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後編

「あーん! また負けたあ!」

 クリスタル・パレス内の訓練場にヴィーナスの悔しそうな声が響き渡る。地面に座り込み駄々をこねるヴィーナスをウラヌスが得意気な顔で見ていた。

「まだまだだな」
「もーう! 少しは手加減してよウラヌス!」
「それじゃあ訓練にならないだろ。何事も本番だと思ってやらなきゃな」

 ウラヌスにぶーぶー! と抗議をするヴィーナスのもとへ苦笑いを浮かべるジュピターとマーキュリーが歩み寄る。マーズは呆れたような顔をしてヴィーナスを見ていた。

「大人気なくてよウラヌス」
「ネプチューン」

 ウラヌスの背後からは優雅に微笑むネプチューンが現れた。ウラヌスはなんのことだい? と惚けるがネプチューンに間合いを詰められてたじろぐ。

「全く、何百年何千年経とうと子どもなんだから」
「おいおい、聞き捨てならないな」
「で? 怪我は?」

 苦笑いを浮かべながらウラヌスは反論しようとするがそれよりも先にネプチューンに問いかけられる。ウラヌスは自身の体を見て動きや体内に異常がないか確認をすると何もないよ、と返した。
 ネプチューンはウラヌスの言葉を受け取ると自身も上から下まで怪我がないか確認しあとで部屋に来るよう告げた。

「なあ、いつまでこれ続けるの?」
「あなたの信用が回復するまでかしら。すぐに不調を隠すんですもの。前科があるからこの先数百年は続くと思いなさい」

 ちぇ、と唇を尖らせるウラヌスは本当に子どものようでネプチューンは苦笑いを浮かべる。
 ウラヌスのこれ、というのは訓練後の検診のことだった。自分の身体が思うように動かないことを隠し続けたウラヌスは最終的に敵が攻め込んできたその時に倒れてしまった。
 二度とこのような事が起こらないように、ウラヌスはクイーンとキングの命のもとネプチューンとプルートが良しと判断するまで毎日検診を受けることになったのだった。

「……本当に、生きた心地がしなかったのよ」

 ボソリと呟いたネプチューンはけれどウラヌスに悟られないようすぐに表情を切り替えると内部戦士たちの方へ歩み寄ろうとする。
 そんなネプチューンをウラヌスは後ろから抱きしめ耳元で小さく囁いた。

「ごめん。でも約束したろ。僕は君を置いて行ったりしない。もし、遠くに行ってしまっても必ずみちるの元に帰ってくるってさ」

 ウラヌスの言葉に目を見開いたネプチューンが振り返る。視界には優しく微笑むウラヌス、もといはるかがいた。
 ネプチューンは、みちるは眉を下げて笑うとこぼれそうになる涙を堪えてはるかにキスをした。
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