21.ずるい男
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あれから貧血はすっかり良くなって。またいつもの日常が戻ってきた。
宮田は相変わらず忙しくて、奈々は来年の大学受験というものが現実味を帯びてきた頃だった。
学校へ行って授業を受けて、友人らと話をしたり、時には遊んで帰ったり。前と何も変わらないと言えば変わらない。
“お前が好きなんだ・・・それだけじゃダメか?”
そう言われた日は、なんて答えていいかわからなかった。
今もまだわからない。
宮田がハッキリと思いを口にしてくれたことは素直に嬉しかった。
それだけで心が満たされるなら、こんな風に思い悩んでいない。
「それだけじゃ・・・・ダメ・・・なのかなぁ」
宮田の思いは純粋すぎて、自分が欲望まみれの汚い生物にすら思えてくる。私と何がしたい、あれがしたいなんて全然なくて、ただ好きだという感情だけで満たされている。
一方で自分は、宮田と遊びに行きたいだの声が聞きたいだの、好きだという感情の暴走が止まらなくて、相手にひたすら何かを要求し続ける怪物みたいだ。
「でもそれが普通なんじゃないの?」
さっきから自分のぐちぐちとした弱音を聞いてくれていたフーコが、グサグサとチーズケーキに穴を開けながら答える。
「彼氏とデートしたい、電話したい、他の女の子と会わないでほしい、なんて普通のことじゃん」
「うーん・・・」
さっきから全然食の進まない奈々のケーキは4分の3がきれいな形を残したままだ。
「私、彼氏にフラれて気づいたけどさ」
「うん・・・」
フーコは大口を開けて、チーズケーキを口に放り込み、しばし反芻した後で、
「恋愛ってやっぱり・・・お互いあってのことじゃん」
「う、うん・・・」
「だから宮田は・・・独りよがりだと思うよ」
そして残りのかけらも豪快に口に放り込み、
「“好き”だなんて、放置していることの免罪符にもなりゃしない。小学生じゃあるまいし」
言いながら、自分自身の苦い恋が思い出されてきたらしい。少し面白くない顔を浮かべながら、手元の紅茶を飲み干す。
「好きあってる以上に、2人は恋愛中なのよ。恋愛は相互関係、責任が伴うの!そうだと思わない!?ったく、ふざけんなって・・・あ、おかわりくださーい!」
ヒートアップするとセルフテリトリーが一気に広がり、まるで店が自分の家の中のように思えてしまうらしいフーコ。どんどん大きくなる声を宥めるように、奈々はシーっと人差し指を口の前に立てた。
「だから、お互いが価値観すり合わせてやってくべきだと思わない!?重いだのめんどくさいだのいう前にさあ!」
「わ、わかったから・・落ち着いて」
「なんでいつもこっちが一方的に合わせなきゃいけないかな!?こっちに合わせてくれたんなら、めんどくさそうなそぶり100%隠してほしいよね!渋々感を出すなって!」
「わかったからぁ〜・・・」
後半はフーコの盛大な愚痴大会と化してしまったが、奈々は自分の言わんとしていることを少し代弁してくれた気もして、なんとなくスッとストレスが解消したような気分になった。
宮田は相変わらず忙しくて、奈々は来年の大学受験というものが現実味を帯びてきた頃だった。
学校へ行って授業を受けて、友人らと話をしたり、時には遊んで帰ったり。前と何も変わらないと言えば変わらない。
“お前が好きなんだ・・・それだけじゃダメか?”
そう言われた日は、なんて答えていいかわからなかった。
今もまだわからない。
宮田がハッキリと思いを口にしてくれたことは素直に嬉しかった。
それだけで心が満たされるなら、こんな風に思い悩んでいない。
「それだけじゃ・・・・ダメ・・・なのかなぁ」
宮田の思いは純粋すぎて、自分が欲望まみれの汚い生物にすら思えてくる。私と何がしたい、あれがしたいなんて全然なくて、ただ好きだという感情だけで満たされている。
一方で自分は、宮田と遊びに行きたいだの声が聞きたいだの、好きだという感情の暴走が止まらなくて、相手にひたすら何かを要求し続ける怪物みたいだ。
「でもそれが普通なんじゃないの?」
さっきから自分のぐちぐちとした弱音を聞いてくれていたフーコが、グサグサとチーズケーキに穴を開けながら答える。
「彼氏とデートしたい、電話したい、他の女の子と会わないでほしい、なんて普通のことじゃん」
「うーん・・・」
さっきから全然食の進まない奈々のケーキは4分の3がきれいな形を残したままだ。
「私、彼氏にフラれて気づいたけどさ」
「うん・・・」
フーコは大口を開けて、チーズケーキを口に放り込み、しばし反芻した後で、
「恋愛ってやっぱり・・・お互いあってのことじゃん」
「う、うん・・・」
「だから宮田は・・・独りよがりだと思うよ」
そして残りのかけらも豪快に口に放り込み、
「“好き”だなんて、放置していることの免罪符にもなりゃしない。小学生じゃあるまいし」
言いながら、自分自身の苦い恋が思い出されてきたらしい。少し面白くない顔を浮かべながら、手元の紅茶を飲み干す。
「好きあってる以上に、2人は恋愛中なのよ。恋愛は相互関係、責任が伴うの!そうだと思わない!?ったく、ふざけんなって・・・あ、おかわりくださーい!」
ヒートアップするとセルフテリトリーが一気に広がり、まるで店が自分の家の中のように思えてしまうらしいフーコ。どんどん大きくなる声を宥めるように、奈々はシーっと人差し指を口の前に立てた。
「だから、お互いが価値観すり合わせてやってくべきだと思わない!?重いだのめんどくさいだのいう前にさあ!」
「わ、わかったから・・落ち着いて」
「なんでいつもこっちが一方的に合わせなきゃいけないかな!?こっちに合わせてくれたんなら、めんどくさそうなそぶり100%隠してほしいよね!渋々感を出すなって!」
「わかったからぁ〜・・・」
後半はフーコの盛大な愚痴大会と化してしまったが、奈々は自分の言わんとしていることを少し代弁してくれた気もして、なんとなくスッとストレスが解消したような気分になった。