください、でしょ」
11月に色々あって、元の鞘に戻った二人。
宮田は相変わらず忙しいけれど、少しは気にしてくれているのか、前より電話も増えたし、学校で会う頻度も多くなった気はする。
それでも、わからなくなっていた距離感を取り戻して、前みたいな自然な会話ができるようになったのが何より嬉しい。
「はぁ、ようやくひと段落できそうね・・・ちょっと休憩しよっか」
「あぁ・・・もう今日はこれまでだな」
「いや終わってないから・・・。何か食べる?下から持ってくるけど」
奈々がそう言ってドアノブに手をかけた瞬間、
「水でいい」
「え?そう?勉強するとお腹空かない?」
不思議そうに奈々が聞き返すと宮田は、
「年末、試合があるから」
と答えた。
「あ、そ、そうなんだ・・・減量だっけ?」
「まあ本格的にするのはまだだけど」
「そ、そっかぁ・・・」
せっかく取り戻しかけてきた調子がまた狂い始める。
“じゃあまた会えなくなるね、さみし〜い”なんて戯けて笑ってみたりできればいいのに。
“応援してるね”なんて当たり前のセリフすら出てこない。
出てこないんじゃなくて、嘘っぽくて言えない。
いや、嘘っぽいんじゃなくて・・・嘘だから言えないんだ。
応援なんてしてない。
“試合がある”って言われた時、これっぽっちもそんな気が起きなかった。
あぁまた宮田と会えなくなるんだ、我慢しなきゃいけないんだって。
そんながっかりした気持ちばかりが出てきた。
嫌な女。
好きな人が命をかけて挑んでいるものを応援できないなんて。
「どうした?」
「えっ」
いつの間にかぼうっと考え込んでいたのか、宮田に声をかけられてハッと我に返る。
「あ、ああ・・・ほらなんか宮田の前でお菓子食べづらいなぁって思って」
「・・・別にいいよ。さっさと取ってこい」
「はーい」
バタンとドアを閉めて階段を降り、キッチンでコップに水を入れ、自分はお代わりの紅茶を淹れた。それからお菓子棚を漁って、中に先日買ったばかりのチョコレートを発見したけれど、何となく宮田の前で食べるのが悪くて、その場で口に放り込む。大好物のチョコレートなのに、何の味もしない。
「・・・これを機にダイエットでもしよっか」
誰に言うとでもなく呟いて、奈々は部屋に戻った。
試験は無事に終わり、宮田もどうやら赤点を取らずに済んだらしい。そして月末の試合に備えて、すぐに熱心なトレーニングが始まった。
前まで増えかけていた電話も少なくなり、学校でもまた顔を合わせない日が多くなってきた。
12月も半ばになって、街はキラキラとクリスマスムードに溢れてきているのに、クリスマスのクの字すら言って憚れるような雰囲気だ。
去年は一緒にランチして買い物して、楽しかったなぁ・・・・
なんて過ぎた甘い思い出を遠目で眺めては、虚しさばかりを抱くのみ。
どうして満たされないんだろう。
何が足りないんだろう。
心の底から、宮田頑張れ、応援してるよ、ってどうして言えないんだろう。
「・・・・漫画でも借りに行こっかな」
学校は期末試験の真っ最中。
試験中は昼で学校が終わる。
宮田と奈々は、奈々の家で明日の試験対策に勤しんでいた。
「で、ここにさっきの計算式を代入するでしょ?すると・・」
「・・・ちょっと待て。このxは何だ?」
「だから、このxは・・・」
宮田は英語や現代文は得意なくせに、数学がものすごく苦手だ。
時々数学を「算数」と言い間違えるほど、知識が小6で止まっているらしい。
「よくうちの高校に入学できたよね・・・まぁ、別に取り立ててすごい進学校でもないけどさ」
「嫌味はいいから、早く次教えろよ」
「教えてください、でしょ」
11月に色々あって、元の鞘に戻った二人。
宮田は相変わらず忙しいけれど、少しは気にしてくれているのか、前より電話も増えたし、学校で会う頻度も多くなった気はする。
それでも、わからなくなっていた距離感を取り戻して、前みたいな自然な会話ができるようになったのが何より嬉しい。
「はぁ、ようやくひと段落できそうね・・・ちょっと休憩しよっか」
「あぁ・・・もう今日はこれまでだな」
「いや終わってないから・・・。何か食べる?下から持ってくるけど」
奈々がそう言ってドアノブに手をかけた瞬間、
「水でいい」
「え?そう?勉強するとお腹空かない?」
不思議そうに奈々が聞き返すと宮田は、
「年末、試合があるから」
と答えた。
「あ、そ、そうなんだ・・・減量だっけ?」
「まあ本格的にするのはまだだけど」
「そ、そっかぁ・・・」
せっかく取り戻しかけてきた調子がまた狂い始める。
“じゃあまた会えなくなるね、さみし〜い”なんて戯けて笑ってみたりできればいいのに。
“応援してるね”なんて当たり前のセリフすら出てこない。
出てこないんじゃなくて、嘘っぽくて言えない。
いや、嘘っぽいんじゃなくて・・・嘘だから言えないんだ。
応援なんてしてない。
“試合がある”って言われた時、これっぽっちもそんな気が起きなかった。
あぁまた宮田と会えなくなるんだ、我慢しなきゃいけないんだって。
そんながっかりした気持ちばかりが出てきた。
嫌な女。
好きな人が命をかけて挑んでいるものを応援できないなんて。
「どうした?」
「えっ」
いつの間にかぼうっと考え込んでいたのか、宮田に声をかけられてハッと我に返る。
「あ、ああ・・・ほらなんか宮田の前でお菓子食べづらいなぁって思って」
「・・・別にいいよ。さっさと取ってこい」
「はーい」
バタンとドアを閉めて階段を降り、キッチンでコップに水を入れ、自分はお代わりの紅茶を淹れた。それからお菓子棚を漁って、中に先日買ったばかりのチョコレートを発見したけれど、何となく宮田の前で食べるのが悪くて、その場で口に放り込む。大好物のチョコレートなのに、何の味もしない。
「・・・これを機にダイエットでもしよっか」
誰に言うとでもなく呟いて、奈々は部屋に戻った。
試験は無事に終わり、宮田もどうやら赤点を取らずに済んだらしい。そして月末の試合に備えて、すぐに熱心なトレーニングが始まった。
前まで増えかけていた電話も少なくなり、学校でもまた顔を合わせない日が多くなってきた。
12月も半ばになって、街はキラキラとクリスマスムードに溢れてきているのに、クリスマスのクの字すら言って憚れるような雰囲気だ。
去年は一緒にランチして買い物して、楽しかったなぁ・・・・
なんて過ぎた甘い思い出を遠目で眺めては、虚しさばかりを抱くのみ。
どうして満たされないんだろう。
何が足りないんだろう。
心の底から、宮田頑張れ、応援してるよ、ってどうして言えないんだろう。
「・・・・漫画でも借りに行こっかな」